Wコードが齎す変化

さて、毎年この時期になると複数の企業から定時株主総会の総会招集通知が届くが、本日の日経紙投資情報面には「株主総会 お土産やめます」と題して、30日までに開示したこの総会招集通知で今年は昨日取り上げたKDDIをはじめ三菱商事、第一三共、東京ガス、コマツが総会におけるお土産取り止めの旨が出ていた。

株主総会のお土産といえば昨年も当欄でちょうどこの時期に触れた事があったが、これを取り止める企業が話題になり始めたのは三年くらい前からだろうか?お土産を止めた途端に出席者数が3割から企業によっては7割も減ったとの件で大手紙でも取り上げていたが、昨年の双日などお土産廃止で会場を訪れる株主数が9割も減ったとの件が話題になっていた。

冒頭の企業もこれで今年の総会へ出向く向きが減ってしまうのかどうかだが、お知らせでただ廃止しますとしている粛々とした向きから株主間の公平性等を挙げているものまであるがこの辺は世間の趨勢をふまえて等との文言併せ昨年の各社のご案内と同様に金太郎飴のような感じである。

当欄で、スチュワードシップ・コード導入からこの辺が今後どう意識されてくるか注目と書いたのが今から4年前だったが、果たしてというかお土産や優待目当ての株主が篩にかけられ、ESGの波もまたこうしたところへ及ぶに至りモノからコトへシフトする向きも年々増加しつつあり、二つのコード始動で総会絡めた企業姿勢が俄かに変化しつつある。


自社株買いの継続性

本日の日経平均はイタリアの政局混乱などから南欧諸国の信用リスクに対する懸念が再燃した事を嫌気した欧州株安や、その流れを受けた米株式の大幅続落を受け大幅続落となった。そんな中で主力の一部のなかでも地合いに左右されず底堅い動きをしていたのがNTTやKDDIであったが、これらに共通するのは自社株買い銘柄という点。

自社株買いといえば今年は初めてそれに踏み切る企業も多く目にするようになってきた感があるが、上記の通信二社は毎年取得の常連組でこうした悪地合いに左右されないのもその辺が評価されている面もあるか。この継続性では野村証券によると10年以降に初めて自社株買い発表をした296社のうち、2度目の実施率が4割、3度目では約2割まで下がっている旨が過日の日経紙で見掛けた。

事実これまで取得枠設定の発表をしても実際は申し訳程度しか買わずに終了というケースも多く酷いモノでは買わないまま終了するケースもあった。今年は2月からの株安等も相俟って2割程度実施額が増加するとの見方もあるが、配当と共にROEの向上など株主還元強化手段としてその継続性も今後注目される事になろうか。


PER乱高下

本日の日経紙投資情報面には「ソニー、8年ぶり日立逆転」と題して、昨年度の電気ポストの純利益ランキングにおいて10年ぶりに過去最高を更新したソニーが8年ぶりに日立製作所を上回り第2位に躍り出た旨が出ていた。ところでその上の首位はといえば東芝であったが、これは米WH向け債権売却に伴う税負担減少効果に因るところが大きい。

同紙のランキング表では首位ながら同社のみ二部ポストであるが、規模が規模だけに投資のモノサシとしてのPERなど大揺れしているのが現状。今月は中旬に発表された決算で前期から純利益が2,600億円以上の増額となったことで、約10倍であった二部予想PERが一日で6.30倍と急低下する珍事?があった。

この辺に絡んでは当欄で一年くらい前に「二部の池に鯨」と題して、東芝同様に黒字転換となった上記ランキングの14位にランクインしたシャープと東芝で二部時価総額の3割を占めるに至りその弊害を懸念した事があったが、果たしてというか同社が決算発表をするたびに投資尺度が乱高下を繰り返している。

シャープが抜けたとはいえいまだに東証二部の時価総額のうち同社だけで約2割を占めているワケだから上記の通りその影響度は推して知るべしで、はたして東芝も何時の日か一部復帰が叶うのか否かそれまではこのクジラに振らされる展開が今しばらく続く展開になるか。


取引員合従連衡

週明けの日経平均は4月以来の薄商いとなるなか円安等を支えに小幅続伸して終了したが、全市場値上がりランキングの2位には本日ストップ高のまま引けたジャスダック上場の豊商事がランクインしていた。先週のマーケットでもストップ高を交え急騰した岡藤ホールディングスが週間値上がりで堂々の第1位となるなどこのところ取引員の値上がりが目立つ展開だ。

斯様な急騰劇の背景には、既に資本業務提携をしている日産証券が来月にも岡藤ホールディングスの第三者割当増資を引き受け筆頭株主になる事で、将来的な収益拡大の手を打った事が好感されたという事が週末の日経紙商品面でも出ていた。本日の豊商事にしても然りで、エボリューションジャパンからの商品部門取得効果が18年3月期の連結黒字浮上に見られるように早速の統合効果が出ている。

一寸前までを辿れば上記の日産証券はかつてジャスダックに上場していた日本ユニコム色のもとトレイダーズ証券からエイチ・エス・フューチャーズまで絡み、エボリューションジャパンも前身はかつてジャスダックに上場していたエース交易であったが、両社とも上場していた頃を思い返すに最近の合従連衡の動きと併せ随分とその景色も変わってきたものだ。


100周年後のこれから

さて、先の日曜日の日経紙・TheSTYLEでは3月下旬にスイスで開かれた世界最大級の時計見本市である「バーゼルワールド」が記事の冒頭で挙げられ、若年層はスマホの普及で高度な性能に興味は無くなってきたかわりにライフスタイルや服装に合うかどうかなど時計に求めるものがカジュアル化してきている旨が書いてあった。

ところでこの「バーゼルワールド」といえば、今年の出店企業数が約650と昨年の1,300からほぼ半減し、その開催期間も6日間と2日間短くなった旨の報道も前に見掛けた。ちなみにその前の一昨年の出店企業は1,500で、ここ数年のピークであった2011年の2,000からははや三分の一になった計算である。

本邦からもブランドイメージを浸透させる必要性からセイコーなどグランドセイコーの独立ブーズ設置の試みを見せているが、出展企業が減少してきたその背景には高額な出展料で費用対効果を疑問視する声が上がっている事や、双璧ともいえるもう一つの見本市であるジュネーブサロンの存在も大きいとの指摘もある。

一部ではこのジュネーブサロンと会期の接近を図りたいとの報も出ているが、冒頭のような新たなターゲットとして訴求したい若年層はインスタなどで情報を得たり発信するのが主流になってきており、出展側もこの辺を鑑みた不参加の動きもあると思え見本市そのものもデジタル時代のあり方を考えるタイミングになってきたといえるだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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