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巷の想像力

さて紙屑視されていた東電株式は2日連続のストップ高の後、本日も前引けは39円高まであり、また昨日はひまわりHDがストップ高まで買われていたのが目立った。いずれもこの震災関連ともいえる銘柄だが、上昇に期待を賭ける復興関連群とは違って東電は原発、ひまわりは傘下証券の巨額貸し倒れ発生とこれらは負の対極にあった銘柄である。

この東電、期末には連日のストップ安で引けには水増しの売り物がベタベタに集まっていたのが普段の光景であったが、こんなパターンが一変したのは30日の大引け間際、というか殆ど大引であったがこの水増し分纏めて約4,000万株一本で取った向きが出現してからである。

これに関しては、機関店が欧州系でもありちょうどフランスの要人が来日していた折だったことから欧州筋というのが真っ先に噂されていたものだが、はて政府系がこんな買い方をするだろうか?この辺は同時に噂されていたSSBT OD05オムニバスアカウントなる中国系もほどなく噂になったものだが、蓋を開けてみれば同じオリエンタル系でも某ヘッジファンドという話も出ている。

さて、もう一つのひまわりHD、先に伝えたオプション市場の異常な動きからネット系では突出した貸倒引当金を計上した同社であったが、意外?だったのはすかさず同額の融資を取り付けたことか。いずれも背景が一般まで見えない故に思惑が募り株価も高下するが、先行きはやはり単発モノか政策モノかでその値段には差が出て来るというもの。


敢行組と延期組

配当落ち後の動向が注目された日経平均であるが殊の外強く、本日は円安や欧米化部高も背景に3日ぶりに急反発となった。この間には震災の影響で操業停止していた工場などが再開のメドが立ったとの発表が好感されて一気に値を戻す銘柄群もその貢献度は高かった。

そんな中には、奇しくもあの東日本大地震当日が新規上場日となったカルビーも含まれているが、一昨日には新規上場来の高値を更新しまずまずの足取りとなっている。さて、近いところでカルビーに続くIPOとしては島根銀行、そして創薬ベンチャーのラクオリア創薬が予定されていたが、これは上場延期を決定。

この他来月まで見てみると、液晶ディスプレー用ガラス基板のAvanStrateが4/12の上場予定を延期、温度センサー会社のSEMITECも4/13の上場予定日が延期となっている。いずれも株式市況等の影響を勘案してと説明しているが、ここPOインデックス自体は底堅かったもののやはり数社はこうして震災による影響が重く見られたということになる。

昨年の新規上場は22社。直近のピークが2006年の188社であったから、これからすると実に約9割減少ということになる。東証は昨年第一生命と大塚HDという2件の大型案件があったものの、世界のそれと比較すれば存在感は薄い。ただでさえIPOが減少しているところに今回の震災は泣きっ面に蜂だが、ここは先行組の成功がひとつの試金石となろうか。


権利付き最終日

週明けの本日は配当権利付き最終売買日、これによって明日の日経平均株価の配当落ち分は約86.24円と試算(TOPIXで9.21ポイント)されているが、この落ち分が現況の環境下で妥当か否か一部では減配リスクが懸念される中を、全般ではこの落ち後に改めて資金流入がどの程度あるかが今後の焦点となろうか。

さて今回も高配当モノや定番人気の株主優待モノなどは、やはりツナギが入っている様子が見受けられたが、今年の場合は状況が状況だけに配当落ち後に想定外の変更があってもなんら不思議ではないところが実に微妙、早々に未定を打ち出したところもあるが別な意味で高くついた等となるケースも出るか。

だいたい定時株主総会にしても、毎事業年度の終了後一定の時期に召集しなければならないと会社法では規定しているものの、通例の通り数ヶ月以内に召集されるかどうか今回の震災によって全て予定通り開催されるか否かこちらの方も不透明である。

