カバー一巡後

周知の通り昨日は東京五輪・パラリンピック組織委員会が記者会見を行い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期が決まった東京オリンピックの開催日程については来年7月の開幕で決定する見通しとなったが、一時は中止も危ぶまれていただけに先週は五輪関連株の動きが下落から一転してカバーの動きが目立っていた。

さすかに株価が往って来いとなるのは望むべくもないが、日本選手団の公式ウエアや大会ボランティアのユニフォームを独占提供する筆頭格のアシックスはストップ高に張り付き、他にも関連施設の建設を手掛ける大成建設に住友・三菱・三井の各不動産会社、警備のセコムやパナソニック等のスポンサー企業が軒並み高となっていた。

とはいえ延期に伴う違約金や再調達コストなど不透明な部分も否めず、大手シンクタンクでは延期によってGDPベースで1.7兆円程度の経済損失が出るという試算もある。諸外国に比較し何かと対応遅れが指摘されている政府が今後どのような具体的財政政策を打ち出すのか、VIの高止まりやオプション市場もプットのIVから見るに株式市場も二番底を取りに行く懸念が付き纏っているがそうなるか否かそれ如何に関わっているともいえようか。


国内2例目

さて今年の1月に何度か当欄で取り上げた渦中の東芝機械だが、注目されていた同社の臨時株主総会が先週末に開催され株主の過半数の賛同を得て旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスに対する株主防衛策を可決することとなり、これを受けた同社株は先週末日経平均が急反発するなか逆行安を演じていた。

前田道路と共に時期を同じくしてその行方が注目されていたこのTOBだったが、取締役会ではなく株主総会で有事導入型の買収防衛策の賛否を問うたパターンとしては当時同じくスティール・パートナーズがTOBを仕掛けていたブルドックソースが思い出されるが本件で2例目のケースとなるか。

ともあれこれによって投資ファンド側は実施中のTOBを撤回する見通しとなったものの、既に昨年事前警告型の導入を廃止していた点の問題視やこのガバナンス重視の時世で勝算は低いのではとの観測も一部にあったが、議決行使助言会社間でもこの辺に関して見解は分かれており株主との対話に関し課題を呈するケースとなった事例の一つとなろうか。


史上初の五輪延期

周知の通り今週アタマには新型コロナウイルスによる感染拡大の現状を鑑みIOCは臨時理事会を開き東京五輪・パラリンピックについて延期を含めて検討するとの発表が為されたが、首相とIOC会長の電話会議が速やかに行われ1年程度の延期が決定となった。先週の理事会後には抜本的決断を下す必要はないとの発表があったばかりだが果たしての一転、開催延期は史上初の事となる。

確かにこのところ主役の歴代メダリストなど各国のアスリートや協会が続々と批判を露わにし、強行突破が半ばコンセンサスとなっていたこの東京五輪開催に関してJOCの一部理事からも疑問の声が日増しに強くなりさすがのIOCも世論には抗えず方針を事実上転換せざるを得なかったという感じか。

個人的には経験があるので体操競技に関心があったが、こちらも東京オリンピック出場枠が懸かった来月4日〜5日に開催予定だったワールドカップ東京大会が中止に、更に暗雲漂う来月の全日本選手権もこれまた五輪代表選考にかかわる大会であったが来年へ延期ともなるとこれを一旦外す大会になるのか否か、来季はルール変更の可能性もありこれらと併せ非常に気になるところだ。

またオリンピック同様に4年に一度開かれるサッカー欧州選手権や南米選手権はそれぞれ1年の延期を決定、テニスの全仏オープンも9月に延期となり実に全米オープンの1週間後という驚きの日程が世間をザワつかせたが、オリンピックこそ他人事でなく来年や再来年は既に多くのスポーツの主要国際大会のスケジュールが犇めいており日程調整にどの程度の協力が得られるのだろうか。

ともあれ上記の通り多数のメジャー大会がいち早く延期を決め、当事者や関係者からも非難轟轟の声が上がるなか粛々と聖火リレーを敢行しようとしていた得も言われぬ違和感もこれで一先ず解消へ。目先は日程が何時になるのかが気になるところだが各々の複雑な事情と共に未曾有の試練は始まったばかりか。


アンワインド合戦

本日も日経平均は前日に過去最大となる上昇幅を演じたダウ工業株30種平均を受け、昨日に続いて1,000円超えの急騰を演じて1994年1月以来、26年2か月ぶりの大きさで歴代5位の上昇幅を記録する大幅続伸となった。これで今週に入ってからわずか3営業日で約3,000円も上げたという事になる。

つい先週の日経夕刊投信番付では上昇率上位8本にはズラリと所謂「ベア型」が並び、1位の楽天日本株3.8倍ベアは2週間で104%の上昇となった旨が載っていたが、斯様なアンワインドが発生すると昨日今日の全市場値下がり率ランキング10傑にはズラリとVIXやVI、インバース系ETFのメンツが出揃っていた。

ちなみに昨日ストップ安まで叩かれる憂き目に遭っていたのは先週末に年初来高値を更新したばかりのVIX短期先物指数であったが、本日の値下がりトップは同じくストップ安まで叩かれた日経平均VI先物指数ETNでこれまた先週末には年初来高値を更新していた。このVI、昨日は8日ぶりに急低下したものの本日は日経平均の大幅続伸にもかかわらず上昇に転じ40ポイント台後半を維持しているあたり市場の根強い警戒感は否めないか。


NTも乱高下

本日の日経平均は大規模経済対策を巡る共和党と民主党の話し合いが難航している事が失望を誘い週明けの米株式は大幅続落となっていたものの、FRBが国債購入無制限実施を発表、SOX等も大きく上昇した事で高寄与度銘柄の物色が旺盛で4年半ぶりの上げ幅で大幅続伸し18000円大台を回復した。

特筆すべきは上記の通りその高寄与度個別で、長年にわたるETF買いの影響で浮動玉も吸い上がっているのかどうか筆頭格のファーストリテイリングが5,600円超の暴騰を演じ200円以上の寄与に、またソフトバンクGも昨日のストップ高に続いて本日も大幅続伸し130円以上の寄与とこの2銘柄で本日の上げ幅の約四分の一を担った事になる。

そんなワケで先週には12.77まで低下したNT倍率は本日も拡大となっているが、NTといえば先週後半は続落する225を他所にTOPIXは不気味な続伸を演じ、昨日は寄り前のダウ先物がサーキットブレイカー発動交えた急落を演じていたにも拘らず、異様な回復力で急反発となるなどこの辺は日銀の過去最大となったETF購入との絡みを指摘する声も多い。更なる買い入れ額倍増政策で従来の常識で捉えられない動きが今後も増えて来るのは想像に難くないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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