3ページ目

意図の是非

経常利益の下方修正などが相次ぎ右肩下がりからなかなか脱却できない電力ポストだが、そんな中で北海道電力は資金使途を環境関連事業に特化した債券を12月に発行すると先に発表している。この主幹事には大手どころが名を連ねていたが、先週末には起債業務に影響を与えないようにしたいとして主幹事からSMBC日興証券を外した旨の発表がなされている。

この背景にあると思われるのがSMBC日興証券の社員らが特定銘柄の株価を維持する目的で不正な株取引を繰り返した疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が相場操縦の金商法違反容疑の関係先として同社を強制捜査した件で、先週の祝日の日経紙にも「証券社員、相場操縦疑い」と題し一面を飾っていた。

今回問題となっているのは所謂ブロックオファーと呼ばれるモノで、大量の株を保有している向きが時間外で一度に売却出来る取引で証券会社は買い手を探し取引を成立させるが、通常その価格は取引を持ち掛けた翌日の終値を基準にするものの、その価格が下がってしまえば売買不成立となるケースもあるだけにこの構図を成立させるために株の買い支えが行われた疑いというもの。

しかし大手証券の社員が相場操縦の金商法違反疑いで強制調査を受けた例は記憶に無く行為者の問題か組織ぐるみかも問題となって来るだろうが、何れにせよ不正取引を審査する側で門番的役割を担う証券会社の問題だけに市場の信頼を賭け一刻も早い実態解明が急がれるところ。


株主の選択

さて、関西スーパーマーケットに対して食品スーパーのオーケーが買収提案をしていた問題だが、先月末に開催された臨時株主総会では6時間を超える長丁場の末に経営統合案が僅差で可決・承認されオーケー側はそのTOB提案を取り下げる姿勢を見せていたものの、本日になってオーケー側は総会の投票集計に疑義があると判断し明日にも差し止め請求する方針を固めたとの報が舞い込んでいる。

本日でこそ6日ぶりに小反発となったものの、先週はTOB取り下げの報を受け関西スーパーマーケットの株価は週明けから株価上昇期待が無くなった事への嫌気から終日ストップ安に張り付き比例配分で辛うじて商いが成立、以降も連日の続落の憂き目に遭い週末にはついに両者が経営統合と最初に発表した前日の終値水準をも下回った。

以前当欄で東芝機械を例に出した際には、TOB価格を軸にして防衛側が描く将来の株価像との比較機会が阻害されてしまうのは否めないところで同社は当時ファンド側が提示したTOB価格から800円以上安い値位置に甘んじていると書いたが、この関西スーパーマーケットの株価も見事?な往って来いを描きTOB表明で付けた9月8日の2200円台から1000円安の水準にまで売られている。

ここ注目されたTOB案件のうち取り下げの報と共に株価も往って来いで結論が出たと思われたこの一件、このまま司法に委ねられる事になると先行きは混沌としてきた。SBIによるTOBに対する新生銀行の買収防衛策についても直近で米議決権行使助言会社のグラスルイスがこれに賛成するよう推奨している事が明らかになり、注目の臨時株主総会という事になるが何れも引き続き目の離せない展開になってきた。


家族の一員

さて、先週は家電量販店などでもよく見かける世界最大手の清掃機器メーカー、ケルヒャーから初めての家庭用スチームモップの発売が開始されている。コロナ禍の外出制限等でペットに癒しを求めて飼う向きが増えている事などから家庭内で洗剤や化学製品の使用をなるべく避けた除菌への意識の高まりなどを捉えたモノで、高温スチームで床の汚れを落とし除菌する事が可能という。

ペットを飼い始める比率は経済活動正常化と共に鈍化するとみられるものの、ペットの絶対数が既に増加している事で大手の参入も見られ、NECではLINEを介しペットと会話出来るサービス「waneco talk」をマクアケで販売中。ペットの首輪に活動データを記録するセンサーが付いていてそれをAIで解析しメッセージに変換、蓄積される活動データを動物病院と共有し健康管理も出来るようになっている。

我々人間の方は先行して遺伝子検査から腸内細菌、血糖値等々の在宅健康モニタリングサービスが充実して来てきるが、上記のwaneco talk以外でも海外ではペットフードの米ノムノムナウがペットの唾液や排泄物のサンプルから体内細菌を調べ食事についてアドバイスするサービスを提供し、お隣韓国のフィットペットも尿のサンプルからペットの健康状態をチェック出来る生検キットで特許申請している。

このコロナ禍でペットを新規で飼い始められた数として、20年は前年比で犬が14%増、猫は16%の増加を見せ過去5年間で伸び率は最も高いという。ペット消費はその命が続く限り無くなる事はない究極のサブスク?とも言え、ペットが高齢になり愛着も湧く為にその消費金額も自ずと増える特殊性から関連市場の拡大も想像に難くないが、やはり大切なのはその最後まで飼育放棄無く終生飼育が如何に徹底されるかどうかというところだろうか。


悲喜交交

さて前号の末尾でも注目したいとした第49回衆院選は昨日投開票が行われ、自民党は公示前の276議席から減らしたものの追加公認含め261議席を獲得し単独で絶対安定多数を確保、一先ず国民は現状維持を選択した格好になった。一方で立憲民主党と共産党は野党共闘で闘い野党第一党の地位は維持したものの、共に公示前の議席を下回り不発に終る結果となった。

ところで今回目立ったのは小選挙区での大物候補の敗北か。先ず自民からは甘利幹事長の敗北から比例代表でヤレヤレの復活も総裁に幹事長辞任の意向を伝えるなどのドタバタ劇はじめ、同じ現職組からは若宮万博相、また前デジタル相の平井氏、元自治相の野田氏、レジ袋廃止論で再度の注目を浴びたばかりの元五輪相の桜田氏も敗北、国土交通大臣を務めた元幹事長の石原氏に至っては比例の復活さえ叶わなかった。

現職の幹事長や閣僚が次々敗れるのは前代未聞だが、野党も辻本氏が維新の会に敗北し比例でも復活は叶わず、また重鎮格の小沢氏も敗北と衝撃だったが、立憲民主は選挙直前にもともと非課税制度を謳っているNISAに対してまで課税をにおわすなどトンチンカンな失言をしていた事も相俟って議席が減ったのは当然な流れだったか。
   
ともあれこれを受けて本日の日経平均は政局不透明感の後退から個人投資家心理の改善に寄与、諸々の脅威もあったものの当面の政権運営に関しては強い信任を得た格好で700円を超える大幅続伸となり、個別の方も重点政策とした子育て世帯支援関連株が軒並み大幅高となっていたが、今回の選挙を切っ掛けに各所で再編の動きがあるや否や今後出て来る政策に対し市場が好意的な反応を示すかどうかとも併せ注目したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2021

11

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30