官製ファンドとモラルハザード

さて、懸案となっているシャープの経営再建に絡んでは度々登場してはペンディングになってきた台湾の鴻海精密工業だが、今回はどの程度ソロバンをはじいているのか昨日はシャープのメインバンクが保有する2千億円の優先株を買い取る新提案を出してきている。

周知の通りこの再建を巡っては上記の鴻海精密工業と官製ファンドの産業革新機構が張り合ってきているが、政府主導で産業革新機構が出資するという流れが今のところ濃厚になってきている。しかし外部の民間が手を挙げている中を官民ファンドが民間を退けてまで受け皿となる構図やその出資額を勘案するに違和感は否めない。

また本日の日経社説でも書いてあった通りで、業績が悪化しても国が助けてくれるとなれば産業の新陳代謝を阻害し公正競争も歪む。長年銀行などに見られたような「護送船団方式」を今更ながら彷彿させる場面でもあるが、労働市場流動性を確保しつつモラルハザードが発生しないようなスキームが要求されてこようか。


世界経済体温計

本日の日経紙マーケット面の銘柄診断には2013年6月以来約2年半ぶりの安値を付けた日本郵船が出ていたが、この辺はいわずもがな新興国の景気減速を背景に海上の荷動きが鈍化しBDI(バルチック海運指数)が過去最低水準にまで下がった事に因るところが大きい。

このBDI(バルチック海運指数)、海運ポストをマークしている向きやコモディティー関係者には不可欠な指数だが、1985年1月4日を1,000として算定しており以降リーマン・ショック前の11,793を最高値にして昨日はとうとう350以下にまで暴落し史上最低を更新し続けている。

つい昨年の秋口からでも半値水準と、まるで原油系のETNや先物オプションを見ているような暴落加減だが、こうしたデリバティブのように腕力である程度の操作が可能な性格の物でないだけにより実態を表しているか。海運株に限らず他の市場がリンクしていない場合、基準になる実態への鞘寄せには常に注意しておきたいところである。


牽引持続なるか否か

本日の日経紙アジアBiz面には「中国、高級ブランド消費2%減」と題して、2015年に中国人が中国国内で購入した高級ブランド品の総額が1130億元と前年比で2%減少したとの米調査会社ベイン・アンド・カンパニーの報告が載っていた。

末尾には「グッチ」など昨年に閉鎖した店舗数が新規店舗数を上回ったと書いてあったこれ以外の著名ブランドでは、同じ伊からは「プラダ」も来年度の出店数を従来の五分の一以下に抑制、仏の「ルイ・ヴィトン」も昨年は本土の三店舗を閉鎖し17年半ばまでに2割の店舗を閉鎖すると報じられている。

いずれにせよ冒頭の調査会社によれば中国人は世界の高級品消費の31%を占めるといい、国内は兎も角も同国の経済減速や人民元の切り下げに揺れる状況を鑑み今後の旅行先での爆買いに見られる消費にはたして変化が出てくるのかどうかこの辺も気になるところである。


逆鞘一周年

週明けの日経平均は引き続き日米の金融政策に対する期待が継続し先週19日以来、約1週間ぶりに17,000円大台を回復しているが、やはり非鉄ポスト等はLME銅の軟調等もあって戻りが鈍い模様だ。斯様にコモデイティー国際相場の軟調継続を映して、国内で金地金等は個人による売りも手控えられているようだ。

この辺は先週の日経紙で田中貴金属工業の2015年買い取り量が2万1,599キロと14年比で23%減少した旨が載っていたが、一方で販売量は3万1,976キロと14年比で21%増えた模様だ。地金人気といえば先月は当欄でもプラチナハンティングと題して取り上げたプラチナは、年間で1万6,732キロと14年比で3.6倍となった模様。

しかしこの両者もTOCOMで逆鞘現象となってから先週ではや1年が経過している。ディスカウントは1984年のプラチナ上場以降で最大というが、ETFも純プラチナは1年前の3.5倍の資産残高に膨らんでいる。本邦の買いの手は時に特異な存在ともいわれるが「需給は全てに優先」の先物とは対照的である。


無くならない不公正

今週はじめの日経紙夕刊・ニッキィの大疑問には「不正な株取引どう摘発?」と題して、株式市場での不公正取引の手口をはじめその他諸々の課題について書かれていたが、この辺に絡んでは直近で記憶があるのがやはり昨年末の元仕手集団の大物代表の逮捕に続く旧村上ファンドの元代表への強制調査だったか。

証券取引等監視委員会擁する金融庁の政治もあってどの辺に絞って挙げているか解りようもないが、思えば発足当初のマンパワー不足は否めず正直調査も最初から限界が見えていた感もあったが、昨今は当時からすれば可也のところまでそろえているという感触に代わってきた。

しかし思えば末尾にも書いてあったように、一昔前は本当にインサイダー天国なる言葉が作られる背景があったのは紛れもない事実である。一般的にベタな新薬や新製品開発という買いのイメージより圧倒的に多かったのがやはり破綻情報であった。まあ漏れるルートはそれぞれであったが、比較的一般にまで情報が漏れた結果異常な逆日歩が付き破綻までに持ち出しになる本末転倒?な結果になった例も多発したものだった。

あとはハコになった企業なんぞはファイナンスから何から殆どザルであったりもしたが、機関の確立に伴い魔女狩り的に感じられる件も心なしか多くなってきたようにも思える。末尾には高速取引への対処課題等も書いてあったが、こうした次期の事項課題も山積みでこちらの整備も急務といえよう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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