非上場メリット

今日ではや二月も終るが、今月特に目立ったと感じるのはやはり上場企業のMBOの動きであろうか。中旬には紆余曲折あった幻冬舎もMBO成立の運びになったが、今月の新規モノではザッと挙げても、先ず上旬のワインのエノテカから始まってレンタル屋のCCC、引越しのアートコーポレーション、メッキの田中亜鉛鍍金と立て続けであり、今年に入ってからは合計で6社とこれは過去最多のケースではないか?

TOBの対象企業は当然ながら鞘寄せ急騰パターンが殆どで市場では次の候補探しに躍起になっているが、どれが来るか判らぬものより手っ取り早くとM&A助言会社などにも物色の矛先が向かっている。

それはともかくMBOの背景にはいろいろとその理由が考えられるもが、これは以前に業界のユニコムグループホールディングスを取り上げた時に書いた通りで、株価の長期低迷環境の中で資金調達の用と監査法人コスト等を天秤にかけるに無駄な部分も多く、他はやはり一部株主の鬱陶しさ?というのも大きい。まあ、単純に上場メリットよりも非上場メリットの方が大きいからに他ならないということだろう。

こうした動きに関して東証社長などは定例記者会見で「投資家を愚弄している」と苦言を呈していたが、上場承認したのも東証であるしあまり株価云々を持ち出すと薮蛇になりかねない。こうした動きも新陳代謝の一環と思い、IPOの誘致、サポート強化など課題があるのではないか。

そんなワケで、今年最初の当欄では最後に「今年もまたM&AやMBO等で商機ありという流れが個別で続くか」とコメントしたがやはり早くもそういった動きが加速、やはり上記の通り過去最多というのは確定で企業統治など今の構図を考えるに今後も親子上場の問題も加えてこうした動きが止ることはないと思われる。


遅々として進まず

さて、今週は郵政・金融担当相が閣議後会見にて一次産品の価格高騰は予断を許さない状況と説明、「総合取引所」を進める議論はより一段優先度が高まったと思うとの認識を示していたが、この辺に絡んでは先週末の日経紙経済面に「総合取引所」の在り方を検討する副大臣級の会合が約2ヶ月ぶりに再会した旨も載っていた。

「総合取引所」に関しては先に今国会への提出を断念する方針が伝えられ、12年の通常国会での関連法案の提出を目指すものの、調整が難航すればさらに遅れる可能性が指摘されている。もともと昨年末に公表した中間整理において両論併記になっていた段階で暗雲漂っていたわけだが、やはりというか農水がネックになっている模様であるしそれ以前に政治主導を謳うその政治そのものが混迷極めている状況では何とも厳しいところ。

内閣支持率が約20%程度と末期的な状況で、本日も農水政務官が農水相に辞表を提出したりと自壊作用の話題には事欠かないが、周りが斯様な状況であるから各取引所サイドも模様眺めに回っている感じで、既にまな板の鯉状態になっている取引所はともかく、外枠がハッキリしてこないことには各所も腹を括っての動きはなかなか取り辛いか。

このところ書いてきた通りこの数週の間に世界の取引所はさながら風雲急を告げるような再編の構えを見せているが、そんな中で数年前に日本に歩み寄ったNYSEなどはゴタゴタの中で疎遠になってしまっている。諸外国の開拓も進められず共同歩調も取れない土壌を作っている行政の責任は重いと言わざるを得ないだろう。


ランチトレード

さて大証が「J-GATE」を稼動させ昼休みを廃止してから2週間が経過しようとしている。大証によれば、最初の週に売買された従来の昼休み時間帯のデリバティブ商品は5営業日合計で22万2,627単位とこの間に総出来高の7.4%にとどまった模様。

この昼休み廃止に関しては2/8付けの日経紙「まちかど」欄で、「ランチトレード」に期待として証券会社が会社員などの個人投資家が昼食時間中に携帯電話などで売買する「ランチタイムトレード」を当て込んでいる旨が書かれていた。昼休み中に先物が取引されれば、中国・上海市場などの動きを反映し易くなり後場の現物株も先物の影響を受け、現物・先物とも注文が増えるとの皮算用があるらしい。

