終りよければ全てよし

恒例の日本漢字能力検定協会が発表する今年の世相を一文字で表す「今年の漢字」は、先に報じられた通り「金」であった。確かに今年はこれに掛け易いものが多く、先ずは5月の金環日食、6月の金星通過、そして7月からのロンドンオリンピックでの史上最多金メダル、そういえば2000年の今年の漢字も「金」であったが、この時もシドニーオリンピックの金メダルで湧いたなと。

一方でその裏では、消費税からAIJまで金(カネ)絡みの問題も健在?そして金融といえばコモディティーのGOLDも欧州問題、QE、そして財政の崖に揺れた一年であった。直近では当社企画の「TOKYO GOLD FESTIVAL2012」も今月開催されたが、足元の劇的な円相場の転換もあり来年もますます「金」は目が離せない存在になるのはいうまでもないか。

この円高基調の転換がもたらしたリスク選好は株式市場もまた然り。終りよければ全てよしではないが疑心暗鬼の連中には買う隙も与えないほどスルスルと上昇しアッという間に大納会を前にし年初来高値を更新である。長年眠っていた証券株など何処にそんな軽さがあったのかと思うような浮上を見せているが、こちらもまた裏では既に廃業を選択した老舗会員も多く出た。

ちょうど一年前には「業界の地を想う」として商品の地である蛎殻町一帯の風景が、取引員移転や東穀取の取り壊しで急速な変貌を遂げた旨を書いたが、境目の鎧橋の向こう側、証券の地である兜町も大手証券が軒並み本社機能を他へ移し、今年はメインストリートの老舗中小も廃業続出、証券会館もJASDAQ−OSプラザが閉鎖とこの一年でこちらもまた変貌を遂げている。

来年は年明けから東京証券取引所グループと大阪証券取引所が統合し、「日本取引所グループ」が発足する。またその後には「東京商品取引所」も発足の運びとなるが、景色の変貌と共に一旦諸々な物がシャッフルされこれらの創造がまた新たなものを齎すのか、この辺に思いを巡らせつつ今年は筆を置きたい。

皆様、本年もご愛読ありがとうございました。
どなた様も良いお年をお迎えください。


IPOラッシュ

今月12月のIPOは14社、今年の新規上場が46社であるからまさに今月は上場ラッシュということになるが、直近のものなどミドリムシの研究開発を手掛けるベンチャー企業のユーグレナは先週上場から2日目にして公開価格の2.3倍となる初値形勢となったが、本日も2日連続のストップ高と破竹の勢い。

もう一つ、同様に先週上場を果たした地盤ネットも公開価格の約2倍で初値形成し本日で3日連続のストップ高とこちらも更に凄い勢いである。全般総嵩上げのなかでもこれだけ派手な動きをすれば目立つものだが、上記の今月モノの公募価格からの初値の上昇率は平均59%と可也のパフォーマンスとなっている。

ちょうど日経平均も大台回復し、個人の余力が上昇し回転が利き始めたおりでありタイミングの重要性をつくづく感じるといったところだが、昨今は銘柄や地域のバラエティ−が増え企業の若年化も復活歩調にあるという。一方ではそれだけ玉石混合ともいわれるが、確かにラッシュの後は煮え湯を飲まされる例が過去何度もあっただけに今後は選別眼が必要となろう。


年末の再編劇

さてこの年末にきたところで先週はNYSEユーロネクストの米ICE(インターコンチネンタル取引所)への身売りの方が入って来た。デリバティブに強い米ICEとの統合効果により同分野で規模が最大といわれるCME(シカゴマーカンタイル取引所)グループの牙城を崩そうとする動きとも報じられていたが、取引所といえば直近の成約例では今年夏の香港取引所によるLME(ロンドン金属取引所)の買収が記憶に新しい。

ダントツの知名度を誇る上に200年以上の歴史があるニューヨーク証券取引所を擁するNYSEであるが、売上高こそ米ICEの2倍以上軽く売り上げるもののその売上高営業利益率は直近のもので米ICEの3分の1にすぎなく、設立僅か数十年という新興勢?の傘下に入る下克上劇もこの辺の収益力を見るに自然な流れとも映る。

ところでこのNYSEユーロネクストといえば、かつて当欄でも取り上げたことがある通りドイツ取引所との統合話があったものだが、欧州委員会の壁が立ちはだかり立ち消えになった経緯がある。他にもシンガポール取引所の件や、LSE(ロンドン取引所)の件など国際間の物は国益が絡むだけになかなか難しいものもある。

そんな渦のなかで、本邦も東京証券取引所と大阪証券取引所がはれて経営統合となるが国際的な再編劇前の布石なのかどうか、先ずはこれで地盤強化なるや否やその行方を見守りたい。


百貨店ストラテジー

さて、巷の百貨店などついこの間までお歳暮商戦酣であったが矢継ぎ早に今や御節商戦が酣となっている。ミシュランガイド発売後とあって例年通りその関連店舗から出すモノには強気な値段が並ぶ光景は例年通りだが、今年は三代が楽しめる「家族型」と逆に少量ニーズを取り込んだ「個食型」の二極化もいわれている。

こうした商戦ではあの手この手で各店舗共に個性を競い合うが、お歳暮、御節の師走が過ぎると今度は早々に冬物セールのイベントが待ち構えている。ところでセールといえば今年は夏物のセールで大手各社が例年より遅らせる形を取った為に混乱をきたし、結果的に各社軒並み減収が顕著となり見事に空振りとなった経緯があるのは周知の通り。

そんなことからもう横並びで追随は懲り懲りとばかりに、夏の反省から大手どころは先送りの先陣を切ったところを除き冬物セール開始は例年通りという向きが大半を占めるが、百貨店側と共に夏物のセール先送りを仕掛けたとされている大手アパレルも冬物では年初からと平常通りの動きになる見込みで、やはり前にも書いたところである麻薬の如きセールの扱いは難しい。

デフレ長期化のなかでのアパレルの位置付け、家電と共に回復期でのホテル等との違いを前にも書いたが、冬の時代はまだ続くのか否か顧客利益と自己利益の天秤での試行錯誤はまだ終りそうにもない。


建前論と核心

昨日の日経紙、風速計では「大手主導の日証協に反旗?」としてネット系および中小証券が日証協の中に立ち上げた「個人投資家応援証券評議会」なるものが、大手の意向を反映した日証協運営体制への反旗ではないかと業界で波紋を呼んでいる旨が書かれていた。

同評議会の議長はマネックス証券社長だが、同評議会参加については「主たる顧客基盤を個人投資家とする証券会社という評議会の性格付けに適った証券会社に集まってもらいたく、参加証券会社を一定の基準で絞り込むことも大事なことだと考えている。」としている。

となれば大手・銀行系は事実上参加が難しい狭き門?となってくるが、その議題にしてもファイナンスの実施に絡む問題点など大手のプライマリービジネス等の核心に触れる部分が多く真っ向から論議ということになると仮に大手と議論の場を設けても個人投資家の視点からすれば当然の如く大手には分が悪い。

他にもアップティック・ルールの是正まで含めた議論まで範囲は広いが、相場も年内に年初来高値を抜くかどうかまでにわかに熱くなってきているおり、市場活性化の使命を背負う日証協が均衡点を見出せるかその采配が今後注目されるところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2012

12

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31