値嵩株も射程圏

本日の日経紙一面では「株最低投資額10万円に」と題し、東京証券取引所が若年層も少額から日本株を購入できる環境を整え、国民資産の「貯蓄から投資へ」のシフトを後押しするべく、株式投資に必要な最低投資金額を取引環境整備についての議論で個人投資家が求める水準としての10万円程度に引き下げるよう全上場企業に要請する旨の記事があった。

現行で東証が望ましいとしている最低投資金額は50万円未満だが、2022年にこの単位引き下げを要請して以降各社共に分割の動きが年々急増し昨年は211社にのぼり、当初要請から既に400社以上が株式分割を決議するなどの動きがあった。とはいえ同紙にも出ていたがユニクロを展開するファーストリテイリングなど一昨年だったか1株→3株に分割こそしたものの、それでも最低単元購入には本日段階で460万以上が必要となる。

同社を含め値嵩モノでは他にも筆頭格のキーエンスやディスコなども最低単元で新NISAの年間枠を軽く超えてしまうのが現状で、最低単元買い付け金額が冒頭の10万円を超えてしまう企業は東証全上場企業では6割、成長投資枠で物色し易いプライム市場では8割がこれを上回る。そうなると制度面ではNISA年間投資枠の引き上げか売買単位の変更もしくは分割による最低投資金額の引き下げが俎上に上る。

このうち現状では単元株制度そのものには手を付ける方向になく、冒頭の若年層が少額から日本株を購入できる環境という面を踏まえれば年間投資枠引き上げではなく最低投資金額引き下げが残るという事か。これが叶えば一気にこれまでの5分の1になる計算だが、上記のファーストリテイリングを例に取れば更に46分割以上が必要になる計算で、一昨年のNTTの25分割を超える事例が幾つも出てくることになるか。

東証の要請は解るものの各社が大幅分割に二の足を踏んでいる一つには小口株主の急増による株主総会関連資料その他諸々の事務コストに絡む問題もあるが、この辺は以前から株主総会に絡んで言われている課題であるところのデジタル化など含め再考の余地がある。これまで株式市場では日本の特異性が際立つ部分が多かったものの、東証の本腰を入れた改革で一つ一つが国際標準に近づいてきているだけに今後の要請にも引き続き注目しておきたい。


コンクラーベ

周知のように週明けにローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が亡くなったとローマ教皇庁が発表している。教皇の在任中は貧富の格差解消から気候変動対応まで呼びかけるなど地球規模の課題解決に向けて積極的な発信を行っていた。日本にも2019年にローマ教皇としては38年ぶりに来日し被爆地の広島や長崎でスピーチし核兵器の廃絶を強く訴えていたが、復活祭のミサの翌日に天に召されたあたりまるで選ばれたかにも思えるものだ。

ところでここからは服喪期間を経て教皇が空位になってから15日後以降に、多くの観光客も訪れるシスティーナ礼拝堂の密室で次の教皇を決める「コンクラーベ」が開かれることになる。世界中に居る枢機卿の中で投票権を持つ者が参加し、投票者は外部との通信が遮断され電話なども持ち込みが禁止されるが、裏側ではいろいろと根回しや権謀術数まであるとまことしやかに囁かれている。

コンクラーベといえば奇しくもその裏側を描いた映画「教皇選挙」が先月にはアカデミー賞の脚色賞を受賞し話題となっているが、ほかに映画という絡みでは記憶にあるのは一寸前になるが2009年の「天使と悪魔」か。ここではコンクラーベのプロセスなどかなり丁寧にわかり易いタッチで描かれており、前作の「ダ・ヴィンチ・コード」と共になかなか楽しめたが、いずれにせよこの礼拝堂から決定の知らせとなる白い煙が上がるのはいつか見守りたい。


アクティビストなき後

本日の日経紙投資面では「大日印「改革」進化問われる」と題し、これまでPBR改革などを掲げて自社株買いはじめ意欲的な経営目線で株価を上げ市場を沸かせてきた大日本印刷が、足元で物言う大株主が姿を消した事や自社株買いの減速などもあり、日経平均や競合他社等と比較するにアンダーパフォームするなどここ下落基調が目立っている旨が書かれていた。

