安定株主構造

さて睦月も終りに差し掛かったところでS&Pが8年9ヶ月ぶりに日本国債の格下げを発表したのも束の間、今度はエジプトで長期独裁政権の退陣を求めるデモが勃発するなどまたも忘れた頃の地政学リスクが再燃、各国の株価下落などの広がりでマーケットには立て続けに厳しい洗礼となった。

ところで上記の国債だが、よく何処其処の国と日本は同格なのかとか或いは格下とかこうした格付け時にはよくそういった話題が出るが、考えるに実質中身ではもっと脆いところもありで見方は十人十色だろう。蓄えという体力が残っている部分でこうした意見が分かれるところだろうが、この部分は良いようにもとれるし逆に怖い部分でもある。

またその特異な構造からあまり影響は無いだろうとのコンセンサスであったが、やはり発表直後のナイトでは20ポイント前後小甘い水準になった程度であった。この辺は一頃の一部企業じゃないが9割以上が国内で持ち合っている構造で、意図的に崩そうとしてもこれ単独で狙うのは構造上無理がある。

但しこの部分をトリガーにして、枝葉の部分で取ろうとの仕掛けの布石というか調査の色彩が濃い場合はやはり先は注意しておいたほうがよいか。ジム・ロジャーズ氏も昨日都内のホテルで開催された講演会で「このままでは5年、10年後に日本株に投資しているかは疑わしい」と述べているように、今はあれこれストラテジーなど考えているうちはいいものの、この問題も「疎い」のかどうなのか遅々として進展しない政府に本質的な部分を問いかけているような気もする。


2008年との相違点

さて、今週よく見かけたのは身近な品の原材料高騰の報か。コーヒー最大手のUCCホールディングスが3/10からの値上げを発表したが、既に年末からキーコーヒーやAGFは実質値上げを決めており業界最大手の同社の動向が注目されていた折果たしての値上げ、背景には新興国の需要拡大等でコーヒー豆国際相場は13年ぶりの高値にありコスト圧縮も限界にきているという。

この他にも1/26付け日経紙などは、カカオ豆の有力生産国が禁輸措置を取った為に、ロンドンのカカオ豆先物はおよそ30年ぶりの高値水準近くに達していると報じたほか、上記のコーヒーの件や食用油が軒並み上昇している件、その隣にはNY綿花が最高値更新とも載っていた。

よく値頃など前回の2008年商品バブルと比較されるが、前回の過剰流動性相場一辺倒と違って今回はこれに天候不順や新興国の需要増による逼迫が加わっており、構造的問題になりつつあるのは厄介だ。FAO(国連食糧農業機関)算出の主要食糧価格指数は既に年末に過去最高を更新、そういえば同機関の事務局長が「食料価格高騰が数年にわたり続いたら各国で政情不安を招くことになる」と警鐘を鳴らしているのが1/25付け日経紙一面にも載っていた。

この辺は最近のチュニジア等で既に見られ始めているが、我が国とて目下のところの円高で輸入価格抑制が利くのもあと僅かだろう。デフレの後遺症で製品価格への転嫁は困難を極める一方、各業界での値上げ交渉も難航から進んでいない中で今後も企業や末端の試練は想像に難くない。


小口化促進?

本日は街中を歩いていてふと思ったのだが、昨年から金や関連宝飾の買い取りしますという看板がやたらと目に付くようになっている。近年の金高騰で商機とみたのだろうが、それにしてもこんな事業していたか?というようなところまでこうした旨を謳っている。

買い取りといえば老舗の田中貴金属工業、貴金属ジュエリーリサイクルシステム「RE:TANAKA」の一年間の買い取り実績によれば回収した金の総量は3,646キロ、プラチナは450キロ、銀は1,592キロで取扱総量は5,688キロであった模様。うち最終月では最高の月間買い取り実績を記録したというが、鉱石換算では7万トン相当の貴金属資源を循環させた事になる。

