BLACK SWAN〜魔性を宿す市場

さて、先週で大方メインの劇場では終ってしまったが、知人の誘いもあって過日はナタリー・ポートマン主演の「ブラックスワン」を観る事に。さすがアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞しただけあってナタリー、ある意味コワ過ぎな感。バレエ団監督役のヴァンサン・カッセルも、こうして見ると「オーシャンズ」シリーズで演じていた怪盗よりもこちらの役の方がハマリ役かと。

何れにせよ肉体を昇華させ必要以上?に意識させるホラーにバレエという素材を使ったのはなるほど正解という気がした作品であった。余談だが、劇場からほど近い「キルフェボン」のケースにはこの映画の公開記念と称し「ブラックプリマのタルト」なるものも並んでいた時期があったが、これまた官能的な香りに仕上がっておりなかなかだったのもフト思い出した。

ところでこの「ブラックスワン」、こんな有名な映画は知らなくともこの言葉をしばしば使う市場関係者は多い。この映画公開前から既に使われてきた、確率的には稀ながら仮にそれが起きた場合は極めて多大なリスクを伴う、その想定外リスクの大小を示しているというCBOEが算出・公表している通称「ブラックスワン指数」なるものがあるからだ。

この指数、「VIX」に酷似しているがこちらはより深刻な状況を示唆、今年も実際に2月中旬には一時130台超えとなり、これは金融危機時を上回る水準となっていた。この段階で既に「ブラックスワン」の登場を警戒する不安心理の高まりを示していた訳だが、果たしてその後は周知の通り。市場もまたプリマ同様常に二面性を秘めている。


金を買う理由

昨晩の米株式はギリシャ債務危機への対応を巡る楽観的な見方から大幅続伸となったが、斯様に今週はこのギリシャが市場を振り回している。さてこのギリシャ、先週の英ファイナンシャルタイムズ紙ではデフォルトと銀行取り付け騒ぎに備え、市民が銀行預金を全額引き出して金を買う動きが活発になっていると伝えている。なんでも地元の貴金属業者によればリクイディティーの都合か金貨が金地金の5倍売れている状態と時事にも書かれていた。

ところで金といえばもう一つ、先のインドの5月貿易統計が発表され、その中で5月の金・銀の輸入は89.6億ドルと先月に比べて500%増加、前年同期日では222%の増加と金や銀の輸入が急増している事も判明している。

また先の日経CNBCでは「中国が金を買う7つの理由」として放映があったが、概ね昨年12月に放映した「北京の金需要最前線レポート」の再確認という感じであったものの、この7つの理由の一つには中国人民銀行が金投資を奨励しているというのがあった。上記のインドでもインド準備銀行が新たに7つの商業銀行に金の輸入代理店となるライセンスを付与しており、この辺はいずれも国策が窺える。

欧州とアジア、各々の金買い事情は異なるが、一昨日にも書いたモナコでのヘッジファンド業界のGAIM会議に出席したガイア・キャピタルのマネジングディレクター、コースト・ストレンジャー社長は会議の際のインタビューで、銅などのベースメタルには警戒的だが、貴金属については強気だとの見解を示している。日替わりで材料には事欠かない昨今、まだまだ弱気を謳うのは時期尚早か。


コラボ終了

さて、昨日の東洋経済オンラインではアパレル系の記事を見掛けたが、オンワード樫山が4月の売上高前年比で4%の増収、ダイドーリミテッドが同8%増、サンエーインターナショナルは同12.4%増となるなど、軒並み苦戦続きであった百貨店・アパレルブランドがにわかに活気づいている旨が載っていた。

5月以降も堅調な売り上げのトレンドが続いているというが、反面ユニクロやしまむら等は冴えない模様だ。そういえばこのユニクロといえば一昨年の10月にジル・サンダーと夢のコラボということで鳴り物入りの登場となった「+J」は当欄でも触れたが、先週には今冬限りで契約終了と発表している。

業界の知人もこれに関しては仕立てからしてもCPはなかなかと賞賛していたのを思い出すが、ユニクロ側は「このコラボによる新しい服作りの可能性は、一旦追求しつくした」との声明を発表。それにしても予想外?に早い打ち切りだなというのが正直なところで、双方共に各々拘りが強かった分、文化というかその辺が何処まで判り合えたかという疑問もある。ともあれ今後また既存のベーシック路線一辺倒に回帰するのかどうかこの辺も気になるところ。


EXITの真意

今月は先にヘッジファンド業界の「GAIM会議」がモナコで開催されていたが、出席したヘッジファンド会社幹部らは銅などのベースメタル含むコモディティー価格はピークに達したのではないかとの見方を示し、先月の急落が今後の下落の前触れではないかとの懸念からこの部門への投資を避けている旨をロイターが伝えている。

この中の一人ガイア・キャピタルのマネジングディレクター、コースト・ストレンジャー社長は会議の際のインタビューで、投資家の関心の高まりや急騰する価格を背景に最近相次いだコモディティー関連のIPO(新規株式公開)は高すぎるようだとして警戒を促し、最近注目を浴びたスイスの商品取引大手のグレンコアなどの上場は、バブル的様相を帯びているとみているとも伝えている。

このグレンコア、先月ロンドン市場に上場した際に当欄でも少し触れたが、そもそもがこれまで非上場を貫いていた企業の変化はやはり気になるところだろう。資源に目利きの巨大商社がココをイグジットの好機と見るのもチャートを並べてみるとより一層そういった思惑が募るところ。

この辺に絡んでは先週末の日経紙にて「商品相場の過熱和らぐ」と出ていたが、同時に直近で行われたIEAによる石油備蓄放出決定を受けた原油相場一服もその効果は長続きしないとの見方もあると書かれていた。斯様に如何様にも予測されるところだが、何れにせよ株式交換など新規の武器も駆使できるようになった訳で今後の戦略にも一段と注目となろうか。


ジパング展

さて、今週初め迄日本橋高島屋では「ジパング展〜31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン」と称して現代絵画、映像、立体などの作品が展示されていた。以前に一度写真で見て気になっていた作家さんも参加しておりたまたま近くで所用もあったので一寸チェックしてきた。

今回は展示数こそ少ないながら何れもなかなかインパクトのある作品揃い。入って直ぐにはいきなり鴻池朋子氏の大作「無題」の一部が鎮座、その並びには会田誠氏の艶めかしい「大山椒魚」が掛けられていた。ZIPANGUと打ってあるだけに和モノテイストにも期待が掛かるが、山口藍氏の「道すがら」や山本太郎氏の「隅田川桜川」などあらためて実物はやはり圧巻であった。

また渡辺佳織氏「開け心」のシルクタッチな作品を始めとしたお馴染み折り紙モチーフの作品もなんとも艶があったが、彼女も含め熊澤未来子氏の「侵食」や岡本瑛里氏の「奪還」など緻密なタッチとそのメッセージ性には感心、ちなみに彼女ら女性陣は全員20代でこれから先がいい意味の末恐ろしさ?を感じる。

しかしコンテといえば、昨年の旧フランス大使館で開催された「NO MAN’S LAND」以来であったが、ちょうどこんな国難の最中で日本ブランドの信頼性が揺らいでいる折、こうした独自の文化力はまだまだ健在だなと改めて認識した展であった。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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