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決着でココロも満タンに?

さて、株主総会シーズンから当欄では度々取り上げてきたコスモエネルギーHDだが、岩谷産業が投資会社シティインデックスイレブンズなど旧村上ファンド側から保有する同社株のほぼ全てを取得したことが先週に報じられた。これまで更なる買い増し意向を示していた旧村上ファンドだが、今回の件に伴いこれが取り下げられる事となった。

同ファンド関係はコスモ株を1000万株超まで集めた昨年の段階で投入コストが300億円超といわれ、直近ではそこから更に8割弱まで買い進めていることを考慮すれば約600億円弱の投入で雑な胸算用だが今回の売却では約500億円前後の利益というところか。いずれにせよ百戦錬磨のファンドだけに買い増しの構えを見せつつもイグジットの期を虎視眈々と狙っていたというところだろう。

これで昨年の春から続いた両社の戦い?は1年半での幕引きとなった。MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)まで持ち出し対立してきた両社だが、はれて水素分野で協業する岩谷産業が安定株主となり脱炭素時代に打って出られる体制が一歩進んだ。これも一つの再編劇といえるかというところだが、今後も再編絡みでこうしたケースが出てくるのは想像に難くないか。


テロと金融市場

本日の日経紙グローバル市場面には「ハマス攻撃前空売り急増」と題して、10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃する数日前に、主要イスラエル株で構成するMSCIイスラエルETFやテルアビブ証取に上場しているイスラエル大手行のレウミ銀行などの個別株に空売りが膨らんでいたとの疑惑が持ち上がっている旨の記事があった。

これで真っ先に思い出されるのがあの世界を震撼させた9.11米同時多発テロ事件の際の金融市場か。真相は闇の中だがイスラム原理主義を掲げるテロ組織アルカイダの関係者およびグループが、テロと前後して大手航空会社や大手保険会社の空売りやプットオプションで巨額の利益を上げたとする話だ。

同じ利益でもサブプライムローンの破綻を予測して巨額の利益を得たジョン・ポールソン氏や、ERMの限界を見越したポンド売りで巨額の利益を手にしたジョージ・ソロス氏等は多くの投資家に神扱いされるが、金融市場は入って来るマネーの色や人物は見分けようもないものの同じ巨額の利益でも相場の読みとは無縁な上記とは天と地である。


鷲のマークもMBO 

本日で今月も終わりになるが、今月の株式市場ではとりわけMBO実施が目立った印象だ。当欄では先々週にシダックスとベネッセホールディングスの2社の相次ぐMBOを取り上げていたが、先週末には大正製薬がMBO実施を発表している。ベネッセの時に国内MBOでは最大規模としたが、その規模を軽く倍以上超えて日本企業のMBOでは最大規模となる。

その買い付け価格もなかなかの高プレミアムとあってこれにサヤ寄せする格好で週明けからわずか3営業日で先週末終値から約6割もの急騰を演じ、これまで高値掴みで我慢してきた一部株主へは最後のささやかなプレゼントとなったか?ただ高プレミアムになったのも当然なところで、そもそもがMBO発表時で同社株のPBRは0.5倍台と低迷しておりこの急騰で6割高を演じた本日でも0.8倍台に甘んじている。

同社は市場再編で自らスタンダード市場を選択していたが、上記の株価指標と併せ今後の長期的な経営計画に伴う時間とリスクの前に株主の全面的支持を得るのは困難との判断によるものがこの度のMBOの背景にあるか。ベネッセも構造改革の長期化を見据え非上場化を選択したパターンだったが、あの「鷲のマーク」が株式市場から自ら退出するさまはやや驚きだ。

というよりむしろOTC市場においてブランドが浸透しているからこその退場かもしれないか。誰もが一目瞭然の鷲のマークが広く知れ渡っている今、上場継続のその対費用効果が見合わないという事なのかも。いずれにせよ今月の立て続けの大物?の非公開化決断を見るに株式市場の新陳代謝が本格化してきた感が窺える。


最大規模のMBO

昨年の秋口に買収を巡り乱戦模様を演じ当欄でも取り上げたことのある給食運営のシダックスだが、先週末に食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが同社を子会社化する旨が発表されている。一時は当のシダックス側からTOB反対表明が出るなどゴタついたが、同社がMBOで株式を非公開化した後に第三者割当増資を引き受ける格好での決着となった。

ところでMBOといえばもう一つ、日を同じくして通信教育最大手のベネッセホールディングスもMBOを実施すると発表している。国内MBOでは最大規模でヨーロッパの投資ファンドと組んでSPCがTOBを実施、その完了後に創業家も出資する格好になるが本日はそのTOB価格にサヤ寄せする形でベネッセHDは比例配分のストップ高で引けている。

このベネッセ、日本マクドナルドのトップが鳴り物入りでCEOに就任したものの個人情報漏洩問題発覚で早々に退場したのが記憶に新しいが、近年は少子化という逆風には抗えず構造改革の長期化を見据え非上場化を選択したケースか。先の東証の市場再編前からこれも背景にMBOは増加傾向にあったものだが、その後出された資本コスト等を意識した経営実現要請も効いている。

上場継続の意義を問うところのMBO増加だが、当初は全く代り映えがしないと失望の声が大きかった東証の市場再編も段階的に選別が進み上記の東証要請もアクティビストにとっては追い風になっている。斯様に東証と歩調を合わせ大きくなって来た彼らの影響力も背景に今後も市場の新陳代謝が加速してくるか。


是非を諮る

さて、今年の株主総会シーズンに当欄が取り上げた企業の一つにアクティビストの買い増しに備えた買収防衛策発動の是非を諮ったコスモエネルギーHDがあったが、同社は一昨日に筆頭株主の村上氏側に対抗すべく買収防衛策を発動するために12月に臨時株主総会を開催すると発表している。これで村上氏らを相手に買収防衛策を総会議案にするのは二度目である。

ちなみに前回の買収防衛策決議ではMOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)を採用したが、今回は村上氏側が趣旨説明書を提出している事などを勘案し普通議決となっている。前回で仮に村上氏側も入れた普通議決だったら賛成比率は約46%にとどまり、村上氏側が反対票を投じていれば賛成票が過半数に届かず否決となる票差であっただけに今回の行方に関心が向かう。

しかし村上氏といえば今週月曜日の「資本の歪み」にも書いた通りかつてのフジテレビジョンとニッポン放送の「親子関係資本のねじれ」を狙い再編を果敢に仕掛けた経緯があるが、この石油業界でもかつて出光興産と昭和シェルの経営統合において泥沼化した出光経営陣と創業家側の間に入り対立緩和に一役買った存在でもある。

他に富士石油株の筆頭株主になっていた経緯もありこの石油業界再編にも思い入れがある様子だがこの富士石油などPBRは本日で0.3倍台、コスモエネルギーHDも村上氏らの保有が刺激となり8月には増配発表、中期経営計画では総還元性向目標60%以上とENEOSや出光を上回るものを出しているがなおPBRは1倍割れの状態にある。東証の改善要請も背景に先週書いたドラッグストア業界同様にこの石油業界の今後の動向にも注目だ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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