同社株といえば物言う株主の米エリオット・インターナショナルやエリオットの関連会社とみられるザ・リバプール・リミテッド・パートナーシップらが大量保有し、当欄でもJPXプライム150指数が算出を開始した頃に「個人的にはPBRが0.6倍台から様々な株主還元を打ち出しPBR1倍に向かう過程で大化けした大日本印刷のような銘柄に大いなる魅力を感じた」とも書いたことがあったが、足元の低迷で同社株は本日の引け段階でPBRも0.7倍台に戻ってきてしまっている。

この手の株主はイグジットしてなんぼの世界で成果が上がれば売り抜けるのは自然な流れだが、米エリオットはそんな中でもオーセンティックな位置づけにあっただけにそれなりの“ロス感”も強かったか。物言う株主の中には取締役まで送り込んでも直後の株価急騰局面で全株を売り抜けたパターンもあり全てが経営にコミットするという期待感は持たぬ方がよさそうだが、構造改革促進という部分では間違いなく刺激となっており今後も彼らの参入で日本企業の株主還元等のスタンスが変わってくるのは間違いなさそうだ。


潮目を変えた同意なき買収

本日の日経平均は円高の進行を受けて3営業日ぶりに反落となっていたが、そんな地合いのなかでも温度センサー最大手の芝浦電子など本日は年初来高値を更新するなど堅調さが目立つ。同社株は2月の3000円水準からほぼ倍近くにもなっているが、同社といえば台湾の電子部品大手の国巨(ヤゲオ)から“同意なき買収提案”を受けていたのを撥ね、ホワイトナイトとして登場したミネベアミツミのTOBを受けると発表している。

同意なき買収といえば芝浦電子と並んで昨年末から報道が多いのがニデックによる牧野フライスへのTOBか。今回は牧野フライス側が一貫してこれに反対を表明し新株予約権等の対抗策を巡っては既に法廷論争にもなっているが、直近ではTOB終了までに投資ファンド等を含む“ホワイトナイト”がこれまた現れるとも報じられておりこちらは株主総会まで縺れそうな気配だ。

上記のニデックは既に工作機械メーカーのTAKISAWAに対して同意なき買収を成功させているが、日経紙が実施した国内主要企業の「社長100人アンケート」では経営者の45.8%が同意なき買収を受ける可能性や対応を取締役会で議論したと回答したほか、自社のM&A戦略で同意なき買収が選択肢に入ると回答した企業も4割近くに上った旨を同紙で見た。

前にも書いたが経産省は23年夏に、企業が買収提案を受けた際、企業価値向上に繋がる真摯な提案を理由なく拒んではならない旨の「企業買収における行動指針」を策定しており買収に関する潮目は確実に変わって来ている。そういった事もありこれら“同意なき買収”は不可逆的なもので今後もこうした流れが続いてゆこうが、経営陣も資本市場との向き合い方を変え以前にも増して緊張感を持った経営が求められようか。


あの時の面々揃い踏み

さてトランプ関税とは別のところで一連の騒動による問題を抱えているフジメディアHDだが、先週には旧村上ファンド代表であった村上世彰氏の長女である野村絢氏が個人で8.96%を保有する筆頭株主に躍り出たことが明らかになっている。そんなわけでこの米トランプ大統領の関税ショックで彼方此方の株価が急落するなかでも同社株はさまざまな思惑を乗せて先週には年初来高値を更新してきている。

同社株については当欄でも年明けに一度触れており、20年前のライブドアを介したニッポン放送株取得によるフジテレビ経営の関与を目論んだ実業家の堀江氏の同社株式取得を書いたが、この直後に同社株取得に動いていたのが運用会社のレオス・キャピタルワークス。そしてこのライブドア事件の騒動の時に堀江氏と共にインサイダー取引で逮捕されたのが村上ファンドの村上氏であったわけだが、20年の時を経てその村上氏の長女が筆頭株主に躍り出てきたあたり因果なものだ。

ところで直近では7.19%を保有する別の物言う大株主の米ダルトン・インベストメンツが同社に取締役候補としてSBIHDの北尾会長兼社長はじめ総勢12名を提案するとの報道があった。ちなみに上記のレオス・キャピタルワークスもSBIHD系だが、この北尾氏といえば上記のライブドア騒動では“ホワイトナイト”として登場し、ライブドアにニッポン放送株を手放させて和解に持ち込ませた人物。こちらもまた因縁を感じるが気が付けばかつての東芝並みにキャストが出揃っている。

株主提案というところでは筆頭株主の野村氏の場合、直近で急速に株式を取得しその保有期間から提案の要件は満たして無くその権利は無いだろうが、これまでも大量取得した上場株式のイグジットにおいて企業再編に絡んできた経緯は少なくない。ダルトンにしても認定放送持ち株会社特有の壁などあるが、いずれにせよ6月の株主総会に向けてそれぞれのキャストがどういった行動に出るのかまだまだ今後も目が離せない銘柄の一つだ。


揺らぐ安全資産の信頼性?

