投資対象としての受け皿

さて先週の日経紙夕刊でニューアートラボの「草間彌生展」の広告が載っているのを見たが、この草間氏の作品は言わずもがな何所のオークションでも人気で、ちょうど先週末に代官山で開催されたSBIアートオークションは2018年に360万円の値が付いた同氏を象徴する題材の「かぼちゃ(上海南瓜)」が今回約2倍の額の落札となった。

昨今の株高とも相俟って過剰流動性は投資対象の一つとしてアートの世界へもグイグイ侵食してきたが、この辺は当欄で2月に取り上げたニューオータニで開催された「春の逸品会」でも見られた通りで、外商さんが小走りに忙しく行き交う会場内の各ブースでは高額品が続々と成約され顧客が気分良さそうにシャンパングラスを傾けている光景が彼方此方で見られた。

この時も書いたがダイヤのルースから不動産、時計に至るまで現在のマーケットは投資対象としても裾野の広がりを見せ循環も効いており、冒頭のオークションも3ヵ月に1回程度開催されており登録制となっているがこの1年で新たに約2300名が登録したという。過去の金融緩和局面と比べてもコロナ禍でサービス消費に流れ難いぶん、高額品にこの手の富裕層のマネーが向い易い環境となっているだけにまだ対象範囲の伸び代はあるか。


メルカリ以来のユニコーン

先週木曜には新興市場で前人気の高かった銘柄がIPOとなったが、果たして何れも好スタートを切っている。先ず小粒の方からジャスダック上場のネオマーケティングは公開価格1,800円に対し初値は2.1倍の3,800円のロケットスタート、マザーズ組からはステラファーマが公開価格460円を54.7%上回る712円の初値形成となり、同じく同ポストでは注目のビジョナルの初値が公開価格5,000円を43%上回る7,150円とこちらも好スタートとなった。

この求人サービスのビズリーチを傘下に持つビジョナル、18年上場のあのメルカリ以来の規模のユニコーンで市場からの吸収金額が682億円ある巨大な案件であったものの公開株式の大半を海外販売している事から思われているほどの荷もたれ感は無く通過、何れにしろこれでIPO銘柄の初値が公開価格を上回る連続記録は20年12月から42社となって12年12月〜13年12月以来の数となった。

これより前にQUICK IPOインデックスも今月上旬で2か月半ぶりの高値を付けていたが、直近上場組で知名度の高いところでは紀文なども上場後もなお順調に値を上げておりこうした部分に一役買っている。ここまで値動きの良さに個人も物色意欲を刺激されてきたものの、GW前だけに冒頭銘柄など上場後の利確の動きは否めないところだが連休明け後に再度物色熱が戻って来るか否かこの辺にも注目しておきたい。


今度は電気

さて、最近では大手百貨店などからも各自治体の特選品を謳ったふるさと納税の案内がメールで頻繁に案内されるようになったが、返戻品ではこの1年間コロナ禍を映してマスクや非接触性グッズの人気が高まり、大手トラストバンク調べでは今年2月末までの衛生・感染対策品の寄付件数は前年同期比で約17倍に急増した模様だ。

地域色が豊かなマスクやユニークや非接触性グッズなど各々知恵を絞った跡が窺えるが、これに絡んでは先週末に一寸気になるニュースが舞い込んでいる。すなわち東北から九州まで全国九つの自治体で太陽光御発電や洋上風力発電、また地熱発電などにより出来た「電気」を返戻品としていたところ総務省から待ったが掛かったという件。

総務省の見解としては大手電力会社等が整備した電線を使った供給では他の地域で発電した電力も混じってしまう為返戻品としては相応しくないという事だが、他の自治体に無いものとして出していたアイデアで総務省の標的にされてしまった件ではこれまで資産性宝飾品で一括りにされてしまった真珠や他に家具の類も標的にされた事があったのを思い出す。

一頃過熱していた返戻品競争も総務省による例の3割規制で一定の歯止めがかかった経緯があったが、昨年のふるさと納税はコロナ禍を背景に外出自粛による巣ごもり消費等が影響してか寄付額が過去最高額を更新する自治体が相次いでいるという。飲食や百貨店向け販売の落ち込み分の格好の受け皿となっている形だが、総務省の杓子定規な判断が斯様な好循環に冷や水にならぬよう願うばかりか。


非公開化の是非

さて突如として東芝に対し2兆円超の買収提案をして世間をザワつかせた英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズだが、その直後には東芝の社長辞任にまで発展した挙げ句に昨日は果たしてというか東芝側がこのCVCキャピタル・パートナーズから東芝買収に関する検討を中断するとの書面を受け取るに至りこの案件は事実上の撤回となった。

このCVCキャピタル、プライベートエクイティファンドだけあって非公開化を前提にしていたワケだが、1月に東証二部から約3年半ぶりとなる東証一部へ悲願の復帰を果たしていた東芝が、そこから僅か数カ月でアクティビストと対立した挙げ句の上場廃止となりましたという事になったとしたらこれは東証にとっても立場を考えるに内心穏やかでなかったのは想像に難くないか。

複数のアクティビストからの耳が痛い要求の回避目的を狙っての非公開化の選択であれば現在進めている建設的な対話を通じての企業価値の向上を目指す協調を否定する事になるワケで、斯様な事から今回の案件はコーポレートガバナンス改革の有効性に疑義を挟むものであったが、今後日本市場の成熟が叶うか否か東証のプライム市場構想含め改めていろいろと考えさせられるこの2週間でもあった。


Turning Point

本日の日経平均は国内で新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない事などを嫌気し急反落となったが、TOPIXの下落率が1%を超えていたにもかかわらず期待された日銀によるETF買いは見送られる事となった。ちなみにこのTOPIXが下落率1%を超えても見送られたのは2016年に年間約6兆円にペース-に買い入れ方針を拡大して初めての事とか。

さて日銀のETF買いといえば先週の日経紙経済教室には「ETF購入 副作用是正遠く」と題し、先の日銀金融政策決定会合における点検を踏まえ中央大学教授によるETF買い入れ政策の在り方について書かれていた。先の総裁の会見も自縄自縛とも見えなくもないが、雑な言い方をすればさながら吊り上げたものの降りられなくなりそろそろ解体屋に依頼しようかといった仕手筋?にも似ていると言えなくもない。

同頁では本質的な問題解決に繋がる見直しは副作用軽減への正常化策を考えることと出口戦略の議論を開始する事との一文があったが、この辺の出口戦略への議論に関しては当欄も上記の解体屋よろしく幾つかのケースを何度か書いてきており、浮動玉の吸い上げの結果コーポレートガバナンスの空洞化を招きかねない現状下はやはり一つの節目に差し掛かっているといえようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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