投機かヘッジか
国内の前3月期決算発表もピークを過ぎたが、なにぶん地合いが悪過ぎてそこそこの決算でも多くの個別は売られる始末という相場が今週は続いている。そんな地合を作った一因にJPモルガンがあるが、周知の通り突如としてデリバティブ取引で20億ドルの評価損が出たとの発表に金融系は動揺し東証でも個別で数銘柄は可也の影響が出ていた。
この取引はCDSに絡んだものといわれているが、ロイターではその裏付けとなる現物債市場の発展で同社がヘッジの再構築を迫られスワップの上にスワップを重ねる取引を行ってポジションの構造が複雑化し1つのスワップの利益で別のスワップの損失を穴埋め出来ないリスクが高まっていたというなんともデリバティブらしい話。膨張して動けなくなったところを餌食にされたというが、この辺は株の仕手崩れさながらである。
この一件が何ともタイミングが悪いというか、金融機関による自己勘定取引とその他の投機的な取引を原則的に禁止する所謂「ボルカールール」に絡んだ議論を再燃させている。渦中のモルガンはヘッジだと強調する一方で、米大統領などこの問題について改革が重要な理由がまさに示されたとして米金融規制改革の必要性を改めて強調しているが、当のルール詳細が確定していないことには結論を出すのは困難極める。
しかしこと金融系は立場が違えば言い分も違う。そういえば国内でも大手石油会社が原油に絡んだヘッジ取引で更正処分を出した国税庁とヤリ合っていたことも数年前にあったのを思い出したが、ルール解釈を巡って広義ではこれもその部類だろう。明確なルール未確定のものは得てして最後は政治力がキーになってくる。