本日は金価格が1トロイオンス3291ドルを超えて週明けに記録したこれまでの最高値を上回ってきた。長年安全資産とされてきた天下の米国債価格が急落し長期金利の上昇幅は23年ぶりの大きさとなり、幅広いリスク資産に売りが出る一方でこのゴールドにマネーの逃避が進んでいる。しかし米国債といえば通常では株式の急落時などでは真っ先に矛先が向うものだが一緒くたに売られる今回の光景はなんとも不気味だ。

今後もこんな動きが続いて米格付け大手が米国債の格付け引き下げに動くようなら、自ずとヘッジファンドなども運用金融商品の入れ替え等で更に売られスパイラルに株安ドル安と連鎖しかねないがはたして何処が売っているのだろう?米ヘッジファンド説、中国政府説、はたまた日本の金融機関説まで出ていたがこの辺の憶測に関しては直近で農林中金の理事長は「そういった事実はない」と否定している。

海外投資家が直近で保有していた米国債は総額で約8兆5000億ドル、この規模は米証券業金融市場協会が推計した発行残高の約30%に相当するという。そのうち保有トップは日本の1兆793億ドル、2位に中国の7680億ドルと続くわけだが、この度の市時混乱にて米国債は或る意味アキレス腱との見方が出ている。日米の関税交渉ではヘッジファンド出身で金融市場を熟知したベッセント財務長官が担当だが、さてこの辺も交渉カードの一つになり得るのかどうか成り行きを注視したい。


前倒し統合

さて、2年ほど前だったか当欄ではイオンが9年前にウエルシアHDを子会社化したものの業界再編に関しては会社提案による経営体制の下で協議を進めることが適切と淡々と述べていた旨を書いた際に末尾では「今後も物言う株主の圧力が結果的にイオンの背中を押し更なる再編に向けての動きが起きるかもしれない。」と書いていたが、先週にはウエルシアHDとツルハHDが2025年内の経営統合を決めることとなった。

当初の計画では2027年までの経営統合を目指して協議していたものだったが、この当初計画を2年も前倒しするという事になる。この経営統合によって3年間で500億円のシナジー効果を見込むというが、いずれにせよこれまでドラッグストアの売り上げとして1兆円超えが1~3位まで横並びであったもののこれで業界では一気に2兆円規模のガリバーの誕生となる。

ところでイオンの社長が会見にて大きな競争力を持つドラッグストア云々と言っているくだりで、「唯一無二」を「ゆいいつぶじ」と読んでいたのがどうも気になってしまったが、まあその辺はご愛敬として3位のマツキヨココカラが両社の統合で当時飛躍的な経理効率の上昇がみられたように、この度の統合も圧倒的なスケールメリットを生かしていけるかどうか注目されるところだ。

この前倒し劇の背景の一つには昨年にアマゾンがスマホから処方薬の配送が出来るサービスを開始し楽天やGMOなど他のネット系大手もこの分野に参入してきている危機感等もあろうが、昨日公表があった総務省の人口推計でも日本の総人口が14年連続の減少となるなど人口減で今後も市場縮小が顕著になってゆくというベースがあるだけに今後もこのガリバー誕生で業界再編劇が終演することはないだろうか。


大阪・関西万博開幕

さて、東京五輪・パラリンピック後の景気刺激策と位置づけ2005年の愛知以来、20年ぶりの大規模万博となる大阪・関西万博が開幕のはこびとなった。また同じここ大阪の地での万博開催としては1970年の大阪万博以来、55年ぶりだ。当初は会場建設費を1250億円と見込んでいたものの、資材高や人件費の上昇などで複数回にわたって増額、結局は約2400億円近くと当初からほぼ倍に膨らむなど賛否両論のなかの船出となった。

