司法とSESC

昨日の日経紙夕刊には「処分取り消し訴訟増加」と題してインサイダー取引等で行政処分を受けた個人や企業が処分取り消しを求めて裁判に訴えるケースが増えている旨が書かれていた。

インサイダー取引での金融庁の課徴金納付命令取り消しといえば記憶に新しいのが、昨年の東電のファイナンス情報を野村の担当者から得たのを基に空売りを行ったとの疑いがかけられた金融コンサルの女性の一件か。司法の場での初の取り消しケースとなったが、この一件で懲戒解雇された野村の社員もまた東京地裁は解雇無効の判決を出している。

課徴金は少額であったもののこれ以降も事実認定に異論を唱える向きが多数出てきており、証券取引等監視委員会はこうした動きに対応する為に昨年末に「訟務室」を設置したようだが、確かにデータ一辺倒に対抗すべく海千山千の投資家ほど意欲的に訴訟に臨むのは想像に難くなくこうした輩と対等に渡り合えるマンパワーの確保こそ今後は課題になって来るであろうか。


仮想通貨元年

先週末に「無国籍の8才」と題し当欄ではビットコインを取り上げたばかりだが、本日の日経紙総合面にも「ビットコイン危うい急騰」と題し、仮想通貨群の値上がりがここ継続し代表とされるビットコインに至っては金の最高値を抜いて先週25日には年初の3倍となる1ビットコイン=2,700ドル台まで上昇した旨が載っていた。

結局この週は15%高、3月末以降で見ると実に110%の上昇と破竹の勢いであったが、昨年末頃にビットコインについて触れた際には中国勢のリスク回避の動きで活況であった旨を書いていたものの、規制によってこれらが下火になったのに取って代わり新年度から仮想通貨を決済手段と認定する改正資金決済法が施行された事も背景に本邦勢が現在の盛り上げに一役買っている。

とはいえマーケットとしてパイは約10兆円程度と小さいだけにビットコインに次ぐイーサリアムなど他の仮想通貨の化け方も尋常ではない。当然高値警戒局面では急落場面もありそれがまた投機熱を煽るというものだが、投資尺度も無く個人も全てがマイニング等に精通しているワケでもない黎明期だけに便乗するブラックビジネスにも各々充分な注意が必要だ。


HFT規制3本柱

本日の日経紙法務面には「株の高速取引 規制の3本柱」と題して、1秒間に何千回もの高頻度取引を繰り返す所謂HFTに関する規制を盛り込んだ改正金融商品取引法が成立した旨が載っていた。施行は公布から1年以内だが、施行から半年は登録せずとも高速取引を継続出来る経過措置があるという。

当欄でHFTに触れたのは直近では米バーチュ・フィナンシャルによる同業のKCGホールディングスの買収合意の報があった先月の事であるが、開発競争の激しさから規制も欧米では先行し開発負担の重さと併せて業界も斯様に大手の合従連衡の動きも出てきている。

この規制が欧米で俎上に上がったのはHFTの売買が全体の5割程度になっていた時であったが、時を同じくして東京証券取引所ではコロケーション提供によって当時の一日平均で4割強であった。あれから3年が過ぎた今では同様のサービス提供での取引が注文件数の約7割を占めるというからその増殖加減は一目瞭然である。

そんな事から本邦も斯様に規制を打ち出した事で欧米とも足並みが揃うというもので、今回の規制で登録制にする事で所謂バラし発注が透明化してしまうワケで一定効果は望めそうだが、クオートスタッフィングはたまたレイヤリングのようなケースをチェックに入った場合、プログラムの自動判断がどの程度までお咎めなしとなるのかこの辺含め実効性確保まで紆余曲折ありそうだ。


無国籍の8才

さて、インターネット上の仮想通貨ビットコインのドル建て相場がここ1ヵ月で6割もの上げ幅を記録し、先週末には遂に伝統的な「無国籍通貨」である金の史上最高値である2011年9月の1,920.8ドルをも上回った事が話題になっていたが、今週に入ってからもこの勢いは衰えず2,000ドルの大台を超えて連日で史上最高値を更新している。

ビットコインといえば今年3月には金相場を超えたと話題になっていたがはやその金の史上最高値をも更新、その3月にはSECからETFの認可が得られなかったとの報で970ドル台にまで急落した場面があったものの、約2ヵ月で相場は2倍になった事になりなんとも破竹の勢いである。

斯様に相場も熱いが、既に公共料金の一部支払いや今週はLCCのピーチ・アビエーションが年内にもビットコイン導入と発表、また過日ビックカメラへ行った際にも「ビットコインが使えますと」いうお知らせをエスカレーター脇で見るなど実用化の波も彼方此方で広がっている。

これら各所での注目度合に並行し関連株式もモノによっては倍化するなど連日の大賑わいを見せているが、ETF認可の一件では政府による信用裏付けやトラッキングエラーの問題の壁の前に泣いた無国籍通貨も、価値交換手段では対照的に本領発揮といったところで未成熟市場が今度どの程度代替資産としてのポジションを構築してゆくのか引き続き注目してゆきたい。


中小型偏向

本日の日経紙マーケット面には「IPO指数高水準」と題して、過去1年間に上場した企業の値動きを示す「QUICK IPOインデックス」が昨日に約10年4ヶ月ぶりの高値を付けた旨が載っていた。主力を本格的に買い辛い中、相対的に業績への影響が小さいIPO株に資金が向かい易いという。

そういった意味合いでは新興マーケットも、13年に時価総額が17兆円を超えていたものの相場低迷等で16年2月には7兆円を割るまでになっていたジャスダック市場など、個人投資家を中心とした資金が向かった結果週明けにはこの時価総額が2015年9月以来、約1年8ヵ月ぶりに9兆円を超え本日も東証マザーズ指数と共に4日続伸となっている。

外部環境からは足元英国の爆発テロ事件や騰落レシオの高止まり等々主力物色が躊躇われるなか、来月から再開されるIPOと併せてこうした新興へのシフト鮮明化が持続することになるのかどうか引き続き注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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