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異形のポイズンピル

昨日は親子上場解消を巡ってその対象銘柄がTOB価格にサヤ寄せする動きで盛り上がっている旨を書いたが、TOBといえばもう一つ昨年から「牧野フライス」に対し“同意なき買収”で両者が火花を散らしてきたニデックが、牧野フライス側による買収対抗策が壁となり高裁への即時抗告やTOB期間延長もしないまま早々に先日この同意なきTOBを撤回している。

そういったことで先週は株価の方も明暗がハッキリと分かれ、NTTデータや三菱食品がストップ高まじえて急騰するのとは対照的に日を同じくして牧野フライスの方は買収プレミアムが一気に剥げた形となり前日比で2000円以上も暴落する憂き目に遭った。終わってみればこの“同意なき買収”は牧野フライスのホルダーに恰好の売場を提供しただけという顛末となり、同意なき買収の成功体験を持つニデックにしてみれば想定外の結果だったに違いない。

ところでこの買収劇、投資ファンド含むホワイトナイトが出現するとも一時報じられていたが、今後は牧野フライス側の身の振り方?にも関心が向かうこととなるか。今回の顛末を踏まえてファンド側の行動に変化が出てくるのかどうかその辺も気になるが、先の暴落でPBRは再度の1倍割れ、仮に単独路線を取ることになるにしろより資本市場との向き合い方が重要になってきている昨今、経営陣も株主に対して緊張感を持った企業価値向上の責務が問われる。


解消加速

今月に入ってすぐ当欄では親子上場解消に絡んで「豊田織機」の非公開化報道、並びに株価動向に触れていたが、先週の株式市場で目立っていたのは「NTTデータグループ」株と「三菱食品」株のストップ高含めた急騰劇か。共に親会社による両社の完全子会社化の報道を受けてものだったが、今月は上記の豊田織機に続き矢継ぎ早に親子上場解消を伴った再編劇が具現化しこれら加速してきた感がある。

正式社名の「日本電信電話」から民営化以来40年ぶりに「NTT」へと社名を変更した親会社のNTTだが、同社は既にNTTドコモを国内企業として最大規模といわれたTOBで完全子会社化しており、今回のNTTデータの完全子会社化は一連のNTT再編の流れの最終章ともいえるか。また三菱商事も業界では三井物産が先に食品卸など5社を統合しているが、それに続く再編劇となる。

二番煎なのか豊田織機の時にも反応した銘柄群でも、住友電気工業の上場子会社である「住友電設」など好決算なども手伝いNTTドコモや三菱食品と時を同じくして先週は急騰を演じ上場来高値を更新してきている。今年は解消絡みでは1月の「富士通ゼネラル」に2月の「イオンモール」、先月上場廃止となった「山陽特殊製鋼」等の例もあるだけに、上記以外の他の思惑含みの銘柄等も水面下で次の宝探しの動きが活発化してきており今後も“解消モノ”はテーマとして目の離せないものとなってくるか。


歪と伸びしろ

今週アタマの日経紙総合・経済面では「ふるさと納税額最高」と題し、2024年度のふるさと納税の寄付額見込み額が23年度から1割増加の7690億円と19年度の2倍強に膨らみ過去最高を更新する見通しとの記事があった。このふるさと納税といえば今や利用者が1000万人を超え、住民税を払っている向きの6人に1人が利用し今やその市場は1兆円を超える巨大マーケットになっている。

そうしたことも背景に昨年はアマゾンなどガリバー級が参入し、大手コンビニでも昨年にローソンが先陣を切って業界としては初めて参入したが、今年はファミリーマートがそれに続いている。これの場合、他の仲介サイトとの大きな違いは寄付金が1000円等少額から可能で、返礼品コスト3割といわれるなかでも自社のPB提供等で更にコストを抑えられるメリットがあり、ファミペイ決済含めほぼワンストップで完結出来る構図というところか。