前売りチケットは当初目標の1400万枚を下回る約1170万枚販売されたとのことだが、運営費の赤字を回避する採算ラインは約1800万枚との試算もある。初日は生憎冷たい雨が降りしきりブルーインパルスのアクロバット飛行や空飛ぶクルマのエキシビジョンが中止に、自慢の大屋根リングは雨といの水が溢れ、やれやれ食事にでもといえど回転ずしに辿り着くだけでも4~5時間待ちとこちらも忍耐戦が展開されている。

この大阪・関西万博、予てより事前予約制を導入し“並ばない万博”が謳われてはいたものの、いざ蓋を開けてみればTV等では連日長蛇の列の映像が放映され、パビリオン予約やキャッシュレス決済などスマホ頼みなもののネットの繋がりにくい状況でQRコードの不具合が起きるなど各所ではなかなか波乱の幕開けぶりが窺える。

こうした運営面での課題など今後協会等による継続的な改善が必須となろうが、この「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの万博は半年間で来場者は約2820万人が想定されている。政府はその経済波及効果を約2.9兆円との試算を出しているが、この万博後には会場となった夢洲では5年後にカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業が予定されている。こちらもいまだ賛否両論だが、先ずはこの万博が成功裏に終わるかどうか引き続き注視しておきたい。


上場ゴールの篩い分け

世界を震撼させている震源地の米株式市場だが、昨晩は5日ぶりに急反発し3000ドル超えの場面も交え1日の上げ幅として過去最大を記録した。先進国にあってフェイクニュース等で振り回され乱高下する様はまるで新興市場との一部指摘も出ているが(まあ日本市場も同じだが・・)、ところで新興市場といえば国内では先に東証がグロース市場に関し上場5年で時価総額100億円未満企業を上場廃止にする方向など上場維持基準を厳しくする方針を示している。

この辺に関しては先週末の日経紙でこの100億円水準をクリア出来ていない企業が7割にのぼる旨も書かれていた。現行の上場10年で40億円以上からみれば5年後で100億円は一気にハードルが上がった感もあるが、先月には東証の上場維持基準による経過措置が終了しているものの経過措置対象企業はプライム市場で55社、スタンダード市場でも140社近く残っているのを見るに約4割が上場時の時価総額を下回っている同市場の篩い分けも当然の流れか。

これまで新興企業ポストはその資金調達のパイプの細さやVCが早期イグジットを望む姿勢、また個人を中心とした売買主体の特異な構図等から小粒上場が問題になっており“上場ゴール”などという言葉まで飛び交った事があったが、こんな状況が改善されないままでは本来描いていたグロース市場からスタートしその成長と共に上のポストを目指すというあるべき姿も絵に描いた餅になってしまうのも確かに致し方なしか。

こうした素地の改善が先なのか強制退場が先なのか考えるべき点は多いが、先月の上場維持基準による経過措置終了でも既に感じた事だが経過期間はあっという間に過ぎ去る。このグロース市場に関する上場維持基準強化が今回設定された5年間でどの程度未達の企業に影響を及ぼすのか未知数だが、プライム市場、スタンダード市場、そしてこのグロース市場の果たす役割を改めて考えつつ今月下旬の東証有識者会議での議論を経た最終決定を待ちたい。


脱・脱炭素の波

依然として世界のマーケットを混乱させている米トランプ大統領だが、つい昨日には米国内で石炭の生産と消費の拡大を目的とした4つの大統領令に署名している。相変わらず世界が進めている脱炭素の取り組みに逆行する動きだが、この脱炭素に絡んでは米国のみならずこのところ国内でも金融機関がこれに歩調を合わせて脱退が目立っている。

直近では先週末に「みずほフィナンシャルグループ」が金融機関で作る脱炭素を目指す国際的な枠組みであるNZBA、「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」からの脱退を決めているが、みずほFGはむしろ後発組でこれより先に先月には先陣を切って「三井住友フィナンシャルグループ」がこれを脱退、その後に「野村ホールディングス」が続きその後立て続けに「三菱UFJフィナンシャルグループ」が脱退を決定している。