さて、金地金等の買い取りといえば昨日の日経紙に出ていたが、2012年以降は税の申告漏れを防ぐ為に金やプラチナを売却する際に売り主名などを記載した支払い調書の作成がこれら扱い店に義務付けられる見通しという。

ここ近年、地金でも簿価の倍以上になっている向きも多く、これに伴い申告漏れも多額のものが出てきている現状での補足新制度なのだろうが、大手業者と中小では見方が異なり賛否両論。これで小口化の動きにも拍車が掛かろうが、費用対効果の問題もあるので一部は他の派生商品へのシフト等も出て来るのだろうか。


善意

本日の大手紙では新入学シーズンを前に、ランドセルの製造・出荷がピークを迎えている旨が報道されていた。そういえば過日、某百貨店でランドセル売り場を見る機会があったのだが、昔は無かったパステルカラーは言うに及ばずゴールドやシルバー等のメタリック系やらクロムハーツ風の装飾を施した物あり、またメーカーも他業種ブランド等多彩な顔ぶれが揃っていた。

さて、このランドセルといえば周知の通り、漫画「タイガーマスク」の主人公等を名乗って児童擁護施設等へランドセル始めとしてその他プレゼントを寄贈する動きが年末あたりから話題である。ざっとだが47都道府県でその数は約300件近くにもなり、ちなみにランドセルは350個以上にも上ったという。

外国の知人と電話していた時にこの話題になり、何故日本人は匿名ばかりなのか非常に奇異に映ると言われたが、諸外国に比べると各段に遅れている寄付文化、秘するが美徳とか寄付は恥ずかしいとかの風潮もあるのだろうが、一部では最も時代性が出ている表現とする向きも居る。

しかしこういった施設の子どもたちへの支援は本来であれば行政の仕事、ばら撒きと言われた子ども手当てはこういった施設には支給されない。政府も漸く同額の補助金を出すようにするなど重い腰を上げたが、厚生省を動かすパワーがあったということだ。一方では双方向の継続的交流が必要だとする問題提議もあるが、幅広い年代をうかがわせるその内容に善意のうねりはまだ心底の優しさが残っていると安堵感も。実体験が社会で共有されつつ文化も変わると思うし、これら問題も日本の寄付文化を発展させるに必要な議論であろうか。


Moral hazard

さて年末からにわかに出ていた問題であったが、本日の日経紙には急激な円高・ドル安で多額の損失が発生している為替デリバティブを保有する中小企業が約19,000社に上ることが、金融庁が銀行に実施した聞き取り調査で明らかになった旨が載っていた。

この商品、パワー・リバース・デュアル・カレンシー債とフラット為替といわれているが、前者には金融機関の期日前解約権がついており、これは地方自治体や財団まで幅広く販売された。フラット為替は所謂為替先物予約で主に輸入企業等に販売されたが、抱き合わせで売った部分やら横並びの思惑もあったのだろうが想像以上に多くの企業が契約していた。

年末にも一度触れたがこうした影響で破綻するパターンも続出しており、昨年は26件と一昨年の7件から急増、この動きを受けて直近ではメガバンク等は本業は健全だが損失が大きい企業対象に資金繰りを支える為の新規融資を実行する対応策を検討する流れになっている。

現況鑑みるにこうした措置も避けられないなと思う反面、気になったのは当該企業からは世論を味方に融資だけでなく損失負担を求める声が出ているという点。今でこそ契約企業からみれば想定外?の円高になったのだろうが、フラット為替など当初に享受した為替差益を棚に上げて損失分は補填してくれとは虫のいい話だ。

相場の損失に「特例」と称して行政が介入してどうこうしたらこれはもうモラルハザードの世界。この分野は今迄散々日本固有の事情で物議を醸し出してきたが、自己責任のあり方が問われる昨今ラインの引き方には十分注意すべきであろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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