54ページ目   商品先物

中京石油市場

昨日は連休明けから稼動した大証の「新ジャスダック市場」について触れたが、今週はTOCOMも同じ連休明けから中部大阪の石油市場を引き継ぐ格好で「中京石油市場」を稼動させている。デリバリー形態など従前市場を踏襲するものの、値付けは当然ザラバへと変更になる。

これで所謂ホールセールとリテール両方を補完ということになるが、先の夜間取引延長と併せ今後どれだけ低迷している売買高の底上げが叶うかである。ちなみに当初は従来の31社より増え39社でのスタート、気になる初日はガソリンが264枚、灯油が128枚にとどまり低調なスタートとなった。

ところで、昨日触れた「新ジャスダック市場」を擁する大阪証券取引所といえば、直近ではETFの普及をテコ入れする為に証券会社に奨励金を支給し、個人投資家から徴収する委託手数料の無料化を支援する制度を導入すると報じられている。はて、一方で商品取引所はどうだろう?

売買高低迷がいわれて久しい折に取引員各社は、それこそ証券各社とは逆に長年ほぼ横這いであった手数料の値上げ改定に動いたのは記憶に新しい。これの起因となっていた一部にはTOCOMの定率会費引き上げという問題があったが、定率会費値上げ分の吸収が企業努力で賄える環境には既に無く、その取引所新システム対応でも多額の資金を割かれている状況にあっては取引員側としても営利法人上選択の余地も無かったのだろう。

そんなワケで取引員も一概に責められないが、取引所の立場としては短期的な収益効果を求めて定率会費値上げを強行する愚行よりもっと先を見据え上記のような行動の一つも起こせないものであろうか? 株式上場を視野に入れた焦りもあるだろうが、今迄新規に打ち出してきた商品の低迷もこうした後押しで軌道に乗せる切っ掛けになった部分があったかもしれないとしばしば思う時がある。


夜間取引の寄与度

さて、TOCOMが連休明け9/21から夜間の取引時間を午前4時まで延長する深夜取引を始めてからちょうど二週間が経過した。

この延長でこれまでより5時間長い午前4時まで取引出来るようになったワケだが、一週間経過後の日経紙にはその売買高が延長時間帯に1日あたり3,000〜8,000枚増えた模様。ちなみに初日では午後11時以降の延長時間帯出来高が夜間全体の22%を占めたというが、狙いである海外投資家やFX投資家層など今後如何ほど誘致出来るだろうか。

当の海外勢の取次ぎで貢献してきた商社系取引員などは順次撤退し、折しもちょうど主力の撤退決定後のタイミングでの船出となったが、取って代わるトップセールスでは何処が手を上げるであろうか。個々ではイベント等形式的には開催したのだろうが、前回もそうであったように今回にしても今ひとつ投資家への啓蒙が周知徹底されていないようにも思える。

一方で証券業界ではPTSが数年前からネット勢の参入が相次ぎ、今年は野村傘下がアローヘッドをも凌ぐスピードを備える最新鋭を稼動させている。こちらの方は従来の補完イメージが強かったものの欧州では大口資金のシフトから日中取引の影も薄くなる規模にまで育ちつつあるが、はてコモディティーの方を考えるにやはり要は主力層の資金、構図の相違はこの辺に起因している。


金との境界線

さて、騰勢が止まらない金は史上初の1,300ドル越え達成など順調に値を飛ばし、週末には史上最高値をまたも更新している。

既に「無国籍通貨」や「代替通貨」などという形容は五年前からこの金に触れる折にタイトル等で使ってきたものだが、近年はより一層それらが切実なものへと変化し、また構造上もETFの普及によって従来のある意味で限定されていた取引がより一層金投資へのアクセスを拡大させたというのも大きな一因だろうか。

このETFも当初こそ日本ではそう商いも集めないだろうと思われていたが、近年では主力のSPDRゴールド・シェアなど始めとして売買代金もなかなか見栄えのするものに育っているのを実感する。

ところでこの金と並行して最近俄かに注目を集めているのが、30年ぶりの高値圏に躍り出ている銀か。この銀も同様に「代替通貨」としてドルやユーロの不安を背景に買われている旨が大手紙でも報じられていたが、米国のマクロ経済指標でも幾つかは改善傾向が見られた事からPGM系含めた景気敏感メタルにも物色の手が広がったという部分もあるだろう。

上記のETFの中でも直近上場の三菱UFJ信託モノなど商いが飛躍的に伸びてきているし、此処へ来てまたぞろ金銀比価論や史上最高値までの伸びしろ云々も出てきてヒートアップする一方であるが、外貨準備として買われるのが金。この辺は冷えた時により実感として解るものである。


同時高の矛盾

今週は、戦後初のペイオフ発動やら、政府・日銀の6年半ぶりの為替介入やらと久し振りにいろいろな出来事があったが、ここ堅調維持していた金も一段急伸してまた今週に史上最高値を塗り替えることとなった。

昨年の秋ぐらいからこの金も史上最高値を塗り替えるのが頻繁に起こりその都度当欄でも取り上げてきたが、かれこれもう一年もこんな状況を繰り返していると値頃感も麻痺というか感覚も薄れてくるものだが、昨日は国内も海外高に上記の為替介入で円急落という事態も加わりTOCOMではサーキットブレーカーが発動、海外高に円安と目一杯ダブルメットを享受した格好で久々に上がったなという感じだったのではないか。

先週の日経紙クイックサーベイにも調査結果で、「金投資に関心がある」と回答した向きが57%に達していた旨が出ており価格上昇で益々注目の存在だが、ここ近年の史上最高値は金融緩和と共に目立ってきた現象で、昨今のファイナンス合戦よろしく通貨価値の希薄化に繋がる線からオルタナティブで金に矛先が向かっている部分もあるが、そもそも金融緩和の背景がデフレということ自体は金が物色されない材料。

こんな反教科書的現象は春先に金を取り上げた時にも書いた事だが、構造も複雑化しセンチメントが一致すればこうした現象が頻繁化する昨今、同時に上昇しているPGM系、対主軸通貨で堅調なユーロ、単独介入に因るものながら上記のようにデフレという環境構造下での円安、何れも教科書的には説明が付かない動きの数々だが、センチメントと構造を見抜ける向きには然るべき回帰を睨んでの裁定機会がより増えてきたともいえよう。


空港も市場も

さて当欄で6月に一度触れている通り、シンガポールでは昨日から、金やエネルギー関連品目などを扱うSMX(シンガポールマーカンタイル取引所)が取引開始となっている。

同所は、インド最大の商品取引所を運営するファイナンシャル・テクノロジーズの傘下だが、アジアの主要な金融・商業センターとしてのシンガポール特有の地位を最大限活用しようとする中で、SMX解説は正しい方向への段階の一つとCEOは述べている。

ところで、シンガポールといえば一方でこのSMX始動の前日の30日には、日本政府観光局が羽田空港の10月末の本格国際化を東南アジア諸国の旅行業界に売り込む座談会と商談会をこのシンガポーツにて開催した模様。また、今週月曜付け日経紙夕刊「あすへの話題」にはソウル仁川空港がハブ空港となっている現状で羽田ハブ化を打ち出した今後に注目したいとしているが、この羽田も成田ももう何年も前からハブ空港としての地位確立は悲願とはなっているもののいまだ叶わず。

今のこうした他のアジア諸国の勢いを見るに付け国内商品市場縮小の様子も鑑みると、昨年日経紙にて前に地銀総裁の福井氏が「日本に国際ハブ空港が育たない構図と似ている」とした一文を思い出さざるを得ない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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