サブスク彼是

さて鉄道各社の業績下方修正が相次いでいるが、先週末には小田急電鉄が再開発を巡る減損が響いて2021年3月期の連結最終損益が従来予想より赤字幅が拡大しそうだとの発表をしていた。ところでこの小田急電鉄といえば先月にアプリを利用した飲食・物販のサブスクチケットを発売している。

同サービスは税込み7,800円で30日間利用可能、小田急線ターミナル駅などに入る形44店舗が対象で飲食などは3時間間隔を空ければ何度でも利用可能で生花も期間中5回まで提供されるという。鉄道系では先にJR東が1日1本ペットボトル飲料を受け取れるサブスクを試みているが、初回は募集枠に対しその20倍近くの申し込みが殺到した経緯がある。

しかしサブスクといえば近年は上記のような食はもとより、ブランド品含めた服や時計、香水から美容サロンの類に最近ではラグジュアリーホテルに至るまで衣・食・住全てが網羅されている。外出も減るなか気に入れば継続、要らなくなれば解約と気軽に借りる感覚とモノを持たない暮らしが現代では本当に支持されるようになったとつくづくという感じだ。


PTSの課題

さて、先週末の日経紙金融経済面には「米CBOE、アジア進出」と題し、米取引所大手CBOE(シカゴ・オプション取引所)を運営するCBOEグローバル・マーケッツが手薄のアジア太平洋地域進出する狙いで、日本のPTS(私設取引システム)であるチャイエックス・ジャパンを米投資ファンドJCフラワーズから買い取り買収する旨が出ていた。

現在日本のPTSは上記のチャイエックス・ジャパンとジャパンネクスト証券だけであるが、日本の株式取引量で見るとPTSはこの2社を合計しても7〜8%程度と米国の約30%からしても見劣り感は否めない。近いところでも先に東証がシステム障害を起こし全銘柄の売買停止に追い込まれた際、渦中のJPXや同システムを請け負った富士通がPTS市場で売り物を浴びていたのを思い出すが如何せんリクイディティーの薄さが指摘されていた経緯がある。

PTSに絡んでは今月にSBIホールディングスと三井住友FGが共同で私設取引所運営会社を設立と先に報じられているが、上記のような不測の事態にこうした代替市場がバックアップになれる為には常日頃から幅広い投資家が参加しそれなりのマーケットシェアが活発に行われていないとこの辺は難しく、やはり取り扱い会員を増やし当欄でも何度か指摘したがマル信の解禁など投資家の裾野を広げリクイディティーを高めてゆくのが喫緊の課題か。


インバウンド下剋上

さて、先週は国土交通省から2021年1月1日時点の公示地価が発表されているが、全用途の全国平均は前年比で0.5%のマイナスと6年ぶりに下落に転じていた。特に都市部の商業地で下落が酷かったのが大阪の所謂ミナミの辺りで道頓堀や難波、心斎橋地区等で5位までは実に20%を超える下落率となっていた。

一方東京圏ではさすがに下落率20%とはいかないまでも、下落率トップであったクラブ街の銀座8丁目は12.8%と10%を超える下落率。これに台東区西浅草2、台東区浅草1、千代田区有楽町1、新宿区歌舞伎町2といずれも10%を超える下落率となっているが、上記のミナミ地区と共に観光地や飲食店などインバウンド需要が消滅してしまった部分が如実に表れた格好。

また同じ関東圏の住宅地もコロナ禍の影響で何所もマイナスとなるなかテレワークの普及で住環境のプライオリティ等から唯一上昇を見せたのが千葉、千葉といえば昨年もネット通販の好調を背景にした物流施設ニーズの高さを映し二桁の値上がりを見せた所もあったのを思い出すが、大手の本社移転や体験型施設等の引き合いもありコロナ禍でこの辺の勢力図も昨年からの塗り替りが継続されている。


成長市場

さて当欄でも何度か取り上げた植物肉だが、今月も大手などからのリリースが目立った。ザッと挙げてもおまめさんで有名なフジッコが「大豆ライス」を開発、いなり寿司やガパオなどに使用してネット通販で販売予定、またプリマハムも大豆を原料とした植物肉を今月から商品化し、ニップンも独自開発した「豆腐ミート」を使った冷凍ボロネーゼパスタを今月から発売している。

変り種ではマルサンアイも今月から豆乳を原料にしたスライスチーズのような「大豆スライス」の販売を開始しているが、これらに先駆け商品化されたモノも当然乍ら多く最近では大手スーパーなどでも本当によくこの手を目にするようになってきた。そのスーパー本体もイオンなど消費者の多様性に応える為に昨年からPBで植物肉市場への取り組みを拡大している。

この手の嗜好は以前でこそ宗教上の理由等が圧倒的であったものの、何れの商品も低糖質・高たんぱくという特性から近年では健康や美容の観点から需要の高まりが顕著だ。また近年のESGの考えが産業界でも広がりを見せ各社共に積極的な取り組みを見せるなか、世界的超低金利による運用難を背景にこうした環境負荷の低い代替食品需要から市場成長性に着目した機関投資家も食指を動かしてきており欧米の後追いが今後加速してくるかどうか注目である。


旬なTOB

本日も日経平均は大幅に4日続落と下げ止まらないが、そんななか逆行高の急騰で目立った個別といえば船井電機で比例配分ストップ高となり2,000万株近い買い成り行き買いを残して引けていた。背景にはコンピュータ・ビジネス書籍出版の秀和システムが早期の経営立て直しを目指す同社に対してTOBを実施、918円というTOB価格にサヤ寄せした格好だ。

ところでM&Aといえば2020年の日本で届け出のあったTOBの件数はM&A助言レフコによれば57件と19年比で9件の増加となっていたが、その買い付け金額は19年比で8割も増加し過去最高水準となった模様で、今年に入っても既に1〜2月で17年の年間金額を上回るなど活発している模様だ。

冒頭の船井電機の場合は昨日の取締役会でもこのTOBに賛同する事が決議されている通り敵対的ケースではないが、当欄でも昨年取り上げた前田建設工業による前田道路へのTOBや、今年に入ってからは直近の日本製鉄による東京製綱へのTOBなどいずれも敵対的TOBとなっており最近は従来禁忌とされてきた上場大手間でもこの手のケースが目立つようになった感がある。

昨日も持ち合い株の合理性がコーポレートガバナンスコードを背景に一段と問われる事になると書いたが、斯様な持ち合い解消など背景にM&Aに絡む活動は活発化しており上場企業のみならずアクティビスト本体が中堅どころを狙ってTOBを仕掛けている最中の案件もあるなど喧しく、噂ベースでも水面下で動いている話が複数入ってきており今後もこうした動きはますます顕著化する事は想像に難くない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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