8%の次

今週月曜日の日経紙一面は「ROE10%超 3社に1社」と題し、円安で企業の利益が過去最高を更新する一方で自社株買いや増配で不要な資本を減らす企業が増えた結果として、昨年は3社に1社がこのROEが10%を超え日本企業の資本効率が高まっている件が載っていた。

前にも書いたように日本企業は欧米企業に比べてかねてから資本効率が低いと指摘されてきたが、2008年の平均0.6%をボトムに昨年は8%台にまで回復している。この8%という数字、昨年の夏頃に当欄でも「8%の分岐点」と題し機関投資家注目の投資判断基準に企業のROEがこれから8%を超えるかどうかという点が注目されているとしたが、この水準まで来たという事になる。

しかし個別でROEが大きく改善した銘柄を見てみると、何れも上位に顔を出しているものはもともとが8%を超えていた物が大半であり、予め伸び易い素地を持っていたというのが顕著に表れており、果たしてこれ以下の部分がどれだけ嵩上げ出来るかというところが課題だろうか。

ともあれこれに呼応するかのようにROE等を基準に構成銘柄を選ぶ「JPX日経インデックス400」も週明けに2014年1月6日の算出以来、初めて15,000の大台を超える事となった。上記の通り8%達成となった今、来月からはコーポレートガバナンス・コードが導入のはこびとなり更に次は平均10%の大台に乗って来るのかどうかこの辺が大いに注目されるところ。


Weeklyオプション始動

さて、今週から大阪取引所にて日経平均を対象とした週単位で満期を迎える新形態の「Weeklyオプション」がスタートしている。このオプション、初日の日中売買高は477枚でうち95%の452枚が今週末29日満期のオプションであったが、権利行使価格20,500円のコールの売買高が比較的多かった模様。

このオプション始動の背景には、近年重要な経済イベントの増加や市場に与える影響力の拡大等によって短期間でのヘッジに対応できる取引を求める声も多かった事があるが、実際に海外等では同形態のオプション取引が急拡大し、S&P500種を対象としたものではオプション取引に占めるこのWeeklyの割合が約3割に達しているという。

また、週単位での売買の関係上、月単位オプションに比べてそのオプション価格も安いという特性があり、こうしたタイムディケイの関係からストラドルなどの組成がし易くなる利点もある。ただ初日は期待よりやや低調だったとの声が多く聞かれ、現況も取組があるモノでも板は可也薄い。今後は取扱証券会社の増加や、機関投資家の利用含めリクイディティ確保等が課題となろうか。


マル信熱

さて、本日の上海総合指数は後場一段高となり2008年1月以来の4,900ポイント台となったが、上海市場といえば先週に心理的なフシ目の4,500台を回復した後もその伸びは目を見張るものがある。斯様に急上昇し、かれこれ倍化してきた原動力になってきたものに信用取引の存在が大きいといわれている。

同紙によればこれを裏付けるように信用残高は先週時点で昨年同時期の約5倍水準にもなる約40兆円近くにまで膨れ上がり、日本のそれの約13倍水準になるという。また残高が時価総額に占める割合を見ると日本の0.5%を大きく上回る3.5%とこれまた同取引が株高を牽引する構図が鮮明である。

マル信は市場にリクイディティーを提供する等重要な役割を持つが、同時にボラの増幅など副産物もある。先週は中国ソーラー発電企業をはじめとし、中国の資産か率いる金融企業グループ等が香港市場で5割〜6割も暴落する異常事態が発生しているが、企業素性や市場整備含め常にこうしたリスクを想定しておかなければならない。


高揚感無きバブル越え

本日の日経平均は4日連続で年初来高値を更新し2000年4月14日以来約15年1ヶ月ぶりの高値を付けたが、先週末の日経紙一面を飾っていたのは東証一部の時価総額も591兆3,007億円となり、1989年12月のバブル期経済の水準590兆9,087億円を約25年ぶりに上回りとうとう過去最高となった件であった。

とはいうものの日経平均が15年ぶり高値とはいえ4万円近くまで買ったあの絶頂期の記憶から約半値水準ではピンと来ないものだがそもそも銘柄数自体が違うのでこれも当然、事実単純に銘柄の単価ベースで弾いてみれば今の日経平均水準以下にまでなるので妙に納得である。

当欄では先月末にITバブル時以来の終値での20,000円台を回復した際に「失われた15年奪回」と題し、文中でやはり15年ぶりに史上最高値を更新したナスダック総合株価指数も当時と比べその構成銘柄も主役クラスの新旧交代が著しいと書いたが、東証でも上記の件絡めてバブル後に主役級が相次いで登場している構図に変わりはない。

足元では異次元緩和が実施されバブルなんぞという文言も本当に久し振りに彼方此方で目にするようになったが、高揚感がなかなか沸き辛い昨今の構図だけに今更ながらバブル後期にQレシオなんぞが持て囃されたウォーターフロント相場から狂乱仕手株時代など、今と比べてしまうとそのホットマネーのエネルギーの相違をしみじみと実感する。


時代背景

さて、今週の日経夕刊の「なるほど投資講座」は入門・コーポレートガバナンスと題して連日企業統治について連載が行われているが、この企業統治や利益還元を声高に訴えていたファンドとして先の日曜日の同紙「企業転換 戦後70年」の項では村上ファンドが取り上げられていた。

この村上ファンドに関しては当欄でも最近では2月、3月と取り上げた事があったが、ガバナンス論を武器に日本人による日本企業への敵対的TOBとして初の試みが話題になったものの、初回の昭栄やその後のプロキシーファイトでも日本初となり注目を集めた東京スタイルにおいても志半ばで不発に終わる結果となった。

時代が今ならファンド側も企業側もまた違ったタッチになり、村上ファンド以外でもスティール・パートナーズなど外資勢の展開や企業の政策もまた変わっていたかもしれないのは否めないところだが、時は流れ上記の昭栄は後にヒューリックと経営統合しその社名は消滅、そして東京スタイルも後にサンエーと持株会社方式で経営統合しTISホールディングスと名前を変えている。

2月に「消えゆくトラウマ」と題し、対話型への変遷から以前のようにファンドをアクティビスト扱いする風潮も無くなってきた旨を書いたが、これも国際標準へ向かう過程の経験図という事になろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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