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退潮と躍進

ちょうど一年前の7/14付け当欄では「時価総額下克上」のタイトルでコメントしていたが、本日の日経紙には6月末の株式時価総額で見た世界の企業ランキングが出ており、昨年末と比べると収益の先行きの懸念等などから石油会社など資源関連の退潮が目立つなど、個々で勢力図が変化している旨が目に留まった。

この資源に限らず最近話題になったものの中には、立て続けにヒットを飛ばしている米アップルとマイクロソフトの時価総額が逆転しその主役が交代したのも有名なところ。また急減組としては原油流出事故でほぼ半分となってしまった英BPがあるが、規模こそ違うが昨日書いた国際帝石も株価下落でそうしたパターンか。

けっこう意外だったのは躍進が続いたペトロチャイナなど中国勢の減少があった点か、この辺は東証が今年上期の売買代金で3半期ぶりにアジア首位の座を奪還した裏で、上海証券取引所など35%減と振るわなかったのにも見られるか。

一年前はもっと狭義で国内企業のテーマ別に堅調組と苦戦組の時価総額逆転をコメントしたものだが、世界規模で捉えるとまた違った視点で見えてくる。今回は相対的に日本勢が浮上したが、次回の勢力図はまた変化ありや否や非常に注目である。


懐かしや帝石

昨日は中国のコークスに触れた事もあってザッと資源関連株を見ていたのだが、中でも目立っていたのは前日にストップ安まで叩かれていた国際帝石の急反発であった。ちなみに本日も外資系のレーティングアップ等で見直されて続伸となっているが、ここ直近の下げはダラダラとした下落の最後?に相応しいものであった。

週末にストップ安で東証一部値下がり率トップを演じた背景には、周知の通り公募増資で最大5,872億円を調達すると発表したことがあるが、国内事業会社としては今年最大級の増資である。なにせ新株は最大130万株にのぼり、現在の発行済み株式数が約235万株であることから約55%にもなる計算だから凄い。

もともと同社には以前からファイナンス観測があり、これを読むかのように確信犯的なショートが直近で入っているあたりがなんとも怪しいが、それにしてもかつての野村やNECのファイナンスが普通に見えるほどの希薄化はサプライズであった。

しかし、今まで触れてきた金融系に限らず事業会社も自己資本増強の用が依然強いことを改めて認識。株価下落から時価総額も同社はJXホールディングスに首位の座を譲り渡す事となったが、今後も事業系ではこうした構図が彼方此方で見られる可能性が高いか。


金の果実シリーズ

さて、先週の金曜日に三菱UFJ信託銀行が発行した「貴金属上場信託(国内保管型)」が上場してから明日で一週間が経過する。今迄、商品系のETFには何度か当欄で触れてきたが、今回のものは貴金属対象の国内型としては業界初である。

初日の商いを振り返ってみると、このうち「純金上場信託」はご祝儀も入ってかやや上鞘の3,600円で寄付き引けでは3,400円台に落ち着いたものの、売買代金は1億3千万越えとなかなか。この手では首位を誇る「SPDRゴールド・シェア」の同日の売買代金が約7億7千万、大証に上場している「金価格連動型上場投資信託」は約3億8千万、同じ大証の「国内金先物価格連動型上場投信」が約1,600万、そして「ETFS金上場投信」が約6百万であった事を考えると今後にも期待が持てよう。

正直なところ売買代金の一億円超えは予測していなかったが、2日申し込み時点でも「SPDRゴールド・シェア」等の主力と共に買い残を積み上げておりまずまず。やはり現物の裏付け、それも当の三菱信託が「貴金属現物が日本でしっかりと保管されています。」と謳っているように、国内で直接管理という安心感から資金もこの辺へ向かったのか。

この手の現物裏付けがあるETFとしては、上記の同じ東証に上場している「SPDRゴールド・シェア」があるが、このロケーションを日本に移したようなモノか。2006年の信託法改正でこの手の仕組みを使ったETF発行が可能になったが、これはまた受け渡し単位も可也小口化されておりこの辺の嗜好性から現物需給の引き締め要因となるや否や、その構造上からも今後に注目である。


金融愚策

昨日は東京都内にて、台湾系証券会社などが日本企業向けの説明会を行った模様だが、約80社が参加し近く日本企業も上場する見通しが明らかにされたり、参加した他のベンチャー企業も資金調達し易い日本以外での上場を検討する旨のコメントも見掛けた。

さて、このベンチャー企業や出資といえばつい最近は日証協が今月下旬から導入を目指している新たな規制案が思い浮かぶ。すなわち有価証券の引き受けに関する協会規則に「上場前に個人投資家に自己株式を販売した企業については、原則として新規上場の引き受けを禁止する」という項目を追加しようというもの。 始めこれを日経紙で見掛けた時はなんとも短絡的だなと思っていたら、果たしてかな上場企業トップ始め各界の識者などから可也の反対票を集めた模様だ。

当の日証協では、この目的の一部でもある未公開株問題等を以って個人に消費者センターなどが「日証協の規則でこうした行為は禁じられている」と説明できるようになれば抑制力になる。としているが、この適用除外項目にしても曖昧で水際にて「この例外規定があるから問題ない」と言われてしまえば全く意味を為さないのではないか。

本来の健全なマネーまで逃げ出してしまうという愚策?では、先のドイツ空売り規制で唐突にこれを打ち出したメルケル首相が金融界から顰蹙を買った一件が思い出されるが、まあ、これに比べれば日証協は自主規制団体とはいえ全証券会社が加入しているのを考えれば再考が求められようか。


ディスクロ透明化

さて、今週は3月期決算企業の株主総会がピークを迎えた。集中日としては一昨日であったが、分散化が進んだ結果昨年よりも234社少なく1,087社が開催。週初には株主数では国内最多となった第一生命も初体験、そこそこ手厳しい洗礼を受けた。

今迄と毛色が違う点としては今年から1億円以上の報酬をもらった役員の氏名や金額を有価証券報告書に記載することが義務付けられ、総会でも明らかにするかどうかが焦点になっていたが、この辺は諸外国とは勝手が違うだけになんともいえない。

また、同時に義務付けられた議決権行使結果の開示もある意味おもしろい。可決でもその中身まで晒されるのだから、本来の安定株主を除いた一般の部分の圧力も無視出来ない可也の効果はあろうか。

ところで思うのは、斯様に形態が変わっても例年送られてくる株主総会の通知だけは形式通りで変化に乏しい。かつてのような委任状争奪戦なども無く、シャンシャンと言われた時代から総会屋や外資系ファンド勢もすっかりおとなしくなり、漸く総会が本来の透明性を増しても今度は本来の個人株主が行動を起こす事例が増えまた新たな緊張感が芽生える。まだまだこんな総会通知一つ取っても改善すべき点は多いのではないだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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