資本効率重視の流れ

本日の日経平均は昨日の急反発から往って来いの急反落となっていたが、そんな中でも逆行高を演じていたのが川崎汽船など。この辺は1000億円を上限にした自社株買いの発表が背景にあると思われるが、同社以外でも今月は月替り早々に三井物産が2000億円を上限とする自社株買いを発表し昨日の株価は上場来高値を更新してきていたが、依然として資本効率重視の姿勢が目立つ。

ちなみに昨年の上場企業の自社株買いは初めて10兆円を超えて2年連続で過去最高となっている。手元資金が昨年末時点で100兆円超ということで約1割に相当する額だが、長らくディスインフレ下で増加の一途を辿ったこうした資金をインフレ環境下でどう使うかが問われ、有効活用手段の一つとして手っ取り早く?ROE改善に繋がり易い自社株買いが注目され株数ベースの取得規模も大きくなっているのが目立つ。

確かに東証の要請対応で意識する指標の中でもPBR等は自社努力だけではどうにもできない部分があるが、ROEは自助努力で改善出来る部分なだけに今年も高い利益率が確保されれば自社株買いの勢いは衰えを見せないと推測される。例年決算発表のタイミングで株主還元策の発表は今月に集中する傾向があるが、そういった意味でも半ばにかけて本格化する決算発表で自社株買いがどの程度出てくるのか注目されるところ。


介入乱舞

さてGWも終わったが、そんな連休中でも先週の為替を巡る動きはなかなかボラタイルなものであった。先ず昭和の日は対ドルでの円相場が1時1ドル160円台まで急落していたが、あと午後に入って突如として154円台まで急騰、次に月替りの1日NY市場でFOMC後に再度対ドルで円相場が急騰、1時間程度で4円超の円急騰を演じた。

財務省側は介入の有無についてはコメントせずを貫いてはいるが、月末公表の当座預金残高での財政等要因による減少額が事前予想をはるかに超える額で約5兆円規模の円買い介入が実施されたとの観測が強い。いずれにせよこの一連の介入により先週の週間値幅は8円強にのぼるなどここ数年で最も大きな動きで投機筋等との激しい攻防の跡がうかがえた。

22年の大規模介入から今回の介入水準まで次第に防衛ラインが切り下がってきているがさてこの160円水準、某生保系シンクタンクの試算では160円でも実質賃金は下期にプラスになる見込みというが、別の外資系証券の試算では春闘の賃上げ率3.69%を打ち消してしまう水準は24年平均ベースで157円との試算もあり、これ以上の円安は物価上昇で企業努力が帳消しになってしまうとの見方もある。

現状日米の金利差は4.5%前後で依然として開きがあるために円売り素地は十分ともいえ、現在のドル高主導の円安トレンドの転換には米国のインフレ抑制と利下げを待つほかないのは否めないところ。22年の大規模介入では約1年の時間稼ぎが出来たがはたして今回は如何に?いずれにせよ今週はミシガン大学消費者信頼感指数、来週には米PPIやCPIなど物価指標の公表があり、これに合わせまたぞろ円が振れる場面も予測されるだけにしばらくは介入に神経を尖らせる場面が続きそうだ。


鋭角化する上げ幅

さて5月入り、恒例の今月の値上げだが帝国データバンクによれば今月の飲食料値上げは417品目と、前年同月比で420品目、50.2%減と5か月連続で前年同月を下回ることとなった。前月比では約7分のほどに減少したものの、再び着目すべきは値上げの幅で平均31%と2022年以降、初めて30%台となっている。

個別で群を抜いて改定幅が大きいのはやはりオリーブオイル、日清オイリオGやJオイルミルズなど大手が家庭用を最大66%の引き上げ、業務用では80%の上昇幅のモノも。当欄で「アメリカンブレックファーストの憂鬱」と題しオリーブオイルの価格が前年比で2倍近くに急騰し史上最高値を付けた旨が日経夕刊の一面を飾っていたのを書いたのがちょうど1年前であったが、状況の深刻化は1年経てなお改善されるどころか酷くなっている。

とにかく生産、供給に消費の需給バランスが最悪の状態で、オリーブオイルが栽培されるのは地中海性気候の土地に限られているものの、この主要生産地の熱波や干ばつで不作が続き世界的な在庫不足が継続、輸出制限の国も出てきている一方で世界的な健康志向の高まりで消費の方は増加の一途を辿っているから、まさに無いもの強請りの争奪戦になっている。

