45ページ目   商品先物

各々の行方

先月は度々LME(ロンドン金属取引所)について触れたが、その常識を超える破格の買収額と共に取引形態を巡ってもいろいろと憶測が先行している模様だ。まあこの辺は、常連中心に馴染みばかりが集っていた店をオーナーチェンジで広く一般に開放といったところだろうが、当の香港取引所は2015年1月まではLMEの既存の取引形態を維持するとしているもののまだまだ思惑が出てきそうだ。

さて、LMEと比較するに何ともローカルな話題だが取引形態といえば先週末の日経紙で「コメ先物市場の灯を消すな」と題した社説が業界モノとしてやはり目に留まった。鳴り物入りで登場したコメも関西に移り板寄せの道を歩んでゆくことになるワケだが、この先行きを憂慮する関係者は少なくない。

しかしコメだけを関西商取に映すその特異な移管形態もあって主管取引所での取引にこだわる農水省の市場監督権限へのしがみ付きと対で、一向に市場活性化策を講じないその姿に苦言を呈していたがこれはもうコメ登場以前から誰もが思っていたことで改めてこう真面目?に指摘されているのを見ると苦笑を禁じえない。

総合取引所関連法案でコメ先物は例外となり総合取引所が誕生してもこのコメ先物は加わらないことになったが、果たして来年の今頃はこの総合取引所、またこのコメの本上場の適否を巡ってどんな論議が紙面を賑わせているのだろうか。


大物獲得

2週間ほど前には「重要戦略拠点」と題してLME(ロンドン金属取引所)の買収提案に触れ、アジアを睨む戦略を展開しているだけにこの辺の行方がどうなるのか大きな関心が向かおうと書いたが、末尾に挙げた3取引所からやはりというか香港取引所というラインで決まりそうな旨が先週末に報道されている。

結局のところは中国等アジアを睨んだ互いの思惑が一致したというところだろうが、当の香港取はIPO誘致で欧州の有名どころを取り込み世界トップまで躍り出ているだけに、このまま会員判断が無事通ることになればコモディティ戦略の方もなかなか面白い展開になってくるか。

亜の取引所といえばSGX(シンガポール取引所)も鉄鉱石オプション取引やばら積み船の船料オプション取引等の商品先物分野で取扱商品を拡充する意向。ところで本邦、メインのところでは東証と大証の経営統合審査について公取委は9月14日までに統合可否を通知と報じられているが、商取ではTOCOMもLNG先物や電力先物上場の要請がある模様。

この辺はまた後述しようと思うが以前に書いた内からの再構築というより外からの再構築を示唆する一端なのか、何れにせよ今後の産業構造審議会等にも注視しておきたい。


日経・東工取指数先物上場廃止

こちらでも既報の通り、先週末に東京工業品取引所は国内商品先物の値動きを総合的に示す「日経・東工取商品指数先物」の上場を廃止すると発表している。商品指数系といえばつい先月も東京穀物商品取引所が農産物の動きを総合的に示す「東穀農産物指数」の公表を中止したばかりであるがそれに続く格好となった。

しかしこれが上場したのはつい一昨年の3月、何とも早い退場という印象だが一方で近年の取組というか商いの無さを見るに残念ながら当然の結果とも言えるか。日経紙には「商品設計を変更したものの活性化にはつながらなかった。」と書いてあったが、そもそも登場時から全社参加とはならず極めて地味なスタートが既に示唆していたのかもしれなかったし、鳴り物入りの限日取引から限月への変更など今更ながら不振も想像に難くは無かった。

上手く乗せればお約束のETFは勿論のこと、ブルベア系やワラントまで枝葉を次々と広げられる構図だったのだが、このTOCOM指数系のETFでは唯一白金がNEXTシリ−ズからほぼこの「日経・東工取商品指数先物」上場の一ヶ月前に上場しているのみ。そこからの枝葉が遅々として進まなかった原因も課題であった。

今後総合取引所創設も粛々と進行してゆくだろうが、やはり日経平均やTOPIXのようベンチマークとしてマトモに機能する存在がコモディティーも必要なのはいうまでもない。上場商品移管を巡ってまた二転三転する懸念もあるものの、落ち着いた暁にはもう一度そんな役目を担った新しい構成の指数が登場するのを期待したいところである。


商品アノマリー

さて、梅雨が近いこの時期になるとPGM系というか白系をウリにしたメタルジュエリーの案内が各所から送られて来るが、なかでもプラチナといえば今週は5日の日経紙夕刊一面で金の価格がプラチナを上回る逆転が定着する気配との記事が出ていた。

同紙にも謳ってある通り、プラチナは過去30年近く金価格の2割高〜2倍が常でそういったことから一昔前まで両者価格の接近時や逆転時にはストラドルなんぞがよく取り組まれた経緯もあったが、近年の経済環境やら取り組みからここまで恒常的な逆転から察するにこんなアノマリーも既に色褪せてしまっているのが窺える。

こんな背景には勿論経済減速懸念があるが、足元では日進月歩の技術でジワジワと需要減少の芽も出てきている。先週末の日経紙財務面には「マツダ株、連日の年初来安値」として、3月のファイナンスに加え最近の円高・ユーロ安で業績悪化懸念が燻り株価が冴えない旨が書いてあったが、末尾には社運をかけた低燃費技術を前面採用したSUV・「CX-5」が想定を上回る売れ行きともあった。

この「CX-5」だが、新型の高効率燃焼技術によって窒素酸化物を除去する排ガス処理工程が必要なくなる事で必要最低限の部分を入れても従来のプラチナ使用量は7割削減出来たという。まだTOCOMが板寄せだった頃には新触媒開発の噂が出る度にストップ安が続いたものだったが月日は過ぎこんな噂も次々と現実のものになって来ている。

産業色の強い世界だけに昔ながらのアノマリーも斯様に過去の物になりつつあるが、昨今の株式市場なんぞは更にこれが顕著、コモデイティーと絡めて見ているとこちらもまたヒントが幾つも転がっていたりするもの。


重要戦略拠点

さて、中国の景気減速懸念から工業用素材として使う非鉄金属の需要減退観測で投機筋の売りも目立った結果、今月に入ってから非鉄金属の国際価格が軒並み下落、銅などフシ目の7,500ドルを切って年初来安値更新となり、株式市場でもその関連株は直近での崩落が目立っている。

銅といえば指標となるのはLME(ロンドン金属取引所)であるがこのLME、目下のところ上記の通り中国で急成長しているSHFE(上海期貨交易所)等の取引市場に危機感を感じ、アジアでの事業展開を各所にて強化し始めている旨が過日の日経紙に出ていた。斯様に利便性を高めて参加者の拡大に繋げようというところだが、目下のところLMEは複数の取引所による買収提案に晒されているのは既報の通り。

このうち先月まででNYSEユーロネクストは撤退し、入札に残っているCMEグループ、インターコンチネンタル取引所、香港取引所等の3取引所はいずれも10-12億ポンドの価格を提示している模様であるが、アジアを睨む戦略を展開しているだけにこの辺の行方がどうなるのか大きな関心が向かおうというものである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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