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今年最大規模

本日は先週に日興アセットの対として一寸触れたネクソンがはれて上場となった。日経紙等にも再度堂々の全面広告が載っていたが、注目の初値は公開価格に対してわずか0.5%高でアッサリ寄り付きあと揉み合い、モタついていたものの売買代金では東証一部でトップとなった。これで資金を吸い取られたの如く本日は2桁銘柄が活況で、もはや幅というより率で勝負といった商いがマーケットでは主流となっていた。

この株自体は先にも書いたように日興アセットの2倍の吸収額と今年最大規模の案件な上に、グローバルオファリングということもあって派手な値動きはあまり想定されていなかったが、一方でパッシブファンドの買い需要他、投信の組み入れ期待も一部には出ている模様でこの辺は改めて一部直接上場の箔を認識させる。

総じてゲーム系など同業は本日軟調推移であったものの、一昔前と比べるに東証一部もこうした業種が幅を利かせるなどほんとうに景色の一部が変わった感がする。そうそうゲーム系といえばもう一つ、海外でも本日は米ジンガがナスダック市場に上場の運びとなる。こちらも前評判では初値設定が低めとも言われていたがさてどうなるか、その辺も含めアイテム課金という形態が今後どういった歩みをしてゆくのか興味深いところでもある。


大手運用会社よりゲーム会社

さて月初の日経紙には、過去1年以内に上場した銘柄騰落率を単純平均して算出する「IPOインデックス」が日経平均が直近高値を付けた10/28から11/30まで10%下落、その下落率が日経ジャスダック平均株価や東証マザーズ指数を上回る軟調さが書かれていたが、やはりというか今月に上場を予定していた企業で取り消しや延期がポツポツと出ている。

先に19日の上場予定であった「キューアンドエー」が上場を取り消し、先週末にも運用大手の「日興アセットマネジメント」が、15日に予定していた株式の新規上場を延期する旨が報じられていた。運用大手の上場ということで話題性はあったが、主幹事証券が国内外の機関投資家にヒアリング実施したところ1株840円と想定した売り出し価格が高いとの声も出て、価格を引き下げようにも見込売却益の兼ね合いもあり上場を待つことにしたという。

ところでその日興アセットの上場予定日前日に上場を予定している企業に「ネクソン」があるが、こちらは本日公開価格が仮条件の中値にあたる1,300円に決定、先に日経紙でも派手な全面広告が目に付いたがこちらは幹事側から機関投資家の引き合いが強いことをかねてより指摘されており、その調達予定額も日興アセットの約2倍というからなんとも今の市場を象徴している人気の明暗ともいえようか。

長期に亘る準備その他を考慮すればこうした取り消しや延期は其れなりの決断だったろうが、こればかりは何とも言えない。業界でも取引員が一時期公開ブームであったが、その後の環境を思えば公開を取り止めにした幾つかの取引員は結果オーライだったともいえる。各社思惑はさまざまだが、こうした取止め・延期の傾向もまた市場のバロメーターともいえそうした動向は全般を測る上で指標にもなろうか。


ハコと有限責任事業組合

さて、こんな萎縮した株式市場で活躍するのは幕間ツナギで仕手株と相場が決まっているが、本日も飽きず?に値上がり率上位にはボロ株がオンパレードである。ところでこの手ではかつてよく商いを集めていた物に東証二部に上場していた井上工業があった。今は無き同社だが、今頃になって約15億円の自己資金を還流させて架空の増資を公表したとして問題になっている。

これに限らず二部や新興ポストは、監査法人から決算レビュー報告書が作成出来ないと通告され上場廃止回避策から怪しい闇錬金に手を染める例が後を絶たなかったがこれもその一つ。架空増資を実施させて新株を入手するスキームは一部の定番で、(●●有限責任事業組合)なるものが彼方此方に乱立していたのは記憶に新しい。

当然ながら魑魅魍魎の金融ブローカーにカネも流れ、闇社会に還流していった流れなど指摘されていたが、同様に東証一部の名門だったオリンパスにも飛ばしで金融ブローカーが介入していたのは軽い驚きであった。しかし今更ながら消滅した二部のこんな小粒の事例で騒ぐということはオリンパスの本当にマズイ部分から視点を逸らさせる狙いもあるのだろうか?とつい勘繰ってしまう。


