冷凍変遷

さて、今週アタマの日経紙ビジネス面では「悩む外食 冷凍食品に活路」と題し、外食各社が店内飲食や宅配に比べて人件費などのコストを抑えやすい冷凍食品の販売に活路を見出している旨の記事があった。この冷食といえば確かに近年はロイヤルHDやリンガーハット、吉野家等々上場外食各社の取組が目立っていたが、最近では以前にも書いたように中華街の老舗まで注力してきている。

この背景にはコロナ禍で外食の機会が減った一方で、中食需要から冷凍食品マーケットの急拡大がある。去年の冷凍食品の出荷額はコロナ禍前の2019年の約3164億円から、約3919億円に750億円以上も増加し過去最高を更新しているなど数字に顕著に表れており、こうした冷食傾斜に大手百貨店やスーパーなども商機を見出している。

先月はイオンが新業態として、俺のフレンチから日本酒までユニークな品揃えで約1500品目を取り扱う日本最大級の冷凍食品専門店(@FROZEN)をオープンしたほか、今月にオーンしたライフ豊洲店も3Fの冷食コーナーで圧巻の1110種類を取り扱う。また百貨店も松屋銀座が先月に銀座アスターや銀座みかわや等の名店の味を家で楽しめるハイスペックな冷凍食品売り場(GINZA FROZEN GOURMET)コーナーをオープンしている。

しかしこのマーケット拡大も冷凍技術の進歩があってこそで、最近は一般的な冷凍庫の数十倍の速さで凍らせるという特殊技術でこれまで実現が難しかったモノも次々と冷凍化が可能になっているという。そういった事でバリエーションの方も拡大し解凍したらお店にあるメニューが食べられる時代になって来たという事だが、消費者の期待も従来の手軽さからより本格的な美味しさにその視点が移行して来るのは想像に難くなく今後もこの手の冷凍食品の伸びしろは大きいか。


基準地価と風景

本日は所用で銀座界隈に出掛けたが、この辺を歩くに国土交通省が先週に7月時点の基準地価を発表していたのを思い出した。全用途の全国平均は0.3%の上昇となり3年ぶりに上昇に転じていたが、とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済活動が回復するなか住宅地は1991年以来、31年ぶりの上昇となっている。
   
行動制限が無くなったことで繁華街は人出が増加し観光地も客足が戻りつつある事から、東京・浅草などインバウンド絡みのところなどその期待感が反映されて上昇した地点も。また17年連続で全国の最高価格となった東京・銀座2丁目の明治屋銀座ビルはインバウンドストップで3.7%下がった前年に続いて0.5%下落した。

しかし銀座といえば先にも書いたようにコロナ禍を経て新陳代謝もより一層著しい感がある。メルサやアマンドがそれぞれ約50年の歴史に幕を下ろす一方で、ダイソーなどのプチプラ大手勢が挙ってこのエリアに旗艦店を出しワークマンも初進出を果たしている。この円安下の政府による水際対策緩和でまたこの優勝劣敗の街も風景が変わるかもしれない。


総理のトップセールス

賛否両論あるなか今日の国葬を敢行した岸田総理だが、先の国連総会出席の際に米投資家を前に講演を行い自らの経済政策「新しい資本主義」を推進すると強調、「日本経済は力強く成長を続ける。確信を持って投資してほしい。」と日本への投資を呼びかけている。日本の優先課題として、年功序列型の賃金制度見直しや女性活躍の推進等を訴え、NISAの恒久化や新型コロナの水際対策の緩和も表明した。

昨日は円安の流れを受け入れその円安メリットを生かし日本に投資を呼び込む政策が喫緊の課題と書いたが、水際対策の緩和一つとってもこれは既に総理が5月から宣言している事で、聞いた感じでは小出し感も強く正直あまり新鮮味を感じなかったが、そこそこ長いプレゼンを終始英語で行った部分は一部の投資家には多少刺さったのだろうか。

またNISAの恒久化に関しても具体的に踏み込んでいるのはコレだけでその他には?という感じがしないでもないが、恒久化はこれまで何度も見送られて来た経緯がありそれこそ3度目の正直どころではないが今回こそ期待を持ちたいもの。多くの投資家が防衛的な構えなのが少なくないのも賃金上昇期待が弱く、中長期目線に乏しい部分もあるだけにこの辺に関する施策も併せて求められようか。


伝家の宝刀効果は

注目の金融政策ウィークが終ったが、プラス金利入りが注目されていたスイス中銀は大方の予想通り6月に続き0.75%の利上げでマイナス金利政策を解除、このプラス金利入りで日本のみが世界でも際立つマイナス金利継続国となった。また英国は0.5%の利上げを発表しこれで利上げは7回連続、14年振りの水準となった。

最大の注目FOMCでは一部に1%予想もあったものの下馬評通りに3会合連続で0.75%の利上げを発表していたが、特に注目されたのは政策金利の見通しを示すドットチャートでピークの2023年が4.625%となるなどいずれも6月から上方修正されている。経済見通しの方は下方修正されており、このドットチャートと併せて見るに景気を多少犠牲にしてでもインフレ抑制の為に利上げを継続して行くという強い姿勢が窺える。

さて日銀だが、こちらも下馬評通り金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持する方針を決めた。今更の感が強いとはいえ金融政策の違いが改めて鮮明となり円相場は1ドル145円台後半まで円安が進んだが、政府・日銀は22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。

遂に伝家の宝刀という感じだが、当欄で以前に俯瞰して見ると日銀と政府とで各々の政策が整合性の取れないものとなっていると書いた通り、日銀が大規模緩和の現状維持を決めたその日に円買い介入を敢行する違和感は否めず。その効果も一時的に5円ほど円高に振れたものの本日は一時144円台示現と往って来いまで指呼の間、円安の背景にあるものが不変な限り方向性は変らないワケでここは流れを受け入れ円安メリットを生かし日本に投資を呼び込む政策が喫緊の課題だろうか。


祝日取引開始

さて、先の日曜日の日経紙総合面には「株安時の損失リスクを軽減」と題し、海外で大きく株価が動いた際などに損失リスクを軽減する機会を増やす事などを目的として、JPX(日本取引所グループ)が明後日の秋分の日より株価指数先物取引などデリバティブの祝日取引を始める旨が出ていた。
   
今週はまさにシルバーウィークだが、欧米に比べて取引所の祝日数がいつの間にか多くなった日本ではイベントや非常事態等で相場が荒れても対処が困難で、オプション取引では長期の連休などタイムディケイの影響も出る。そういった意味では売買できる機会が自ずと増えるのは機会損失の防止等含めメリットは大きい。

個人投資家の属性の違いから大手証勢はサービス導入を見送る模様だが、大手ネット系中心に20社強が参加を表明している。大晦日と年初2日は当分実施しない模様というが原則土曜・日曜日を除く全ての現休業日が対象日になる予定で、祝日営業日の日中立会終了後は値洗いによる追証判定は実施しない。デリバティブの口座を持っていない向きは新たにこの口座開設の必要が出て来るが、逡巡していた向きも勉強する良い機会となるか。

前にも書いたが、国内では実に70年ぶりに取引時間の延長が実施される見込みとなっているが、今回の祝日取引の開始と合せ日本の個人投資家の置かれた環境は更に改善してゆく事になる。こうなると其の先で現物との損益通算を求める声が益々高まりそうだが、そういった促進の意味でも今回の一歩は前進といえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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