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ハコと有限責任事業組合

さて、こんな萎縮した株式市場で活躍するのは幕間ツナギで仕手株と相場が決まっているが、本日も飽きず?に値上がり率上位にはボロ株がオンパレードである。ところでこの手ではかつてよく商いを集めていた物に東証二部に上場していた井上工業があった。今は無き同社だが、今頃になって約15億円の自己資金を還流させて架空の増資を公表したとして問題になっている。

これに限らず二部や新興ポストは、監査法人から決算レビュー報告書が作成出来ないと通告され上場廃止回避策から怪しい闇錬金に手を染める例が後を絶たなかったがこれもその一つ。架空増資を実施させて新株を入手するスキームは一部の定番で、(●●有限責任事業組合)なるものが彼方此方に乱立していたのは記憶に新しい。

当然ながら魑魅魍魎の金融ブローカーにカネも流れ、闇社会に還流していった流れなど指摘されていたが、同様に東証一部の名門だったオリンパスにも飛ばしで金融ブローカーが介入していたのは軽い驚きであった。しかし今更ながら消滅した二部のこんな小粒の事例で騒ぐということはオリンパスの本当にマズイ部分から視点を逸らさせる狙いもあるのだろうか?とつい勘繰ってしまう。


GDPの5割

本日の日経平均は反発しているとはいえ売買代金は前回書いたように依然低水準、先週末の株式市場も東証一部の売買代金は9,018億円にとどまり本日で実に10営業日連続で1兆円を下回っているが、2003年12月から2004年1月にあった11営業日連続以来という約8年ぶりの事でこの更新も指呼の間である。売買代金の減少については先月から顕著になっているが、日和見的な欧州問題に解決策が見出せず右往左往のなか日本株の売買がどんどん手控えられてしまっている。

TOPIXもリーマン・ショック後の安値まであと数ポイントとか言われているが、上記と絡めて東証一部の時価総額も今月に入ってからリーマン・ショック後の250兆円割れ以来、約2年8ヶ月ぶりにこの水準に戻ってきた。震災直前には約330兆円前後あったワケだから随分と蒸発してしまったものだが、個別を見ても今年は代表的なところで「東電」や「オリンパス」、それに「ソニー」や「トヨタ」まで所謂従来ディフェンシブ系という認識のあった企業の崩落が記憶に新しく当然といえば当然か。

しかしこうなると今や時価総額はGDPの半分規模になっているわけで、教科書的にはこのGDPとの対比がほぼ同規模が自然とされるのを考慮するにある意味危機的状況だろうか。上記の通り売買が低調だから十分なリクイディティーもなく仕方なしに薄い板へぶつけるから値が飛び、それがまた極端な値振れを増徴させるという悪循環になっているが、個人好みのモノなど難平などで下手にマル信なんぞ使っているのか下がる過程での買い残増加が多く見られる。

こんな構造的要因とも相俟ってPBR信者も苦戦を強いられているようだが、こんな状況下で以前は懐かしいPKOやらPLOの実施に出たものだがさしずめ今は日銀のETF買いか。これも月末の2011年度上半期決算で実額が明らかになってくるだろうが、その含み損は目下400億円以上とも一部では指摘されている。このままいけば結局これも間接的には納税者負担で穴埋めという形が避けられないというのはなんともという感じだ。


亡霊

渦中のオリンパスだが、週明けの本日は一転して買い気配からストップ高の比例配分となった。これは勿論のこと証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で法人を刑事告発せずに、課徴金納付命令の金融庁への勧告にとどめることを検討していることが分かったと一部で報じられた事に因るもの。これで上場廃止基準に抵触しないということになると上場存続の期待が当然出てくるワケで上場廃止を織り込んだ売りがそっくり買いに回るという単純な構図で、似たような境遇?の大王製紙まで今日はストップ高まで一時買われる始末。

何れもこの先どういった結末になるか東証等の胸先三寸だけに一般的には分かりようもないが、監理銘柄で売り禁になっているだけに売り方なんぞは利食いしてしまえば解禁になるまでもうショートを持てなくなり、その前に一転上場廃止ともなれば尻尾までいただく快感を逃してしまうということで悩ましいところか。まあこれは買い方にしてもそうだろうが、投信から政府系ファンドまで今のところトッとと処分した向きとジッと耐えている向きとで二分されており各々の性格が出るというものだ。

