CG導入後のTOB合戦

さて、今週はシルバーウィークからほぼ往って来いと冴えない株式市場であったが、そんな中を気を吐いていたのはやはり旧ユニー系の呉服屋「さが美」だっただろうか。週明けから二日連続でストップ高を演じ、わずか三営業日でその株価は2倍に化けるなど破竹の勢いであった。

この背景には周知の通り来月に投資ファンドのアスパラングループの傘下入りで合意していたところを、別の投資ファンドであるニューホライズンキャピタルがアスパラントのTOBを上回る価格の他、貸出債権買い取りや第三者割当増資にも幅を持たせた買収申し入れをした事に因るもの。

過去こんなケースで株価が乱高下した例では、かつてジャスダックに上場していた「幻冬舎」のMBOにおけるイザベルリミテッドの登場や、かつて東証一部に上場していた「アコーディア・ゴルフ」のTOBにおけるPGMホールディングスの登場等々の記憶があるが、結果的には何れも不発に終わっている。

ただこれらの騒動から時を経て昨年にはコーポレートガバナンスコード適用が始動しており、買収事案もより開かれた場になる事への期待も大きいのは個人もファンドも一緒である。そういった意味では今回のさが美の案件も駆け込み感が強いとはいえ、その行方が今後の参考として注目されるところになるか。


再上場機運

9月末配当権利落ちの本日の日経平均は、円高進行に対する警戒感が燻るなか終始マイナス圏で推移し反落となったが、IOP組は破竹の勢いで昨日値付かずであったチェンジが公開価格の2.5倍で初値形成、またシルバーエッグ・テクノロジーは公開価格の2.9倍で初値形成のあとストップ高に張り付いての引けとなっていた。

ところでIPOといえば、先週末にはテーマ・パークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する「ユー・エス・ジェイ」が東京証券取引所に株式の再上場を検討している事が報じられている。ご存知此処はかつてマザーズに上場していたが、業績不振から09年にゴールドマンサックスの公開買い付けを経て上場廃止になっていた経緯がある。

今やハリー・ポッターをテーマにした新エリア大人気の追い風もあって機と睨んだのだろうが、投資マネーもまた世界的な低金利下の運用難からファンドに集まり易くなっている。ユー・エス・ジェイと同じパターンでは「あきんどスシロー」等もあるが、こちらも再上場を狙っており後半から来年に掛けてはこの手の再上場組も注目を集めそうだ。


共同J-GATE

東京商品取引所が、今年7月に導入したJPX(日本取引所グループ)の「J-GATE」を共同利用する新システムに移行してから1週間が経った。東商取はこれによって取引時間の拡大や金オプションも刷新し注文の処理速度も従来と比べて向上、高速売買を手掛ける海外のプロップハウスなどの誘致を視野に入れるとしている。

ちなみに初日の金オプション取引では売買がコールで65枚、プットで46枚と合計111枚の取引があった模様だったが、実に約9年ぶりの取引成立であった。とはいうもののご祝儀商い
の初日以降の商いがポイントになってくるのは言うまでもない。7月に始まった金現物も初日こそ14枚の商いがあったが8月以降はピンにとどまるケースが目立つと過日の日経紙にもあった。

一方で稼働から1年を迎えた「東京ゴールドスポット100」などは既に先物標準と肩を並べる水準まで伸びてきている。この新システム導入で始まった東証マザーズ先物も上場4日目以降は出来高が1,000枚の大台を上回る日がなかなか無いのが続いているが、この辺などとも併せ今後の普及の推移等を注視しておきたい。


ハイブランドの陰り

さて今月始めに「リシュモン先行」とし、カルティエがここ数カ月の為替変動を鑑みて平均で約10%の値下げに踏み切った旨を当欄で書いたが、これに続いて中旬からは先に終了したTBS系「せいせいするほど、愛してる」の舞台にもなったティファニーも約7年ぶりとなる値下げを行い、それから数日後にはボッテ・ガヴェネタも一部商品の価格引き下げに踏み切っている。

ところで、上記のティファーが約7年ぶりの値下げに踏み切った14日の欧州市場では、リシュモンの株価が8月迄5か月間の売上が13%減少との発表から3.9%の下落を見せ、同業のスウォッチ・グループまで連れ安となっていた。また、来年以降は年間売り上げ成長見通しを発表しないとした事を嫌気し、エルメスの株価も8.8%の大幅安をこの日は演じている。

エルメスの決定はリシュモンよろしくビジネス環境の先行き不透明感の裏返しともいえるが、来月もモンブランが平均で7〜8%の値下げを予定し、ヴァシュロン・コンスタンタンも値下げの予定など高級ブランドの値下げはまだ続く模様。インバウンド需要一服で国内高額消費にも陰りが見える中での相次ぐ値下げは決して円高のみが理由というワケではなさそうで各ブランドの匙加減が注目されよう。


SSとCGの形骸化

さて、先週末の日経紙社説には「型より実質が問われる東芝の統治改革」と題して、会計不祥事を起こした東芝がコーポレートガバナンス等の改善状況を東証に報告した旨が載っていた。おもえば2014年のスチュワードシップコードに続きコーポレートガバナンスコードも適用され1年以上が経過、今や多くの企業がコードの諸原則順守を心掛けている。

この二つのコード始動と時を同じくして暫く鳴りを潜めていた村上ファンドなどが久し振りに再活動をみせたのも記憶に新しいが、肝心の企業側が何所もこれを掲げIRに勤しんでいるもののそれらの順守に関する説明が当初から比べると横並びになってきている点は否めない感がする。

冒頭の東芝なども文中にあった通り、いち早く社外取締役が経営監視する体制に移行するなど統治改革の先頭集団を走る会社として市場から評価を得ていたものの、結果は粉飾発覚から特設注意市場ポストに入れられ一年以上経った今も出られぬ憂き目に遭っている。斯様に形骸化が目立つ昨今だが、一方で株価など正直にそれらを映す部分もありもう一度原点回帰で張りぼて構図の再考も求められようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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