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NT倍率と構造

本日の日経マーケット面には米国株にリンクしなくなった日経平均の重さが指摘されていたが、この辺は日曜版一面にもマネー、日本素通りとして日本株の勢いの無さが目立つとその様子が載っていた。これは何度の指摘しているように、根底にある増資ラッシュの影響も大きいだろう。実に今年のそれはバブル崩壊後最高であった06年を既に大きく上回り、5兆円規模に膨らむ可能性もあるという。

ちょっと前にも当欄にて、「ファイナンスの必要性がそれほど急務という認識もなく、需要はさておき取れる時に出来るだけ掻き集めてしまおうという風潮も一部に感じられる」と書いたが、月曜の企業面にも「日本は今増資ラッシュだがはっきりしないのは資金の使い道だ」とこちらも同様に不透明感を謳っている。

またかねてからNT倍率の拡大も指摘されているが9年ぶりの高水準である11倍台が2ヶ月続いているのも不気味、結局これもTOPIX系金融の増資による希薄化の嫌気と、その対の先週特に顕著だったような一部大手証券の225採用銘柄のレーティングアップ銘柄が沈滞市場の中を散発高していたような構図によるところも大きいだろう。

斯様に構造というかその中身を見ると冒頭の通り勢いの無さも頷けるか。TOPIXと225の相関係数の動き含めて今後両者が何れに鞘寄せしてくるかであるが、それでも民主党圧勝の8月末から政権の舵取りもまた自然に織り込んでいる点は一応機能していると評価すべきであろうか。


双方に旨み?

本日は上値重いながら小幅続伸となった日経平均であるが、週末に各紙で報道された大型増資組のNECは小幅安、一方でT&Dはザラバで小幅高となっていた。この材料も今迄NECは織込み済み、T&Dは半年で再増資という事で発表後は両者に爬行色が出ていたが、これも一旦カバーが入った格好になったか。

但し後者の場合は一般的に考えられる銀行などと比較してしまうと、ファイナンスの必要性がそれほど急務な業界という認識はなかった部分もあり、そういった件がネガティブに捉えられた面も大きいか。このファイナンスものでネガティブ視された銘柄といえば本日の市場で目立ったのは曙ブレーキでこれが急落、公募増資で約3割近くの希薄化となるだけにそこまでのファイナンスリスクは織り込んでなかった模様である。

しかし一ヶ月前くらいに追随型増資ラッシュと記した通りで、今月に入ってもこうして続々とファイナンスが続いている。上記のT&D等もそうした範疇になるのか穿った見方をすれば、何かこう市場環境を睨みながら需要はさて置き取れる時に出来るだけ掻き集めてしまおうという風潮も一部に感じられるが気のせいか。

ただ過日も大手一角の連中と話していたのだが、曰くプライマリーマーケットはやはり旨みがあると。こうなると発行体が乗り気なのか引き受け側が乗り気なのかという論になってくるが、その何れにしても自己都合を優先しているうちにマーケットも需給悪化から疲弊してゆくパターンになった場合は結局自分の首を絞めることになるのではないか。


市場撤退前の一稼ぎ

今月に入って一万円の大台を割ってなお冴えない本日の日経平均であったが、そんな中で本日軒並み大幅な減収を発表したにも係わらずストップ高となっていたのは消費者金融株群、ご存知政府の規制緩和報道を囃して二日新甫の日経平均暴落の中でもやはりストップ高の異彩を放っていたが、過度の業績悪化不安で叩かれていただけにこの政府の姿勢軟化で一斉にカバーが入った格好になったか。

まあ上場していれば途中にこんな株価の高下で一喜一憂場面もあるだろうが、今週はその裏で同じ過払い金の請求圧力から風前の灯であった事業者金融のロプロが遂にパンクし上場廃止へと向かう。今は一寸見ない間に社名がコロコロ変る傾向にあるがこれは昔の日栄、売買停止迄の商いがまたも怪しいがSFCGと共に事業者金融のある意味で双璧といわれたこの二社とも消える事になったのはやはり時代の流れか。

上記の通りこの手は業界の情勢に応じ株価も乱高下し易いポストだが、乱高下といえば今週はまた自社株を仕手グループと共謀して操作したとしてユニオンHDの社長が株価操作疑惑を掛けられている旨の報道があった。

最近は本当に数年前に手掛けられた件がポツポツと表面化しているが、不思議と規模の大きそうなモノはなかなか挙がってこない。昔から社債なんぞに絡んで仕手と結託する会社もあったように記憶するが市場から消えればお蔵入りか。既に破綻してしまったこうした業界の中にもどう見ても外資等と出来レースをにおわせるケース在り、なぜ問題化しないのか不思議でもある。


創業板

さて、一昨日は冒頭ハロウィーンに一寸触れたが、このハロウィーンイベント以上に盛り上がりを見せたのが30日からスタートした中国の深セン証券取引所に設けた新興市場向け市場「創業板」か。

公募当選率が平均で0.8%といったプラチナチケットであった事でやはりというか初日は急騰から全銘柄が一時売買停止措置、一部の公募価格3倍を始めとして上場28銘柄の上昇率が70%を超えたというからなんとも景気のいいご祝儀相場である。余談だがご祝儀相場といえば、新規商品上場初日になんでもメデタイ買いがお約束となっていた一昔前の商品先物市場も今では懐かしさを感じる。

さて、ブルームバーグで見掛けた記事にはあるアナリストが「中国の株式市場は新しいものなら何でも追い求める習性がある」と語っていたが、「山高ければ谷深し」もまた然りで果たしてというか二日目は急落し、この28銘柄のうち20銘柄がストップ安まで沈む憂き目に遭っている。

この上海証券取引所は来年にも「国際板」なるものを創設する意向だが、その現物に傾斜した取引選択肢の無さに加えて特異な市場参加者まで構造的な問題の改善など所謂標準市場になるまで課題は山積みに見える。既にこの国は間違いなく重要指標に位置付けられているが、失礼ながらこんな発展途上のマーケットが指標になって世界が振り回されているのには些か違和感を覚える。


小物から大物まで

昨日は元社員がインサイダー取引を行った事に対する措置でガブドットコム証券に対して日本証券業協会が過怠金2,000万円を課す処分を発表していたが、他にも直近では当時から確信犯と喧伝されていたオリエンタル白石に関しても、うっかりメールから社員連中がインサイダーやり放題であった件も判明するなど彼方此方でこの手が挙げられている。

このオリエンタル白石などどう見ても怪しかったので覚えているが、約定分布累計など見ていると寄付からイケイケで売りに行った向きと、慎重に裏?を取ってから売りに行った向き等分かれていて面白い商いであったが、自社がつぶれてしまうのを前にせめてこれを利用して退職金代わりに小銭を稼ごうとする光景は昔のヤオハンや山一證券破綻の時も当然あった。

商品業界なんぞも破綻や行政処分ありでそういったネタにも事欠かないが、やはり絶対はないといわれる相場の世界で破綻モノは株価下落というのは概ね絶対なだけに逆日歩を除けばそのリスクのなさから誘惑に乗る向きは多いが、総じてメジャーな物ほどいまだ表面化しないなど意図的なものを感じるケースが多い。

ところでインサイダーといえば社員の小遣い稼ぎではなく、もっと規模の大きいものでは先週末に米ヘッジファンド大手のガリオン・グループ創設者他数名が米司法当局にインサイダー容疑で起訴されている。その不正利益とされるのも16兆円以上とサプライズな数字だが、スケールが大きいだけにその成り行きが注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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