進化する資金調達

さて、以前にも触れたICOが資金調達の主役になれるのか否かが議論されている昨今だが、資金調達といえばもう一つ、一昨日の日経紙法務面には「ライツ・イシュー再び関心」と題し、国内では2009年から適用になった企業の資金調達手段の一つである「ライツ・イシュー」とよばれる株主に新株予約券を割り当てる仕組みの使い方をよくしようと工夫をこらす動きが出始めている旨が乗っていた。

思い出せば日本での第一号は不動産のタカラレーベンが実施したノンコミットメント型であったが、その後は数社の実施を経て大量調達を計画したJトラストのケースでは前後で株価も大きく動いた事で何かと物議を醸し出した経緯があるが、関係者側としては持ち株比率が下がったとはいえ概ね成功したファイナンスのケースともいわれている。

他にも中には意図不明な乱用や大株主が怪しかったりと噂されるモノもあったが、新手のもので錬金に使えそうな技であれば意欲的に利用されるのが黎明期の特徴か。こうした事例を踏まえて規則改正が為され証券会社との共存も考慮されるようにまでなってきた昨今だが、ICO然り一段と小粒な企業にもファイナンスの道が開けてきたともいえよう。


高収益モデルか?

さて、先週末に飛び込んできた仮想通貨取引所大手コインチェックの仮想通貨約580億円分の不正アクセスによる流出問題が連日紙面を賑せている。仮想通貨を巡っては世界中で不正資金流出事件が起きてきたが、過去最悪であったマウントゴックスの約470億円を上回る額の流出と他国に比べ突出しているのがまたも日本となっている点が非常に印象的だ。

この巨額に絡んでは会見では取り急ぎ約26万人全員に対し総額460億円を日本円で返金するとしているが、その原資に関して自社の現預金で対処すると述べている事で改めてこれが事実なら可也の高収益ビジネスであったのではとの声があがっており、実際同社に関しては月間取引高約4兆円、その収益は毎月推定で400億円あったはずとの推測も一部で出ている。

そうした背景もあって株式市場では情報セキュリティー関連が物色されるのは当然としても、ネガティブ視されそうな仮想通貨取引所関連が意外にも逆行高、GMOインターネットは昨日年初来高値を更新し日経平均が大幅に5日続落となった今日もSBIやフィスコが続伸するなど堅調持続となっているが、物色対象も事件の進展と共にまた思惑含みとなってきそうだ。


イナゴ化

本日の日経平均は米株の大幅続伸や好決算にも無反応で小幅ながら4日続落となったが、個別ではベルパークやオリジナル設計が売上高や営業利益の上振れを囃して後場から突如急騰、ベルパークは実質的に上場来高値を更新、オリジナル設計はストップ高に張り付いたまま引けることとなった。

両者は引けまで堅調持続となったものの、先週末の市場では後場から医療用データ管理システムのファインデックスがキャノンメディカルシステムズと業務提携の報道が出て突如突飛高するも、そのわずか数分後には急騰した約60円幅が往って来いと軽いイナゴタワー形成となったが同様の動きは前週に有機EL関連で突飛高したケミプロ化成にも見られた。

同株が動意付いた翌日の日経紙デジタルトレンドにはちょうど「株価動揺「イナゴ」の塔」と題し派手に急騰急落を演じた麻生フォームクリート株その他の銘柄が挙げられていたが、ネットの劇的な普及や即時発令型?に変貌してしまった規制も相俟って銘柄に絡む投資家層も変わり、かつての福助、兼松日産や日本カーボン等々に見られた空売りを限界まで誘って踏み上げという構図は思えばもうセピア色の風景と化している。


思い出されるピンクの雲

さて、昨年からピンクものがトレンドとなっており今週もスイーツやカフェ中心にピンク推しの新製品が続々と投入されているが、ピンクといえば日経紙文化面では先週から「大好きで大嫌いなピンク」なるテーマで毎日違う絵が紹介されており、一昨日火曜日のそれはアンリ・ルソーの「戦争」が取り上げられていた。

私がこの「戦争」の実物を見たのは今から8年前に国立新美術館で開催された「オルセー美術館展2010」で、個人的にはこの戦争を描いた後の1900年代に入ってから描かれた大作の「蛇使いの女」が目当てで観に行ったワケだが、何れにせよ上記の蛇使いの女と共に来日が叶ったのはまさに奇跡であった。

このルソーといえば遠近技法を使わないポスト印象派で有名だがこの「戦争」は特に代表作とされており、この手の戦争の悲惨さを訴え反戦のシンボル的存在となっている絵画はキュビリズムを創始したピカソの「ゲルニカ」等も双璧だが、実際にルソーのこの二点の前に立った際は得も言われぬ感覚に包まれたのを今でも鮮明に思い出す。


雑所得の憂鬱

今週の日経紙総合面の迫真では「ビットコインバブル」と題し、鉄火場と化し乱高下を繰り返すビットコインに携る業者に、これに絡んだ成功談から失敗談までバブルに踊った幅広い投資家(投機家)の胸の内などを連日取り上げている。

急騰から一転しての暴落を演じているだけに個人や業者の失敗例も連日取り上げられているが、これらに見られるように昨年の利益を今年の暴落に絡んだロスカット地獄で飛ばしてしまった向きはこれから他との損益通算不可という構造からなかなか当人にとっては厳しい宣告が待っている事例もある。

当欄では先週に「億り人の憂鬱」と題し国税当局が仮想通貨で多額の売却益を得た投資家らの調査を始めた旨を書いたが、上記の件もこうした利益を雑所得とする為で他のコインへの乗り換えや支払い段階で課税確定しているだけに憂鬱はこれからでバブル煽りのメディアのネタがまた増えそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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