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中小の悲哀と似非アナリスト

前々からこの手は云われていた事であったが、昨日金融庁は証券業界中堅のコスモ証券に対して、組織的に手数料稼ぎの為に不適切な勧誘で投信の回転売買を繰り返したとして金商法違反で業務改善命令を出している。

営業本部長の旗振りの下、営業員ごとに日々の販売残高や手数料収入の高い目標を設定、異なる顧客にブル型とベア型をそれぞれプッシュし頻繁な乗り換えを組織的に繰り返していた。コトの内容はザッとこんな感じだが、一昔前だったらまったく通常の或る日の一光景にすぎなかったものが随分とマトモになったなと改めて時代を感じる。

証券や商品先物業界においてもこんな営業本部長のような商いで昇格してきた一部の輩が、今では借りてきたような真面目ヅラでアナリスト等と名乗って随所でコメントなんぞを載せたりするようになった今日でも、同時にこうした化石のような営業形態が未だに業界では横行しているというのも事実で、こんな営業が無くなる日ははたして来るのだろうか?

そんな背景には昨今の市場低迷で売上確保が難しくなった部分があるとの指摘も一部にあるが、大手であれば先月も当欄で書いたように、それこそこんな中堅証券一年分の稼ぎを一発で弾き出せるプライマリービジネスでガッツリ稼ぐという手段があるが、それにとても食い込めず東証の上場くらいしか先行きの希望も無い一部企業のなんとも悲哀を感じるこのケースはいろいろと考えさせられる。


前厄にはいるTOPIX

本日の日経平均は買いが盛り上がらずも辛うじて3日続伸、TOPIXも連れて続伸となっていたが、さて平均はともかくこのTOPIX、先週末まで実に12営業日連続安となっていた。しかし考えてみればこの指数も算出と公表が始まってから今年ではや40年にもなる。

男でいえば来年は前厄?こちらも人間よろしく養生しないと徐々に体にガタが出てくる時期などというのは勿論冗談だが、タイミングよくこの12日連続安というのは前回の1992年3月(これまた前厄に近い)以来の過去最悪に並ぶ記録で、実に17年ぶりのこと。

思えばバブルに浮かれた89年なんぞは2900近くあったのが懐かしいかぎりだが、要所要所で機関投資家などにも運用を競う際のベンチマークとされたり、近年ではデリバティブの幅も広がって来ている。

そんなTOPIXであるが、東京証券取引所は来年6月をメドにこのTOPIXの先物をロンドン国際金融先物オプション取引所に上場することで同取引所の運営会社であるNYSEユーロネクストと基本合意したと先に報道があった。昨日は海外株連動のETFが活況な旨を書いたが、その裏で人気の陰りがいわれている日本株、さてこの先物では現物との裁定が絡んでくるがこの進出が吉と出るか凶と出るか今後の相場もまた見ものである。


益々広がる選択肢

本日の日経紙一面にはインド政府が発表した7-9月期のGDPが前年同期比で7.9%増加した旨が載っていた。4-6月期の同6.1%増を大幅に上回り堅調な内需に加え低迷が続いていた輸出も底入れしつつあり、政府内では今年度の成長率見通しの上方修正を示唆する声も出ていると同紙では謳っている。

インドといえば先に中央銀行がIMFから大量の保有金を購入したことでも話題になっていたが、そんな折にちょうど先週には野村アセットが設定したインドナショナル証券取引所に上場する代表的50銘柄で構成する「インドNIFTY指数」に連動するETFが東京証券取引所に始めて上場の運びになっている。

初日は基準価格の上回る100円ドタで引けたが上昇率は約4.1%、昨年7月に上場したブラジルETFの初日の上昇率約2.6%を上回る勢いであったのも、上記の通り高い成長が期待されるインド経済への関心の高まりが表れた結果でもあろうか。

何れにしても大証上場のロシアも含めて、これで所謂「BRICs」全てのETFが日本の株式市場に揃った格好になるが、ETFの多様化で選択肢も急速に広がりつつある。このようなBRICsの経済成長からコモディティー需要も当然拡大してくるわけだが、そのコモディティーにしてもリンクする投信やらETFも何度か当欄で触れたように拡大の一途。本当により身近になり便利な時代になったものだが、同時にこれらは世代交代も後押しするであろうし今後は数字が全てを物語ることになろうか。


NT倍率と構造

本日の日経マーケット面には米国株にリンクしなくなった日経平均の重さが指摘されていたが、この辺は日曜版一面にもマネー、日本素通りとして日本株の勢いの無さが目立つとその様子が載っていた。これは何度の指摘しているように、根底にある増資ラッシュの影響も大きいだろう。実に今年のそれはバブル崩壊後最高であった06年を既に大きく上回り、5兆円規模に膨らむ可能性もあるという。

ちょっと前にも当欄にて、「ファイナンスの必要性がそれほど急務という認識もなく、需要はさておき取れる時に出来るだけ掻き集めてしまおうという風潮も一部に感じられる」と書いたが、月曜の企業面にも「日本は今増資ラッシュだがはっきりしないのは資金の使い道だ」とこちらも同様に不透明感を謳っている。

またかねてからNT倍率の拡大も指摘されているが9年ぶりの高水準である11倍台が2ヶ月続いているのも不気味、結局これもTOPIX系金融の増資による希薄化の嫌気と、その対の先週特に顕著だったような一部大手証券の225採用銘柄のレーティングアップ銘柄が沈滞市場の中を散発高していたような構図によるところも大きいだろう。

斯様に構造というかその中身を見ると冒頭の通り勢いの無さも頷けるか。TOPIXと225の相関係数の動き含めて今後両者が何れに鞘寄せしてくるかであるが、それでも民主党圧勝の8月末から政権の舵取りもまた自然に織り込んでいる点は一応機能していると評価すべきであろうか。


双方に旨み?

本日は上値重いながら小幅続伸となった日経平均であるが、週末に各紙で報道された大型増資組のNECは小幅安、一方でT&Dはザラバで小幅高となっていた。この材料も今迄NECは織込み済み、T&Dは半年で再増資という事で発表後は両者に爬行色が出ていたが、これも一旦カバーが入った格好になったか。

但し後者の場合は一般的に考えられる銀行などと比較してしまうと、ファイナンスの必要性がそれほど急務な業界という認識はなかった部分もあり、そういった件がネガティブに捉えられた面も大きいか。このファイナンスものでネガティブ視された銘柄といえば本日の市場で目立ったのは曙ブレーキでこれが急落、公募増資で約3割近くの希薄化となるだけにそこまでのファイナンスリスクは織り込んでなかった模様である。

しかし一ヶ月前くらいに追随型増資ラッシュと記した通りで、今月に入ってもこうして続々とファイナンスが続いている。上記のT&D等もそうした範疇になるのか穿った見方をすれば、何かこう市場環境を睨みながら需要はさて置き取れる時に出来るだけ掻き集めてしまおうという風潮も一部に感じられるが気のせいか。

ただ過日も大手一角の連中と話していたのだが、曰くプライマリーマーケットはやはり旨みがあると。こうなると発行体が乗り気なのか引き受け側が乗り気なのかという論になってくるが、その何れにしても自己都合を優先しているうちにマーケットも需給悪化から疲弊してゆくパターンになった場合は結局自分の首を絞めることになるのではないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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