上記のアマゾンや楽天も自身で返礼品事業はやっておらずまさにコンビニならではの強味が生かせるわけだが、あとは他との競争力という部分がどうなるかだ。さて、返礼品といえばそうした一方で今年もまた返礼品(シャインマスカット)の産地偽装が発覚している。これまでも黒毛和牛や鶏肉に雲丹など彼方此方の自治体で偽装が発覚しているが、相次ぐ産地偽装は拡大化の裏でふるさと納税の抱える歪が表出したものか。

またふるさと納税を巡っては今年の秋から仲介サイトの利用者へのポイント付与が禁止される予定だが、これが及ぼす影響は自治体含め如何ほどのものだろうか?市場の増大化が続くなかで総務省の規制にも拍車がかかってきているが、差別化の芽が摘まれゆく中で各社共に今後他とどのように差別化を図ってゆくのか?今後の業界勢力図を見てゆく上でその辺には引き続き注目しておこう。


高粘着性の圧力

GWも終わり今日からまた通常モードだが、今月もまた値上げの波が続く。恒例の帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける飲食料品の値上げ動向だが、今月は478品目となり単月の値上げ品目数では1月以降5か月連続で前年同月を上回り、この5ヵ月連続前年超えは記録的な値上げラッシュとなった2023年の6月以来、約2年ぶりの事となる。

分野別では調味料の192品目がトップ。足元では「カレーライス指数」が11か月連続で高値更新してきているが、ハウス食品はカレールウやレトルト製品を今月に8~15%値上げする。これまで同指数の上昇要因は具材やライスに因るもので、ルーの変動は無かったが今後はこの辺も上昇要因となってくるか。次いで加工食品の137品目が続き、コーヒー豆の高騰からUCCもコーヒー飲料など41品目を15~30%値上げするが、今年は早くもこれで2度目である。

2025年における飲食料品値上げの勢いは前年に比べ強い状態が続いているが、値上げ要因をここ数年で比較して見るに物流費と人件費の伸びがやはり目立つところで、これらが上がった分が価格に転嫁されるという動きが今年は特に強まっている。インフレに合せて賃金が上昇している向きはまだよいが、そうでない向きは今後もなかなか厳しい状況を強いられるわけでその辺を睨み価格競争力を維持すべく大手小売り各社の戦略も注目される。


東証改革のカタリスト

さて、今週の株式市場でひと際目立っていたのは週明けから値を飛ばしていた豊田織機か。週明けのストップ高を交え連日急騰を演じたが、周知のように同社は非公開化の検討に入ったとの報道がありプレミアムを乗せたそのTOB価格へサヤ寄せした格好か。同社はトヨタグループの本家ともいえるが、一昨年だったかアイシンが政策保有株ゼロを目指す旨を打ち出したあたりから潮流の変化が見られそれに続く動きが顕著になってきた。

トヨタグループはその複雑な株式持ち合いと親子関係で知られてきたが、週明けは同グループでは愛知製鋼も急反発し年初来高値を更新、また親子上場解消思惑が他銘柄にも波及し住友電気工業の上場子会社の住友電設株が続急伸し年初来高値を更新、他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも急反発し一気に年初来高値を更新してきているなど思惑が絡むところが反応し軒並み値を飛ばしている。

何といってもTOBは豊田織機にみられる通りそのプレミアムを乗せた旨味が大きいだけに、その辺に着目したトレードや金融商品等も近年は見られるようになってきた。2023年には「政策保有解消推進ETF」なるアクティブETFが登場し、2024年にはファイブスター投信投資顧問も親子上場の解消でTOBされる可能性のあるものを狙った「資本効率向上ファンド・TOBハンター」の運用を2月からスタートさせている。

そういった背景の一つにはやはり東証の存在が大きく、親子上場の在り方への関心が高まる一方で現状の取り組みや開示内容を巡って投資家目線とのギャップが生じているとの指摘があるのを鑑み「親子上場等に関する投資家の目線」を今年2月に取りまとめている。斯様に年々その要請も踏み込んだものになってきているが、それら一連の改革は日本企業の特異な商習慣?というかその構造を近年大きく揺るがしてきているのは間違いなく、今後もカタリストとして投資家の関心を惹きつけようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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