113ページ目   株式

既存概念の脆さ

株式市場では本日も東電株が大幅続落、その性格上金融機関の保有も多く事実上の筆頭株主であった第一生命などは株価下落に因る評価損が甚大となった。また此処に限らず既報の通りで他の金融機関も今回の急落で巨額の減損処理を余儀なくされている。

ところでこんな公益株だけに投信系も挙って組み入れていたワケだが、判明しているだけでとっとと全株外したところは「住信日本株SRIファンド」、「住信アセット(グッドカンパニー)」、「住信アセット(すみしんDCグッドカンパニー)」、「STAM SRI・ジャパン・オープン」、「生物多様性企業応援ファンド(生きものがたり)」、「ニッセイ日本勝ち組ファンド」等々。

ブラックロックや日興AMもかなりヤラれた模様だが、その性格からやはりアクティブ系は見切り、一方でパッシブ系などはトラッキングエラーの観点からもなかなか外しきれないかと。しかしこうして並べて見ると「SRI」、「生物多様性企業」、「勝ち組」とか其処へ東電があると恥ずかしくなるようなネーミングばかりだが、逆にそこから震災前の優等生ぶりが窺えたというもの。

名門ブランドの優等生も既にJALを堺に投資対象足りうるのかという観点ではますます常識が通用しなくなってきている。


時間を買う選択

さて、週初の日経紙にはクーリエ・ジャポンの全面広告でマネックス証券社長の企業トップインタビューが出ていたが、このマネックス証券といえば既に既報の通り先週にはマネックスグループが米ナスダック市場上場のオンライン証券「トレードステーション社」を約340億円でTOBと発表されている。

トレステといえば以前のオメガ時代から一寸ハマった向きならディーラーから一般まで誰でも一度は手にしたことがあるツールだと思うが、直近でも小粒のM&Aをしてきたマネックスも今回は比較的大きな買い物をしたなという印象。これにより今後どういった環境提供が展開されるのかが焦点となるか。

しかし、こうした証券に限らず昨今金融界では規制の嵐。当欄では大発会のコメントで「今年もまたM&AやMBO等で商機ありかという流れが個別で続くか。」としたが規制の影にも商機有りといわれる昨今、マネックスのように時間をカネで買うM&A機運が盛り上がってきてもなんらおかしくはない。

例えば業界には株主還元策の一環で自社株買いを発表している向きも少なくはないが、其の先のアクションの一つとして厳しい業界環境からの再編過程で出て来る企業間のWIN-WINの絵図がマッチした場合、これを使う場面が今後出てくるのもまた自然な成り行きともいえるか。


PKOも直接志向へ

日銀が追加緩和策の一環として昨年末から開始したものにETFの購入があるがこのETF購入を巡っての市場の話題に、昨年12月以降買い出動した16回のうち14回は日経平均が前日比で100円以上下げた日である事から、日経平均の下げ幅が100円を超えると買いが入るとの話がある。

ところが昨日は、日経平均が113円安となった割にこの買いが観測されなかったのがアノマリー破りと一寸した話題になっていたようだが、今迄のコストの方は試算すれば9,841円ということで現状ではコスト割れとか。

リスク資金呼び込みが目的なだけに、早めの損失解消で押し目買いは報われると示したいところと日経紙には出ていたが、震災や原発事故に伴う損失の程度が如何ほどか特定できない中での機械的買付けは報われるのだろうか?外国人が震災後に突出した買いを見せたが、やはり其れなりに世界の株価が堅調な中において日本株のみ直下型急落を見せたことによる相対的出遅れを買ったことによるものもある。

この手の買いとは似て異なるPKOK系だが、金融庁は先週末にも所謂「空売り」への規制を6ヶ月間延長し10月末まで続けると発表している。延長はこれで9回目だが、上記のものと併せこういった中途半端な直接市場介入は明確な効果が見えないないわりに需給の歪みという副産物も作ってしまう。日々の高い安いはあっても、近年は海外の映しで寄った後の独自のうねりが近年めっきりとなくなってしまっている点など当局は懸念すべき項目だろう。


争奪戦回避

本日の株式市場は円高一服や米インテルの好決算を背景に急反発から全面高で引けたが、そんな全般高の中で一際弱かったのがパルコ。朝方でこそ全般の流れで5日ぶりに小高く始まったものの、後場からはズルズルと値を下げて独歩安の展開に終始していた。

ご存知、此処は日本政策投資銀行への第三者割当増資を巡っての確執から、途中でファンドからバトンタッチしたイオンも参戦して以来役員人事を巡って対立、直近ではイオンへの対抗策としてシンガポールのキャピタモールズ・アジアとも業務提携し、このまま行けば株主総会に向けて委任状争奪戦という構図が有力視されていた。

今回は一転、大株主の要求を受け入れたことからこうした争奪戦のプレミアムが後退、株価もそのプレミアム分が剥げたという格好になったワケだが、これで日本政策投資銀行が割当てられたCBを株式転換するような動きにでも出るとそれはそれで面白かったのだがなんとか穏便に収まってしまった格好。

しかしやはり時価総額というかカネの力は大きい。そういえば、一寸逸れるが先の狂乱オプション相場で多額の貸倒引当金発生懸念からネット系は軒並み新規ショートを停止してしまったが、そうした措置を取らなかった向きもありこの辺はいろいろ懐具合の深さが感じられる。


自社株買いに冷や水

さて、先に東電が資産リストラの一環として保有株式を見直し、それらを売却する方向で調整に入ったとして日経紙の一面にも載っていたKDDIが本日も続落、他も保有銘柄リストなどが出回りそれらに挙がっている銘柄は昨日から軒並み弱含みで推移している。

もともとは数年前だったか同社が東電の光ファイバー通信回線事業を買収する際に自社株を東電に割当てたものだが、昨年後半相場では自社株買いへの期待が膨らみ需給面での支えとなって上昇していたところ。直近でも震災ショックからの出直り局面であったがやはりここへきて冷や水となったか。

しかし最近はなにかこう自社株買いモノが冷や水を浴びるパターンが多い。このKDDI以外では七十七銀行も公的資金注入の申請検討の報で売られてしまったが、ここも直近では自社株買いを発表しており、また本日は大東建託が引け後に下方修正を発表しているがここも先に自社株買いを発表している。

これらも自社株買い余力の目減りになってしまうケースとそうでないケースで出直りに差も出てくるであろうが、昨今増えつつある自社株買いも初動を逃がすとチャブついてしまうパターンが増えてきているのでこの辺は注意しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2024

11

1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30