GDPの5割

本日の日経平均は反発しているとはいえ売買代金は前回書いたように依然低水準、先週末の株式市場も東証一部の売買代金は9,018億円にとどまり本日で実に10営業日連続で1兆円を下回っているが、2003年12月から2004年1月にあった11営業日連続以来という約8年ぶりの事でこの更新も指呼の間である。売買代金の減少については先月から顕著になっているが、日和見的な欧州問題に解決策が見出せず右往左往のなか日本株の売買がどんどん手控えられてしまっている。

TOPIXもリーマン・ショック後の安値まであと数ポイントとか言われているが、上記と絡めて東証一部の時価総額も今月に入ってからリーマン・ショック後の250兆円割れ以来、約2年8ヶ月ぶりにこの水準に戻ってきた。震災直前には約330兆円前後あったワケだから随分と蒸発してしまったものだが、個別を見ても今年は代表的なところで「東電」や「オリンパス」、それに「ソニー」や「トヨタ」まで所謂従来ディフェンシブ系という認識のあった企業の崩落が記憶に新しく当然といえば当然か。

しかしこうなると今や時価総額はGDPの半分規模になっているわけで、教科書的にはこのGDPとの対比がほぼ同規模が自然とされるのを考慮するにある意味危機的状況だろうか。上記の通り売買が低調だから十分なリクイディティーもなく仕方なしに薄い板へぶつけるから値が飛び、それがまた極端な値振れを増徴させるという悪循環になっているが、個人好みのモノなど難平などで下手にマル信なんぞ使っているのか下がる過程での買い残増加が多く見られる。

こんな構造的要因とも相俟ってPBR信者も苦戦を強いられているようだが、こんな状況下で以前は懐かしいPKOやらPLOの実施に出たものだがさしずめ今は日銀のETF買いか。これも月末の2011年度上半期決算で実額が明らかになってくるだろうが、その含み損は目下400億円以上とも一部では指摘されている。このままいけば結局これも間接的には納税者負担で穴埋めという形が避けられないというのはなんともという感じだ。


亡霊

渦中のオリンパスだが、週明けの本日は一転して買い気配からストップ高の比例配分となった。これは勿論のこと証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で法人を刑事告発せずに、課徴金納付命令の金融庁への勧告にとどめることを検討していることが分かったと一部で報じられた事に因るもの。これで上場廃止基準に抵触しないということになると上場存続の期待が当然出てくるワケで上場廃止を織り込んだ売りがそっくり買いに回るという単純な構図で、似たような境遇?の大王製紙まで今日はストップ高まで一時買われる始末。

何れもこの先どういった結末になるか東証等の胸先三寸だけに一般的には分かりようもないが、監理銘柄で売り禁になっているだけに売り方なんぞは利食いしてしまえば解禁になるまでもうショートを持てなくなり、その前に一転上場廃止ともなれば尻尾までいただく快感を逃してしまうということで悩ましいところか。まあこれは買い方にしてもそうだろうが、投信から政府系ファンドまで今のところトッとと処分した向きとジッと耐えている向きとで二分されており各々の性格が出るというものだ。

しかしこの件、先月に当欄で触れた際に「漫画に出てくるような粉飾隠蔽紛いの処理」とコメントした通りそのままの漫画のような結末であった。公の前で笑いものになっても黒い物を白と言わなければならないサラリーマン社長の悲哀を会見では感じたが、今頃こんな事例が出てくるとはまさにバブル期の亡霊という表現こそ相応しい。街では今迄書いてきたようにバブル期の象徴であった物が次々消え行く昨今、今更ながらこの当時の副産物が表面化するとはある意味感慨深いものがある。

こんな古典がこれまで通用したのも独裁国の如く企業も長期政権ならではの為せる技であったのだろうが、彼方此方の独裁国がおかしくなってきているように綻びが露呈するのも時間の問題であったか。しかし先に書いたようにコーポレートガバナンス然り、日本有数の大手監査法人にしてもこんな事例が上手くスルー出来るなら国際的な信頼性も失墜するということになる。またこの先には東証としてどう処分付けるか、大証との統合でこれから新しい一歩を踏み出そうという中、その結論にもまた注目が集まる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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