短信一本化
さて、今週は金融庁が金融審議会の作業部会を開き上場企業が開示する2種類の決算書類を一本化する事を了承している。この見直しは岸田首相が就任時に目玉政策の一つとして打ち出したモノで、金融商品取引法で上場企業に開示を義務付けている四半期報告書を廃止し内容を充実したうえで証券取引所のルールに基づく決算短信に一本化する方針だ。
この四半期開示の是非は2018年にも金融庁のWGで議論が為されたが、市場競争力に影響を及ぼしかねないとの懸念から見送りになった経緯がある。それでも当初は四半期開示の廃止を含め政府内で検討していた模様で、こうした背景には企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念があり企業が長期的な視点に立った経営を行う事が重要との認識があったようだ。
ちなみに欧州でもこの法的義務が廃止になっているところは少なくないが、英などは14年に廃止したもののその後に実際に開示を止めた企業は全体の9%しかなく9割以上が任意で開示を継続している。やはり廃止すれば投資家からは情報開示の姿勢が後退したと受け止められ株価はじめあらゆるところへの悪影響が懸念されるのだろう。
ともあれ上記の長期的視点云々も重要だが仮に廃止のパターンでも単純にこれで長期視点に繋がる訳では無いうえ、日本の大手企業のように社長の任期が短いきらいのあるところを一括りで見直しを図るのは如何なものかという感もある。金融審の作業部会では詳細を詰める為に今夏以降も議論を継続する模様だが、政府としてはガバナンスを通じ企業経営を変革させる流れを尊重すべく制度設計に工夫が求められるところだ。