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プライム目指し奔走

昨日はアクティビストが対話を求める銘柄に幅広い向きから投資資金が流入している旨を書いたが、もう一つ思惑買いが広がっているモノに東証の市場再編をにらみ東証一部に代わるプライム市場への昇格が有力視される中小型株などの銘柄に駆け込み的な需要が集まっている旨も1週間前の日経紙に出ていた。

周知の通り新市場はこれまでの一部、二部それに新興市場のマザーズ、ジャスダックの4市場を22年4月にプライム、スタンダード、グロースの3市場へと再編するワケだが、先月末で新市場区分への移行基準日を迎え4月から6月の終値平均に基づいた流通株式時価総額などから東証が各市場への適合状況を企業に通知する運びとなる。

ところで最上位のプライムは流通株式時価総額が現行の10倍、2年間の利益も現行の5倍など大幅に厳格化され、現状を鑑みるに約3割の企業がこの基準に満たないとされる。そんな訳で投資マネー誘致を狙う各社は基準達成に向け既に水面下で奔走している格好だが、取引所間の国際競争を睨みこの改革が奏功するかどうか先ずはこの辺の行方を見守りたいところ。


ETFの存在感

さて、本日の日経平均は米早期利上げの可能性が台頭した事などを背景にザラバではその下げ幅が1000円を超える大幅続落となったが、そんな中で米のVIX指数が警戒ラインといわれる20を約1か月ぶりに上回って来た事を背景に本日の値上がり率10傑には2位のVIX短期先物指数や9位の日経平均VI先物指数がランクインしていた。

また下落幅も上記の通り2月26日以来の大きさとなった事で、日経平均やTOPIXにJPX400系などのダブルインバース型やベア2倍型なども商いを集めていた。これらは言わずもがなETFのラインナップだが、先週末の日経紙・グローバル市場では「ETF残高世界で1000兆円」と題し5月末時点で世界のETF残高が4月末比2.8%増加し初めて9兆ドルを超えた旨が出ていた。

国内でも5月末時点で公募株式投信の残高が過去最高を更新しておりうち4割はETFが占めるなどその存在感が増している様子だが、一時1000円を超えた大幅安ですっかり鳴りを潜めていた日銀も本日は4月以来約2か月ぶりにETFを701億円購入しているなどこの辺も規模膨張に大きく影響しているのは間違いのないところ。

いずれにしても売買の機動性が高いうえ冒頭のようなVIXやVIなど一昔前には叶わなかったモノへ投資出来る枝葉が広がって来たのは感慨深く、金融緩和で膨張するホットマネーの受け皿として今後も対象資産の値上がりと共に資金流入も応分の伸びが継続されるのは想像に難くないか。


改定で見直し機運

本日の日経紙マーケット面には「物言う株主、親子上場標的」と題し、今月に改定されたコーポレート・ガバナンス・コードが上場子会社に高い統治体制を求めており、保有する小会社に比べ市場での評価が低い親会社はアクティビストの標的になり易いなど株式市場で親子上場銘柄への関心が高まっている旨の記事が載っていた。

ここでは冒頭で小会社の協和キリンが親会社のキリンHDの時価総額を抜いた件が挙げられていたほか同社を含め小会社が医薬メーカーの例が幾つか挙げられていたが、当欄でも先月にこの件を取り上げておりこれら以外でも特に時価総額が親会社パソナグループの5倍超にもなるベネフィットワンなどを挙げていた。

他にも時価総額が親会社ノーリツ鋼機の3倍超にもなるJMDCなど日経紙の一覧に載っていた以外でも挙げれば幾つも出て来るが、確かに親会社の営業利益に占める割合が3割を超えるなど子会社を完全子会社にするメリットが大きいという観点などからはこの一覧に載っていた大日本住友製薬など候補に上がってこようか。

前回は現実味に乏しいものの極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定と成り得るとも書いたが、既にアクティビストによる保有が粛々と進行している企業もありこの度のコーポレート・ガバナンス・コード改定は下鞘に甘んじている企業に改めて説明が求められる契機にもなろうか。


To the moon

さて、今年2月にはSNSで連携した個人の共闘買いからひと月で約20倍にまで大化けしたゲームストップ株が米証券ロビンフッドまで巻き込んでいろいろとマーケットをザワつかせたが、先週は映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングスが同様な共闘買いで乱高下し、上記のゲームストップ株も蒸し返しの動きで約2か月半ぶりの高値まで再度急騰したのが話題になっていた。

なにせ今月に入ってから1日は23%高、その翌日2日に至ってはサーキットブレイカー発動を交え再開後もなお急騰を続け終値は95%高と暴騰し上場来の高値を更新、この日だけでも倍増だがかれこれ年初来ではおよそ30倍もの大化けを演じている。この株高に乗じて最大で1155万株を売り出す増資計画の発表で3日はさすがに一服となったが、1日の売買代金があのテスラをも凌ぐ日があるなど熱狂冷めやらぬといった感だ。

上記のようなこの手の銘柄は米個人投資家の間では、何所までも値上がりする意を込めるTo the Moonの合言葉と共にMemestock(ミームストック)なる新語で扱われている模様だが、暗号資産が下落し足元でダウ工業株30種平均も史上最高値まで指呼の間と迫っているものの小動きの展開が続き短期のホットマネーは虎視眈々と次のミーム銘柄を狙っている。

日本のイナゴ勢?とは違って最近の彼らはオプション市場も利用してディープアウトを買い上げたりプットでヘッジしたりとデリバティブを駆使しているだけに自ずとVIXなどへの影響力も高まって来るが、これが顕著になればひいては全体へ及ぼす影響度も高くなってくる可能性もあるだけにこの辺も注視しておきたいところか。


競争力強化の鍵

昨日の日経紙総合面には「東証、取引時間の延長検討」と題し、東証が仕事帰りの取引機会が増える個人投資家や、時差がある海外投資家の利便性を高めると同時に東証の国際競争力も挙げる狙いから現物株取引で夕方や夜間取引を軸に取引時間の延長を見据え証券会社などと調整を進める旨の記事が載っていた。

後場の時間延長や昼休みの廃止も含めた延長の具体策を練るとの事だが、この昼休み廃止論は今から11年前にも議論された件で、当時の当欄でも「欧米主要取引所は昼休みを設けないのが主流でグローバルな流れからもそういった機運になってきたか。」と書いていた。侃々諤々の末に辛うじて30分の短縮が叶ったが果たして今回は如何に。

そういえば昼休み撤廃論が出た当時は前引け・後場寄りのギャップを狙ってスキャルピングを狙う向きも多数居たものだったがHFT業者が蔓延る現在では随分と光景も変わっている。また当時はコストの問題もあって時間延長が対面メインの中小証券等の反対に遭った経緯があったが時代の流れで当時とは状況も異なってきている。

場が立っていない時間の材料を受けた取引は海外やPTSへという流れだが、PTSは米国の取引量に占める割合が約30%なのに対して日本では双璧の2社合計でも7〜8%程度と振るわない。私設取引も課題を抱え試行錯誤が継続しているが、何れにせよ取引システムの刷新が予定される2024年を睨み大幅な見直しが具現化する否か注目されるところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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