しかしこの件、先月に当欄で触れた際に「漫画に出てくるような粉飾隠蔽紛いの処理」とコメントした通りそのままの漫画のような結末であった。公の前で笑いものになっても黒い物を白と言わなければならないサラリーマン社長の悲哀を会見では感じたが、今頃こんな事例が出てくるとはまさにバブル期の亡霊という表現こそ相応しい。街では今迄書いてきたようにバブル期の象徴であった物が次々消え行く昨今、今更ながらこの当時の副産物が表面化するとはある意味感慨深いものがある。

こんな古典がこれまで通用したのも独裁国の如く企業も長期政権ならではの為せる技であったのだろうが、彼方此方の独裁国がおかしくなってきているように綻びが露呈するのも時間の問題であったか。しかし先に書いたようにコーポレートガバナンス然り、日本有数の大手監査法人にしてもこんな事例が上手くスルー出来るなら国際的な信頼性も失墜するということになる。またこの先には東証としてどう処分付けるか、大証との統合でこれから新しい一歩を踏み出そうという中、その結論にもまた注目が集まる。


前哨戦のグルーポン

さて、周知の通り先週末にはクーポン共同購入サイト最大手である米グルーポンが、米ナスダック市場にはれて上場の運びとなっている。注目の初値の方は公開価格を40%上回る28ドル、終値は公開価格より31%高い26.11ドルで引け好調な滑り出しとなった。

終値で計算すると時価総額は円換算で約1兆2,900億円、これと同クラスの上場企業といえば京セラや住友商事クラスになるが、こちらの場合は創業わずか3年であるからなんとも驚きの規模である。

この手の上場では今年5月に「リンクトイン」を取り上げたが、ココに続いて上場した「ジロー」なるオンライン不動産取引会社も新規上場時には公開価格の3倍まで値を飛ばした経緯がある。ただ同社はこの段階で赤字企業、知名度は抜群ながら「グルーポン」も今後はココも赤字体質をどう捉えた評価になってくるかだが、競合他社が続々とこのビジネスに参入してきているだけに予断を許さない。

何れにしても元々上場に伴う調達額が7億ドルとかつてのグーグルに次ぐ大きさで、夏以降出ては消える進行状況からIPOは凍結状態でココは再開後の動向を占う試金石でもあっただけにモルガンなどホッと一息というところだが、これが終ると今度の焦点はやはりフェイスブックということになるか。


逆さ合併なるか

週明けの本日の日経紙一面を飾っていたのが、「東証・大証 来秋合併」というタイトル。予てよりかれこれ一年近く水面下で模索され折りに触れ当欄でも取り上げてきたが、報じられているところによると上限付のTOBで大証株の過半数を取得、合併新会社を持ち株会社と4子会社に再編という形で合併比率の詰めなどを急いでいる模様だ。

これら報道を受けた当の大証は本日買い気配から反発となっていたが、さすがにこの手の話も数を重ねるごとに当初ほどの関連株反応も鈍くなっている感じがするが、任天堂など大証がマザーのものも再度材料を蒸し返す動きで反発となっていた。

この件を前回8月に触れた際に、株式交換、TOB案、上限付TOB案の三案を挙げたが最終的には一番複雑な最後の案に落ち着いたか。今回は国策が掛かる特殊例とはいえ取引所がこの手の逆さ合併を敢行したことではたして今後一般が似たようなケースを持ってきた場合承認が緩くなるのだろうか?裏上場が緩くなるとまた如何わしいことを考える輩が出てきそうだが先ずは完結が先というところか。

ところで日経紙といえば、あの日立・三菱重工の経営統合と先走ったリーク以来「羹に懲りて膾を吹く」の如くなりを潜めていたが裏が取れたのか久し振りのリークを打ち出してきた。これでまたも前回のようになったらそれこそ萎縮してしまいそうだが、この先には懸案の商品取引所との統合案も控え国内再編は焦眉の急とされているだけに上手く纏まって欲しいところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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