米ではいわずもがな脱炭素に消極的なトランプ政権下で脱炭素を巡る業界横断的な活動への訴訟など法的リスクが浮上している事から、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど大手どころが挙って離脱表明しているが、米国で事業を展開する上記金融機関にとっても重要なリスクとなることでこうした波が邦銀勢にも波及してきているという構図だ。

とはいえ石油採掘ひとつ取っても採掘に要するエネルギーと採掘した石油エネルギーの比率、つまり掘削効率を示す指標はかつて200だったものが最近では20分の1程度にまで低下しているという指摘もあり、この厳しい現状も鑑みるにやはり脱炭素は時代の流れとして不可逆的なものと考えるべきだろう。反DEIよろしく歩調を合わせざるを得ない企業の苦悩も見え隠れするが、社会課題としてこれを見据えた投資支援など継続してもらいたいもの。


米国離れ

「山高ければ谷深し」、その逆もまた然りということで本日の日経平均は昨日の続急落から一転して1876円高と急反発。昨年8月の「令和のブラックマンデー」とは背景が異なり今回は容易に戻らないとの指摘も多かったが、超短期のスパンで見れば毎度動きは同じである。長期投資の向きはコストが下げられるチャンスで、いわずもがな腕に覚えのある果敢に攻める短期組はここ2日で売り買い往復回転出来た向きも多かっただろう。

自由貿易システムをいとも簡単にリセットし米株式市場の時価総額は直近まで軽く1000兆円以上が吹き飛んでいるが、トランプ氏が大統領選を制し所謂トランプトレードで活況だった株式市場は見る影もない。こんな株式市場の惨状を見るにつけこの度の関税政策でこれまでの米国例外主義がピークを過ぎたのではないかという見方も出ていることで、投資家などは米国以外の地域に目を向け資金を分散させる動きも出て来ている。

この度の具体的な関税政策の前にはNATOへの懐疑的な姿勢を鮮明にしていたことなども背景に、欧州一の経済大国であるドイツも先月には歴史的な財政政策の転換を図り同国のDAX指数は最高値を更新、ユーロドルもここ1.1を超える場面が見られる。上記を鑑みてこうした分散という意味合いでは、本邦も中国の愚策であった海産物輸入禁止の時と同様に米国向けに突出している品目など他国と連携を図りつつ分散を図る好機でもあるという見方も一考か。


鎖国の始まり? 

さて米トランプ大統領が相互関税を発表、早速中国が報復関税を発表するなど貿易戦争や景気後退への懸念が改めて台頭したことで世界中のマーケットがパニックになっている。WSJは米市場が3日、4日の2日間だけで約6兆6000億ドル、日本円で約970兆円分の株式時価総額が吹き飛んだと報じ、本日の日経平均も225採用銘柄が寄るまで約30分もかかり引けは2644円安と続急落の憂き目に。これは昨年8月の暴落時と87年のブラックマンデーに次ぐ過去3番目の下落幅ということになる。

上記の昨年8月5日も月曜日であったが、本日も月曜日ということでまた「令和のブラックマンデー」になってしまったが、昨年8月以来のサーキットブレーカーが発動、となればカオスな中でも先物オプション市場は別格に熱い。当限の30000円プットは週初の寄りが7円だったものが今日は前場早々に850円と実に121倍にも暴騰、そこから更に5千円も離れたディープアウトの25000円モノも同じく週初の2円が前場に120円とこちらは60倍に大化けしている。

一方で先週末にはインザマネーだった当限の33750円コールは今日の前場にはプレミアムが10分1 に暴落と明暗を分けた。個別でもディフェンシブ色の強かったIPモノの任天堂も続急落していたが同社は「スイッチ2」の米での予約開始を延期に、またアップルもiphoneを価格転嫁した場合は米で最大43%の値上げの可能性を指摘、製品の多くが中国製造で米への輸出時に関税が発生する事で日本での価格もまた値上がりの可能性がある。

しかしトランプ氏といえばタフなビジネスマンとの評判だが、過去には事業経営で何度も破産申請をした経緯がある。そんな人物が最高権力者の座に就き大統領令をもって戦後の経済発展を支えた自由貿易システムをブラフではなくリアルにリセットしてしまう狂気な経済政策が本当に国にいいと信じている。いずれにせよ本邦がこれまでどれだけ米国への投資で貢献してきたかと考えるとなんともやり切れない思いだが、ここから日本政府の外交手腕がまさに問われる時か。