20ページ目   商品先物

金連動

本日の日経紙商品面には「金の価格下落に備え」と題して、ニューヨーク市場で金相場が1,300ドルに下がると見込んで取引する10月物のプットオプションの持ち高が、前週末時点で7,886枚と1週間前より1,000枚近く増えるなど短期的な価格下落に備える動きが強まってきている旨が載っていた。

この背景には米の早期利上げ観測が再燃し金利を生まない資産である金の先安観が意識されているが、金を産出する鉱山会社のヘッジ目的の買いもあるという。先月あたりはこの金と円の連動性が強まっていたとの指摘もあったが、最近ではこの上値の重さに同じ貴金属のプラチナも連動しているとの指摘がある。

プラチナといえば工業需要が多いイメージだが先月「都市鉱山メダル」のタイトルで書いたように近年では未回収スクラップからの抽出技術も日進月歩で、金と共になかなか品薄感を煽る局面も見掛けなくなった。金に対して下鞘定着が久しいが恒例のストも一昨日がピークの感もあり上記と併せ暫くは下鞘恒常化が継続されるか。


都市鉱山メダル

昨日に続いてメダル関連だが、昨日の日経紙一面・春秋には次の東京オリンピックメダルの材料である金や銀を都市鉱山に求める構想が動き出した旨が載っていた。この辺に関してはWBSでも「東京五輪成功へ、日本の技術活用始まる」と題し、茨城の物質・材料研究機構や北九州市の(株)アステック入江がリサイクル原料で作った試作品の五輪金メダルが放映されていた。

リオ五輪のメダルも30%ほどがリサイクルで作られていたというが、東京ではこれを金・銀・銅共に100%リサイクルにしたいという。前回のロンドン大会のメダルで使われた金は計9.6キロで、他に銀が1,210キロ、銅が700キロというが、1年間に日本で廃家電から集まる金だけでも143キロあるという。

これだけでも五輪金メダル使用量の10倍以上取れている事で理論上は可能というが、これまで完全なリサイクルメダルは他国が挑戦しても出来なかった経緯があり、東京五輪のテーマは「環境」に重きを置いているだけに最先端技術を駆使し日本が成功させる事に意義があるか。


プラチナシーズン

本日の日経紙商品面には「白金、供給リスク再び」と題して、プラチナの主生産地である南アフリカで約2年ぶりとなる鉱山労働者の賃金交渉が本格的に始まったものの、賃上げ幅を巡る労使の溝は埋まらない事で国際市場での供給リスクが意識されている旨が載っていた。

プラチナといえば工業用途の裾野が広く景気動向に敏感なだけに、昨年以降中国等の新興国景気減速で不透明感が強まり昨年だけで価格が3割も下落するなど低迷著しかったものだが、末尾にあるように最近のランド安がコスト抑制要因になってきている。ドル建ての輸出価格が低迷してもランド建てでの値上がりから増産意欲は旺盛な構図が出来上がっている。

斯様な収益環境の改善を背景にした賃上げ要求の強まりから上記の労使交渉も難航必至との見方が浮上し、一昨年を彷彿させるような交渉長期化が懸念される事態となっているが、ファンダメンタルズも斯様に森と木の部分とで拗れているだけに価格が不安定になる懸念は一昨年同様に強まってきそうだ。


東商取金現物取引スタート

本日から東京商品取引所では金の現物取引がスタートした。ユーザーは取引員等を通じ東京商品取引所が運営するオンライン上で注文を記入、条件が合えば取引が成立する仕組みで売買対象は100グラムと1キログラムの金地金、100グラムも対象に入れたところが小口需要も視野に入れているか。

実際にこの辺は初日には14枚の売買があったが、100グラム対象のものであった。渡しは偽物流通防止もあって出来ない仕組みになっており、先物から現引きするようなパターンでも特に好みのブランド指定は出来ないが、ここでも田中貴金属工業などのブランド力の高い企業の地金はなかなかお目に懸かれそうにもないという。

ところで田中貴金属工業といえば、同社が先に発表した1〜6月の金地金販売量は前年同期比で30%増となった模様。ブレグジットを切っ掛けに金融市場の混乱や経済不安から中長期的な投資資金の分散先として金が見直されている格好だが、東商取もこの機に乗じての現物取引スタートというところだろう。大手店頭販売からETFまで現物取引は多岐にわたるが、ニッチの取り込みでブランド力の劣勢までカバー出来るか否かに注目したい。


コモディティー二極

昨日は英国のEU離脱決定で大揺れとなった株式市場やオプション、それにFX市場も取り上げたが、コモディティ−の方もまた然りで先週ETF人気と取り上げた安全資産とされる金が急騰する一方で、リセッション懸念を背景にオイル関係は急落の憂き目に遭った。

これによって上記のSPDRなどイートン・パーク等一部のヘッジファンドが大量に投資してきただけに応分の利益となったのは想像に難くはないが、それら以外も今回の金価格の方向性の不透明が続く裏でのETF残高漸増傾向はこの先のユーロの構図に対する不安の裏返しの表れとも取れる。

前回も日欧のマイナス金利政策など世界的な低金利環境下で利回りの低下した国債保有リスクが高まっている旨等を支援材料に挙げておいたが、これまで金利を生まないというデメリットが事あるごとに取り沙汰されてきた金もリスク分散の受け皿的役割が恒常化する可能性が出て来たか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2024

11

1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30