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マル信手仕舞い期

先週末の日経紙マーケット面には「マザーズ急落 高値警戒」と題し、このところ個人の信用買いが集中していたIPO銘柄やITサービス関連株の高値警戒感から利益確定目的の売りが加速、先週末のマザーズ指数が7ヵ月強ぶりの大きさの下げ幅で急落した旨が出ていたが、週明けも4日続落となりおよそ1ヵ月ぶりの安値を付けていた。

マザーズ指数といえば当欄でもその時価総額が東証二部を初めて上回り、年初来騰落率でも日経平均やジャスダックのマイナスに対して21%高と明暗を分けていた旨など何度か取り上げていたが、それだけにまた谷も深しで先物など先週末は途中でサーキットブレーカーを交えながらの急落を演じていた。

個別で急落を先導したモノでは当欄で安値から13倍にも大化けを演じた事で何度も取り上げたEC関連の本命BASEや、公開価格に対して5.7倍のロケットスタートで初値を形成したニューラルポケット、新政権の目玉政策でストップ高交え年初来高値更新していたHENNGE等々成る程コロナ禍の中で成長期待を囃され手垢の付いたモノが多い。

ちょうど今の時期はコロナショックでマザーズ指数が安値水準を付けたあたりから半年が経過し、マル信で仕込んだ向きは手仕舞い時期にもあたる事もこれら増長した部分もあるが、その信用倍率も今月中旬時点で300倍超えであったというから然もありなん。とはいえ環境に変化が無いだけにゴールドよろしく売り一巡後は再度同ポストに物色の波が訪れる事になろうか。


止めるに止められず10年

日銀が金融緩和の一環としてETF(上場投資信託)の購入を決めてからはや10年になるが先週の日経紙・オピニオンには「日銀ETF購入10年の功罪」と題し、欧米の主要中銀は手掛けていないこの異形の金融政策の功罪について大手シンクタンクや元米財務次官など有識者がそれぞれの見解を述べていた。

今月に入ってからは1回あたりの購入としては新型コロナ感染拡大前と同程度に落ち着いてはいるものの、今年はこのコロナの感染拡大で3月にその購入額を年6兆円から12兆円に増額、1回の購入額も最大で2004億円まで増やした影響も出て中旬に発表されている累計では6兆2141億円と、従来の最高であった18年の6兆2100億円を既に上回っている。

ETF買い入れの額がここまで増加するとは開始当初は予想だにしなかったが、国債とは性格を異にし満期が無い分買えば積み上がるワケで今や日本最大の株主見通し論まで出るなかこれに付随する様々な副作用が議論の対象に挙がり、コーポレートガバナンスの重要性が謳われる一方これと逆行する政策の特異性が際立つ。

今週の金融政策決定会合においても日銀は引き続き現行の大規模緩和策を維持し新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した一連の政策対応も維持する方針を示すと見られているが、当欄で毎回書いている通りアフターコロナも睨んで出口戦略の具体的な在り方もいよいよ議論されてくるのか否かこの辺も気になるところ。


空箱の是非

昨日はSBG株が米ハイテクセクターのコール大量保有の思惑に絡んで踏み雑じりの7300円まで買われ前週13日に付けた年初来高値ツラの展開となっていたが、同社といえば特別買収目的会社(SPAC)の設立計画について早ければ年内にも数百億円規模で米市場に上場させる見通しであることが報じられている。

このSPACなるもの上場時には事業実態の無い所謂「空箱」だが、未公開企業を見つけて買収し底を存続会社として上場させるもので上場までの期間や手続きを短縮し最短ルートを提供出来る点が魅力だ。米では80年頃からこの手法自体はあったが、例えば今年の7〜9月のIPOによる市場からの調達額のうち半分をSPACが占めるなどここ急増している。

同紙では著名アクティビストがSPAC上場で40億ドルを集めたと書いてあったが、これも当初は30億ドルであったものが応募殺到で切り上がった模様。出資者利益が買収成否に関らず担保される事で斯様な人気だが、間接上場を果たす事で裏上場とのイメージも付き纏うもののコロナ禍で逆風に見舞われた向きも同手法から起死回生の芽もある事などからIPO市場の下支えとしての地位を確立しつつあるか。


日本市場に商機

さて、先週末の日経紙投資情報面には「物言う株主の要求最多」と題して、所謂アクティビストが公にした日本企業への取締役の受け入れや株主還元の強化など新規の提案や要求の件数が、9月末時点で22件と既に昨年の19件を上回り年間ベースの過去最多を上回るなど増加している旨の記事があった。

この辺に絡んでは本日も東京ドームが香港の投資ファンドから社長ら取締役3人の解任を求める通知を受け取った旨が報じられていたが、主戦場の米市場に次ぐのが日本市場となっておりガバナンス改革推進で株主要求の通り易さが以前とは異なる上に、往って来いまで戻っていない株価も商機?と見て同頁にも書いてあったような自社株買い要求に並びガバナンス絡みの提案も増えている模様。

この辺はやはり日本企業の特徴として内部留保の厚さや企業統治改善の伸びしろが大きいところが背景にあるといえるが、株主と企業の攻防もかつて総会屋が蔓延っていたシャンシャン総会の時代とは全く違う意味で今後も激化してくるのは想像に難くなくこの辺の景色も隔世の感を禁じ得ない。


新甫の失態

当欄で東証のアローヘッドが始動した旨を書いたのは今から10年前のことであったが、周知の通り先週はそのシステムに障害が発生し全銘柄の売買停止に追い込まれる事態となった。全銘柄の売買停止は2005年11月にもあったが、その時は後場に取引が再開されており終日の売買停止というのはシステム化以降初めての事態である。

親亀コケたら皆コケるで同システムを利用している名古屋など地方取引所もこの影響をモロに受け終日売買停止の憂き目に遭っていた。辛うじて先物は動いていたもののPTSでは渦中のJPXやシステムを請け負った富士通が売り物を浴びていたが、これとて東証が稼働していない状況ではリクイディティー確保も覚束無く実質機能していなかったと言っても過言ではないだろう。

1日新甫というタイミングで幅広い投資家が影響を受けたが、現在東証は海外投資が半数以上を占めており彼らは政治混迷と並びこうした事態を最も嫌がる。3年前に国際金融都市構想が策定され、発足した菅新政権も肝いりのデジタル庁創設などを明言していた矢先だっただけに何ともという感じだが、取引所の一極集中という形態の脆さも露呈した格好で市場分散論もまた台頭しようか。

いずれにせよ資本市場のインフラの根幹を成す市場が数兆円にも及ぶ売買機会を逸する由々しき事態は東京市場の信頼失墜には十分とも言え、政府としても市場取引の脆弱性やリスクに応分な対応が求められようがこの早急な課題に各所で今後どういった対策が為されてゆくのか注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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