似たような構図ではカカオ豆の急騰でチョコレート価格の動向も今後は懸念されるところだがそれに加えてこの円安、何処まで小手先介入で耐えられるか分からぬがこの水準の円安が続いた場合は数か月のタイムラグを経て秋口頃には輸入食品やガソリンまでさまざまなモノの価格に跳ね返ってくる可能性が高く、昨年後半にかけて沈静化していた「原材料高」値上げが再燃する可能性に身構える動きも出て来そうだ。


GWとオーバーツーリズム

ゴールデンウィーク真っただ中だが、160円を舐めるサンドバッグ状態のこの円安下で今年は海外旅行を諦めた向きも多かったのではないか?そうした向きの国内回帰に折からのインバウンドのダブルパンチで世界遺産含め有名な観光地もいつにも増して混雑を極めていると思うが、そうなるといつも問題に挙げられるのがオーバーツーリズムでこの連休中にもTVのニュースで多くの局がこの問題を取り上げているのを見掛けた。

近年はSNSの普及によりあっという間に世界規模で情報が拡散され一点集中でそのスポットに人が集まる現象が頻発しているが、こうした場所での撮影等に伴う危険な人出やゴミ捨て問題もあるが、なかでも問題視されているのがやはり交通系インフラで、京都駅前では数百人のバス待ち行列が出来たり、箱根でもバス待ちが一時間に及んだり、鎌倉でも江ノ電になかなか乗車出来ない等がニュースで報じられていた。

こうした問題に対応し撮影スポットに黒幕を設置するなどの奇策?や新型ゴミ箱の設置、レンタサイクルや観光特急バスなどの設定を講じているようだが、京都ではGW前にライドシェアの運行が開始されている。このライドシェア、東京でも先駆けてインバウンド増加などによるタクシー不足という問題に対して期待が高まっているが、首都圏と観光地ではまた事情も違ってくるだろうか。

上記の通り先月に東京など4地域で解禁となったライドシェアだが、来月からは福岡交通圏でも開始される見通しだ。この先全国規模で交通難民対策としてライドシェアが普及し、諸々の課題などが解決出来たとするとその経済効果は約5000億円ともいわれているだけにその期待度も大きいが、制度設計と併せ地域や利用者のニーズに何処まで答える事が出来るのかその辺が今後はキーとなって来ようか。


投資以前のリテラシー

今週アタマの日経紙社説では「SNSを使った投資詐欺への対策を急げ」と題し、最近問題になっているSNSなどのインターネットサービスを悪用した投資詐欺が昨年でも総額で約277億円にのぼるなどその被害が広がっている旨が書いてあった。この辺に絡んでは直近でもSNSの詐欺広告で画像を悪用されている著名実業家らが、自民党本部で開かれた詐欺広告に関する会合に出席し問題提議している。

確かに今日もTVで著名経済アナリストを語った輩により約7億円という巨額の投資詐欺に遭った女性の話が報じられていたが、先週も兵庫県でこの手の被害者続出がニュースになっていた。15日には西宮市の男性が、16日には神戸市の女性2名が、18日にも同じ神戸市の男性が、また同じ日には神崎郡の男性が、それぞれ誰もが知る著名実業家、著名経済アナリスト、著名ジャーナリストを語る人物により約200~4500万円の詐欺被害が報じられている。まさにオレオレ詐欺が流行った時並みの被害ラッシュだが、失礼ながら毎度こうした報道を見るに何故にこんな稚拙なモノに引っかかってしまうのか理解に苦しむ。

そもそもこの手の著名人がマンツーマンで投資指南などやるはずもなく、他にも断定的判断の提供しかり、仮に入り口に入ってしまってもいざ振り込みの段階で個人口座とか有り得ない話でいくらでも我に返り引き返せるというものだが。しかし以前は無かったインスタにF・Bからマッチングアプリまでフル活用されている点に時代を感じる。これにより幅広い年齢層が狙え、はたしてインスタやF・Bは40~60代、マッチングアプリは20~30代がホイホイ餌食になっている。

そういえばちょうど先週には警視庁生活経済課がキャノンマーケティング本社で新入社員ら向けに投資詐欺被害対策の講座を開いていたが、幅広くこの手の啓蒙が急務ではないかのような気もする。おりしも今月は国民の金融リテラシーを高める活動を行う組織として「金融経済教育推進機構」が発足しているが、貯蓄から投資への流れに水を差したくないならHOW TOよりもっと以前の段階こそ重要ではないかと思う。ゴールデンウィーク中に投資の検討などする向きも居ると思うが,くれぐれもこの手の投資詐欺には注意されたし。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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