しかしここ最近のマーケットは中東情勢を睨んでボラが出てきたとはいえ、まだまだ海外頼みで先物は独自でのトレンドを描きにくくなっているのは否めないところ。そんな事情で裁定抜きもより狭くなっているところへ、一般の個人がランチタイムに飛び込んで小遣い稼ぎをするのは容易ではあるまい。

それでもなんとか先物を知って貰おうと個人へ応援キャンペーンの類は各社いろいろと工夫している。一部の証券会社は期間限定で昼食時間帯の売買手数料ゼロを検討したり、キャッシュバックあり、ロスカット口座を導入したりと顧客争奪戦が活発になっているが、これが奏功して本当にリクイディティの一端を担うようになったらそこからが真の商機であると思う。


ご当地ETF登場

本日は、名証などが東海地域の主要50社の株価指数に連動するETF「MAXIS S&P東海上場投信」通称・東海ETFを上場した。このETFについては3日に当欄でも一寸触れたが、生憎の悪地合の中での登場とあって寄り天となってしまったものの、ブランド力のある自動車関連など含むだけあって売買代金は8億6千万円となかなかの商いを集めた。

地域貢献を謳い文句に「ご当地ファンド」なるものはこの中部地区でもトヨタグループファンドなどを始めとし全国に幾つもあったが、対象企業の所在地を限定し、地元企業の株価に連動するという所謂「ご当地ETF」というのは日本では初めてのタイプか。

さて名証といえば、先週末の日経紙「まちかど」欄で低迷続きの名古屋銘柄がにわかに活況との件が出ていた。昨年一年間の名証指数は10%安に沈んでいたが、ここにきてトヨタが業績予想を上方修正し自動車関連銘柄が買われたことが背景となり名証一部地元株指数は昨年末から14%上昇し、福岡(7%)、札幌(6%)を上回る伸びという。03年4月から07年7月の株高局面でも名証指数は2.6倍と日経平均の2.4倍を上回り、景気回復が鮮明になるほど、名古屋銘柄は上振れるという。

最近では数あるETFの中でも、コモディティーものなど突飛高したり息の長い上げ相場を演出しているものも出てきており上記の件と絡めなかなか侮れない部分がある。このETFは上記「ご当地ファンド」のように地銀などの販売網が存在しないだけにどの程度盛り上がるか未知数だが、ご当地モノの今後を示す試金石となるか注目したい。


拡大する再編の波

さて一週間前の月曜日には、週末にかけて入ってきたNYSE(ニューヨーク証券取引所)を擁するNYSEユーロネクストと欧州大手のドイツ取引所の合併協議の件を取り上げたが、先週末にはPTS(私設取引システム)大手の米BATS・グローバル・マーケッツが同業の欧州最大手チャイエックス・ヨーロッパを買収するとの報が飛び込んできた。

ところでこの上記のチャイエックスといえば、当欄でも昨年触れた通りで野村ホールディングスが34%出資している。国内を見れば同所の1月の売買代金が2,100億円と前月比で2倍に増えており、このPTS自体は7社合計でも5,300億円と前月比24%増と3ヶ月連続で過去最高を更新している。

今思えば当初でこそ数年前の出始めには限られた参加者の中でリクイディティーリスクなどが指摘されていたものだが、着実に伸びつつあるなと。国内だけ見ても上記の通り売買代金が過去最高を記録したとはいえ、この7社合計でも市場全体の株式売買の2%程度に過ぎないことから今後の伸びしろは大きいとされ、今後海外を後追いする可能性も出てきた。

ところで国内はさて置き、もともと今回のNYSEとドイツ取引所の合併の背景には近年の規制緩和からこうした新興の電子取引システムが台頭し、NYSEの上場銘柄が他市場で売買されるケースが目立ってきたことも一因。本来のマザーマーケットがデリバティブ等に軸足を移し始めたのを商機と見て一気に攻勢をかけてきたという感じで、こうした新興勢力と既存の取引所との覇権争いが活発になる中でこのPTSにも再編の波が広がってきた気配である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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