42ページ目   商品先物

破壊と創造の匙加減

さて週末の日経紙商品面には、TOCOMが発表した8月の外国人投資家の売買高が105万9,324枚となった旨が載っていた。前年同月比で33%減となったものの、取引全体に占める比率は29.7%となり、単月で過去最高だった7月に続く高水準となった模様だ。

斯様にコモディティー市場においても外国人の存在が鮮明になってきているが、この辺に関しては同所がアジア投資家誘致に躍起になっている旨が前日の同紙にも載っておりまだまだ増殖の余地ありといったところか。平行して今月は農産物市場開設を正式決定しシカゴの農産物市場をとの裁定取引を促し売買を活発にしたいとの抱負を述べていたが、裁定取引といえば「金ミニ」市場も最終決済価格を標準品決済日寄付値に変更し裁定を促す旨も報じられている。

この辺がインフラと共に整備されてくるとなるとやはりコモディティー市場もHFT化?の流れに拍車がかかるかというところだが、それに伴い個人等の取引形態にも変化が見られるのであろうか。ところでこの個人に関してだが、先週には経産省が金融商品先物を1年以内に投資した経験者に限って勧誘を認めるという商品先物取引の営業行為の規制を見直す方針を固めている。

しかしこの方針、総合取引所を睨み規制によって縮小してきた市場に歯止めをかけ改正金融商品取引法も睨んだ措置とはいうものの、コチラの方はなんとも無手勝流な措置という感はやはり否めないところである。


自動化の弊害

本日の日経紙商品面には「自動売買で売り膨らむ 成約件数、通常の130倍に」として、17日のニューヨーク市場のWTI原油が5分間で1バレルあたり2.6ドル強急落した旨が出ていた。CFTCは粛々と原因の調査を始めているらしいが、参加者による自動売買が大幅下落につながったとみられている模様である。

自動売買といえばコモディティに限らず近年ではFX等も末端までシステム系が浸透してきた感もあるが、近年のレバレッジ規制等で投資化層によっては資金効率が低下、アクティブさを求める向きに応える形からこうした流れが台頭してくるのは自然なところ。ただこの手が普及すればするほど市場では上記のような突飛な急変値が出現するのは当然だろうか。

国内商品市場でもシステム入れ替え後に石油製品等で異常値が出た際に無効措置が取られたりしたことがあったが、他方でオプション市場等では不透明なシステム売買によって付いた異常値でも付いた値が相場とばかりに先の震災時には多額の資金が市場に消えた経緯もある。結局自動とはいえ使いこなしは人知判断、個々は執行リスクを勘案して臨みたい。


アジア指標?

本日の日経紙国際面には、豪英BHPビリトンや英豪リオ・ティントなど資源大手が世界最大の鉄鋼生産国である中国での需要減少が響き、鉄鉱石の日本向け輸出価格を約2年半ぶりの安値水準まで引き下げるとの旨が載っていた。

斯様に世界経済を牽引してきた中国の需要の伸び悩みが上記のような価格形成含め各方面に影響を与えているが、国際価格への影響力といえばこの中国は8月に内モンゴル自治区で生産業者が出資する形でレアアースの現物取引所を設立、また年内に上海で原油先物を上場する方針と先に報じられている。

この原油の消費国といえば中国は世界第二位となっているが、ちなみにこの原油先物では対象が中東産原油で、デリバリーも視野に入れWTIやブレントなどに匹敵する指標を作り、アジア価格形成で主導権を握りたい考えとも過日の同紙に出ていた。

この辺に関して当欄では二年前にも「もう一つの世界指標」として、非鉄を上場している上海先物取引所などが前年の売買高が世界一となり、既に本家のLMEにも影響を与え始めた旨の報道を書いたことがあったが、アジアもこうした方面で本格的に競合戦のスタートとなるか。


コメ先物上場1年

さて、今月でコメの先物が東京穀物商品取引所と関西商品取引所に上場して1年が経過した。72年ぶりの復活上場と鳴り物入りで登場したものの、果たしてメインの市場であった東穀取に至っては何度もその杜撰経営を取り上げてきた通り経営不振から解散の挙句に擁していたコメ市場を来年2月に関西へと引き継ぐことが決まっている。

同所経営陣がまったく場当たり的な経営を続けてきたのは、その他の商品を東工取へ移管決定した後の記者会見にて社長が「〜度重なる勧誘規制の強化が取引減少の理由〜」とその辺の三流マスコミレベルの答弁をしているあたりでも窺えたが、三菱地所のパークハウス基礎工事が粛々と行われている剥き出しの取引所跡地もまた目に入る度に資産食い潰しの酷さを物語っている。

そんな迷走も足を引っ張り上場からこの1年の1日あたりの平均売買高は約370枚で、国内上場商品の売買高ランキングでは14位である。これだけでも東穀取社長の「全限月が揃ってからが本番と考えてくれ」とか「1日5,000枚」というのが如何ほどの大風呂敷かという事になるワケだが、この移管が決まった関西商品でも板寄商いとなるなかで異銘柄共存の相乗効果は未知数と明確な展望があるわけではない。斯様にコメのゆくえも気になるところだが他を引き継ぐ新生「東京商品取引所」もまた然り。

世界の商品先物取引所を見てみると2011年取引高ランキングはNYMEXが3年ぶりに首位に返り咲き、このベストスリーでは2位にインド・マルチ商品取引所、そして3位が上海商品取引所となっている。その後にはCBOTやらLMEが続くが、はたして新生「東京商品取引所」は何位くらいになるのだろうか?おそらく売買高ベースでは首位比較で数%程度と見られるが、先の日経紙には東工取の先月の外国人売買比率が最高の31%になった旨も載っていた。今後彼ら主力含め他をどう誘致してゆくか、先を見れば日本取引所グループの骨子がはっきりしてくるあたりでまた新展開も考えられるが何れにせよまだまだ安穏な道ではない。



関心と矛先

欧州問題が依然として不透明な中を米金融緩和を睨んでかここ直近で金の堅調が目立つ。価格堅調と共に一時期残高が減少した代表的な金ETF「SPDRゴールド・シェア」の運用残高も先週時点で約1,286.5トンと前月比で約4.5トン増加し、4/9以来約4ヵ月半ぶりの高水準となった旨も週末の日経紙に載っていた。

そういえば昨日記のジョージ・ソロス氏のファンドやポールソン&カンパニーも4-6月期にこの手の金ETF保有額を増加させている事も報じられているが、国内でも足元では4-6月の「金需要動向」にて日本の投資用の金需給がおよそ3年半ぶりに買い越しに転じた旨をワールド・ゴールド・カウンシルが発表している。

ところで金といえば先週の日経紙には「東工取、取引に停滞感」として、東工取の売買回転日数が今月20日時点で約9.5日を要し前年同月の3.8日や前年平均の5.4日を大幅に上回っている旨が出ており、先物へはこの辺の波及効果は今ひとつといったところだろうか。その前の同紙には若年層の間で金投資の関心が高まっている旨の記事も見掛けたが、商機かどうかは別としてこちらの啓蒙も業界は工夫したいところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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