もう一つ、先週末には市場デリバティブ取引に係る注意として各社重ねての注意喚起が為されている。先週始めに少し触れたが、各社大幅な証拠金引き上げ措置により本日の夕方に実施される値洗い処理によって、既存建玉を保有している向きでも追証が発生する可能性が当然出て来るケースも想定される。各々周知徹底しているだろうが、日中相場のみでイブニングを見なかったゆえに一晩で値洗いが一変していた等の冗談のような話も実際にあったワケで、こんな再来でまた一寸した混乱が生じないのを願うばかりである。


個別も仕手化

さて、週末からデリバティブ市場での異常値のさまに触れてきたが、今回のマーケット直撃では個別でもなかなか普段見られない動きが起きた。復興関連のゼネコン系が買われるのは阪神の時同様であったが、対極にあったのが原発関連で各々好業績や年明け早々に出た個別の好材料を囃して食い付いていただけにガチガチに売られた。

東電も然り、インフラ産業の特異性ということやこれまでのJALや破綻銀行の連想で彼方此方から「国有化説」がやはり実しやかに出たが、当然株価も3日連続のストップ安から1,000円の大台割れは分割等も考慮して実に27年ぶりであった。震災前の相場ではこの時期柄、配当狙いの観点で見直されこれまた食い付きがあっただけに、インカム狙いで買ったつもりがその配当も急遽未定、逆にとんでもない仕手株に化けたパターンか。

毛色の違うところでは、TOBを実施中の銘柄まで異常値が出ている。当欄でも最近触れた、エノテカやCCC、それにアートコーポもTOB価格を下回るなど、合理性云々で説明のつかない株価出現で裁定云々を超越した現象なのだろうと改めて実感。

他にも通常は逃避資金の逃げ込み先になるディフェンシブ物まで全滅したものの、原発復旧の進展状況や大量の外人買いが好感されてほぼ戻るものは戻っているがこの一巡後が正念場、ダメージや今後の影響が未知数なだけに今の復興関連総買いの様相が一段と不気味に映り個別でもまた取組内容が変わってくるのは想像に難くない。


阿鼻叫喚

週末には「歴史に残る異常値」として末尾に「阪神大震災やリーマンショック時よりも一気に直撃された分、今後表面化して来る影響が懸念されるところ。」としたが、果たしてネット系証券では目下オプション取引を中心とした?足?が続々と問題化している。先週発表しているところでは、松井証券が35億円の貸倒損失を計上、カブドットコム証券は39億円、マネックス証券は13億円の未収が発生している。また業界ではデリバティブに特化していたひまわり証券が早々にこの分野からの撤退を表明した。

証券各社もここから未収の回収で大変だろうが今回は投資家も地獄、なにしろ玉詰といっても受入証拠金範囲でのロスカットしか出来ないので、それをはるかに上回るプレミアムの暴騰ではロスカットもいたちごっこである。それこそ必要証拠金の10倍くらい一挙に入金して見合う具合で、殆どの投資家はもともとの証拠金使用率がこれ以上なワケだから受入がロスカット予定以下の口座のケースでは、脱出したくても刻々と値洗いマイナスが拡大してゆくのを何も出来ずに見ているしかないまさに阿鼻叫喚の状態であったと思う。

損失といえば、日曜日の日経紙にも今回の円暴騰でFX取引でもロスカットが続出し、わずか5分間で60万円の損失を被ったという話が載っていたが、オプションは週末にも書いたように最悪の場面に当たってしまったケースでは、たったピンでも4万円そこそこの証拠金でも1分間で100万円以上の損失も出せるのであり、それからすれば5分間で60万円程度の損失などまだまだかわいい?ものだ。

連休明けも東証と大証は揃って不測の事態が起こらない限り取引継続しているが、斯様にマーケットの事故も未曾有の事態となりつつあり、やはり各社としての対応は事実上取引停止に近いものとなる。既にオプションのショートに関しては建玉上限を数百枚からゼロとし、先物では従来の半減、またSPAN証拠金に対する掛け目は既に震災後アップさせていたが、これも更にアップさせるなどの措置が各社続々と取られている。

FXなど協調介入で相場急回復となったが、ロスカット後では時遅し。オプションも残存日数を考えればここからが面白い場面なのだが、上記のような措置でリカバーのチャンスまで暫くおあずけとなんとも厳しい終戦処理である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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