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IPO一転

本日はグロース市場にサークレイスが新規上場となったが、旬な業種のうえ市場からの吸収金額の軽量感も囃され買い気配のまま初日の取引を終えた。IPOといえば一昨日の日経紙総合面には「新規上場急ブレーキ」と題し、金融引き締めやウクライナ危機で株式市場が混乱した事などを背景に昨年のIPOブームから一転して、今年1月から3月で世界のIPOのうち128社が中止となり過去20年で最多となった旨が出ていた。

特に米での減少が目立つが、日本でも同期間に7社が上場を中止しこの期間のIPOは15社と8年ぶりの低水準となった格好だ。特にネット銀行で初の上場案件という事で注目されていた、先月24日に東証一部上場予定であった住信SBIネット銀行はその想定時価総額が約3000億円にのぼる大型案件であった。

冒頭のサークレイスは公開価格の2.3倍まで買い気配を切り上げるロケットスタートとなったが、これまで上場したうち約3割の初値が公開価格を下回っているのが現状。バリュエーション水準も切り下がり想定していた資金調達難から今年のIPO数は下方修正が濃厚ともいわれるが、売買主体が欧米のような機関投資家とは異なる構図の日本ではその手段も限られるのが悩ましいところで資金供給する道筋の広がりなど今後の課題となるか。


自社株買い模様

月初の日曜日の日経紙1面には「自社株買い7割増」と題し、上場企業が2021年度に取締役会で決議した自社株の買い入れ枠が累計で8兆円超えとなり前年度に比べて68%ほど増えた旨の記事が出ていたが、この辺に絡んでは先月もトヨタ自動車が発行済み株式の0.58%にあたる8000万株、1000億円を上限とした自社株買いを決議していたのが思い出され同社としてはここ1年で3回目の発表となる。

自社株買いといえば米でも先月は6日に複合企業大手GEが取締役会で最大30億ドルの自社株買いを承認、続いて9日にはアマゾン・ドット・コムが最大100億ドルの自社株買いを株式分割と共に承認、また半導体製造装置大手アプライド・マテリアルズも11日、新たに60億ドルの自社株買いを承認するなど大手企業が続々と自社株買いを加速している。

米ゴールドマン・サックスによれば上記の通り年明けから2月末までにS&P500種の採用企業発表の自社株買いが21年1~3月から3割増加、堅調な企業のキャッシュフローをテコに今年の自社株買いは過去最高になる可能性があるというが、本邦勢もコロナ禍の影響もあって2020年度は3.9兆円ほどにとどまっていたものが、冒頭の通りの復調急でリーマン・ショック後の最高だったコロナ禍前の2019年度を上回っている。

斯様に手持ちの現預金が多くROEが低い企業などコーポレートガバナンスを背景に自社株買いに動き易い素地があるものの、一方で岸田総理が自社株買い規制を巡る発言で物議を醸し出したのが記憶に新しいほか、米でも2023会計年度の予算教書には新たな自社株買い規制案が出ておりこの辺の警戒感が足枷にならないかという懸念もあるが引き続きその動向には注目しておきたい。


影のキーマン

本日の日経平均は米金融政策を改めて警戒し運用リスクを避ける動きから、グロースはじめとする幅広い銘柄に売りが出て3営業日ぶりに急反落の動きとなった。そんな中で一際目立っていたのがコスモエネルギーHDで寄り付きから買い気配で推移し約13%の値上がりで一気に年初来高値を更新している。

この背景には本日の日経紙一面にも出ていた通り、昨日に提出された大量保有報告書で旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンズが共同保有者とあわせて5.81%の株式を取得し大株主に躍り出た事がある。これまではUAEの政府系ファンドが大株主であったが3月に全株売却で入れ替わり実質的な筆頭株主になった事になる。

ところでコスモエネルギーHDといえば言わずもがな石油大手の一角だが、元売り業界と村上氏といえばかつての出光興産と昭和シェルの経営統合において泥沼化していた出光経営陣と創業家側の対立緩和に一役買った存在なのは有名な話。奇しくもこのシティインデックスイレブンズは現在富士石油の大株主にもなっているだけに、新たな業界再編への思惑も浮上しており今後の両者の行方には目が離せない。


60年ぶりの市場再編

周知の通り本日は東京証券取引所の再編により誕生した「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の三つの市場での取引初日であった。ネット証券の取引画面も「東証P」や「東証S」等に表記が変わっていたが、結局日経平均は4日ぶりに反発となったものの1日のボラは今年最少を記録、その売買高も1~2月の1日あたり平均から2割程度低い低調スタートとなった。

予てより上場企業の絞り込みに期待をかけていた投資家勢とは裏腹に、基準未達でもプライムに噛り付いていたい企業勢の意を汲んだような骨抜き市場再編とも揶揄されてきた今回の措置だが、この辺は金融審議会でも挙がった投資対象としての機能性と市場代表制を備えた指数が存在しないとした問題点にも絡んで来る。

現在機関投資家の多くがベンチマークとしてきたTOPIXは東証一部全てを対象としているがここ10年で約3割増加と企業数が多すぎる状態は否めなく、同じベンチマークでも米のS&P500等と比較するにその水膨れ感が際立つ。日経紙には日々TOPIXはじめROEなどの基準をもとに銘柄選定したJPX400等が掲載されているが並べてみるとこの10年でもそのパフォーマンスは何れもほぼ差が無い。

今回の再編で東証一部が消えTOPIXも今年後半からは時価総額の小さい企業は順次段階的に外されてゆくというものの、その比率は1%程度とあまり意味が無く日本を代表するマーケットを表すベンチマークとして如何なものかという課題は残る。ただ玉石混合?の経過措置企業の中でも真剣に企業価値向上に目覚めた向きもあり、こうした向きの増加は日本株のパフォーマンスを劇的に改善させる起爆剤にもなり得、将来的にはMSCI等に相当するような” 使える”指数が出てくる可能性にも期待したいところ。


米の分割熱

米テスラは一昨日に2022年内に株式分割を実施する計画を表明している。2年ぶりの分割発表だが、前回1株を5株に分割すると発表した際にこの発表月の末までその株価は実に約8割もの急騰を演じその後3年足らすで株価は実に3倍にも化けた経緯があり、その連想からかこの日も発表直後にこれを好感し株価は約9%の上昇を演じていた。

米大手の株式分割といえば直近ではアマゾンも9日に1株を20株に分割すると発表しており、同社の株式分割は実に23年ぶりのこと。また、グーグルのアルファベットも先月に1株を20株に分割する計画を発表しているが、アマゾンは加えて自社株買いの限度額を現行から2倍に引き上げる事も併せて発表しており株主重視姿勢を鮮明にしている。

確かに小口の個人投資家などからしてみれば株式分割により対象企業が大幅に買い易くなるだけに、経営陣が株主フレンドリーなスタンスを有しているという証左にもなる。株式分割で企業の市場価値が変るワケではないものの、ローコストで株式価値を高める手法の一つとして改めて評価される動きが広がれば今後更に分割熱が高まる可能性があるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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