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IPO史上初

さて、今週の株式市場で話題となったのは、やはり今年これまでで最大の注目IPOとされた人工知能開発のHEROZの初値形成だったか。上場したのは先週末であったがそれから2日間気配値のみで値が付かず、上場3日目の後場にして漸く寄ったが驚きだったのはその初値倍率で、実に公開価格の10.9倍とIPO史上初の出来事となった。

同社が開発した将棋ソフトAIの(ポナンザ)が昨年電王戦で対局、それが世界で初めて名人に勝利した事から個人の注目度合も抜群に高かった事で、これまでの初値倍率で最高だったちょうどバブル期だった99年の10月に上場したエムティーアイの9.09倍という最高記録を19年ぶりに更新する事になった。

こんな幻の初値形成のあとは実に200倍を超えるPBR や、PERに至っては700倍超えと見た事も無いような過熱感や、ロックアップ解除も意識され2日連続のストップ安から本日もストップ寸前まで暴落となり、初値形成からわずか3日であわや半値という水準まで沈んだもののそれでもなお公開価格の6倍以上であるから凄まじい。

AIに対する未曾有の期待感がかつてのドットコムバブルを超えるパフォーマンスを演出したとも言えるが、ここまでの派手さは例外としても今年は新年度を挟んで初値が公開価格の2倍以上になるIPOが連続しておりその投資家層にも変化の兆しがいわれている。投資家層の広がりで初値天井傾向等も含めこの辺も変化がみられるのかどうか今後のIPOと併せ注目してゆきたい。


発掘作業

さて、先週末の日経紙投資情報面には年末の経営統合で上場廃止となるアルパインが香港の投資ファンド、オアシス・マネジメント・カンパニーから2018年3月期の期末配当として1株325円を支払う事や社外取締役2人の選任を求める事などの株主提案を受け取った旨が載っていた。

同社がもともと期末配当として予定している金額は1株15円だが、予定額を20倍以上も超える配当要求が最終的に通るか否かは別としてこの手の予定額の10倍以上にものぼる大幅な配当金引き上げに追い込まれた?パターンとしてやはり記憶にあるのは、2003年にスティール・パートナーズからTOBをかけられた当時2部であったソトーとユシロ化学か。

ソトーはそれまでの年間13円の配当を15倍以上の200円に、またユシロ化学もそれまでの年間14円の配当を14倍以上の200円に其々引き上げている。思えば当時は極端な話解散してもなお時価を大幅に上回る分配が出来たような不当な低評価で放置されていたケースがごろごろ発掘出来たものだが、当時からアクティビストの質がガラリと変わり掘り尽くしたかのように見える市場で今なお冒頭のケースのように飽くなき対象の発掘は続いている。


地合いの好機

さて、昨日まで続伸で200日移動平均線まで戻した日経平均だが、本日は3月期末の配当落ち分の影響もあり急反落、昨日はこの配当権利付き最終売買日で配当関連の需要も多く買わなければならなかった上昇だったが其の需要が剥げたここからが正念場か。

ところでこの配当と共に企業が稼いだ利益を株主に還元する手段として自社株買いがあるが、先月に始まった世界的株価下落で買いの好機と見た企業が自社株買いの枠を設定する動きが顕著化し、日本は2017年度に2年ぶりの高水準となり米国も減税策を背景に18年の実施額が前年比2割増程度になる見通しと先週末の日経紙に出ていた。

今月上旬にはコーポレートガバナンス・コードを促す政府の思惑とも一致し海外からのアクティビストが一層関心を向ける事が予測される旨を書いたが、狙われやすい低ROEの企業など自社株買いや増配などで不要資本を如何に減らすかが課題となっており地合いも臨機応変に利用する好機と捉える傾向になって来たか。


株主提案急増

さて、昨日の日経紙投資情報面には「3月総会、増える対決型」と題し、12月期企業の株主総会が本格化するのを前にスチュワードシップ・コード改定を背景に株主提案が前年の2社・4件から18件・5社に増え、議案数は3月総会で過去最高になりそうとなるなど株主と経営陣が対立する事例が相次いでいる旨が書かれてあった。

同紙には片倉やGMOインターなどへ提案するオアシスや、帝国繊維へ提案するスパークス等が挙げられていたが、他にもAVIによるTBSHDへの持ち合い株解消提案や、村上ファンド系による最近TOB価格引き上げを引き出した東栄リーファライン、昨年一転して会社側の反対を抑えファンドが推す社外取締役の提案の承認にこぎ着けた黒田電気など実績も伴ってきている。

この黒田電気の株主提案など8年ぶりに叶ったワケだが、背景には過去の破天荒な提案から他株主にも整合性を持たせた合理的提案で賛成を引き出す格好に変ってきた事もある。本日の株式市場では積極的な自社株買いの発表を出した企業が比例配分でストップ高となっていたが、以前にも書いたように今後は海外からアクティビストが流入してくる事が想定され対象にされそうな企業は一段と緊張感が高まることになるか。


海外アクティビスト台頭

さて、昨日の日経紙総合面には「日本企業に投資へ」と題し、運用総額150億ドルを誇る米大手アクティビストファンドのバリューアクト・キャピタルが日本企業への投資を始める旨が載っていたが、背景には米株式の割高感が強まっている事で日本株に対する関心が高まっているという。

アクティビストといえば当欄でも度々触れてきているが、この米勢力で昨年目立ったところといえばアサツーDKに米ベインキャピタルが登場し、同じく日立国際電気のTOB劇には米エリオット・マネジメントが登場しTOB価格の引き上げ要求と揺さぶりをかけたのは記憶に新しいところ。

果たしてこのエリオット・マネジメントは価格の引き上がったところでTOBに応じるイグジットを成功させ、アサツーDKも株価がTOB価格の上鞘で推移していた事で株価引き上げ云々より票が集まるか否かが焦点となっていたものの、蓋を開けてみれば発行済の9割近くの応募があり事はベインの思惑通りに進むこととなった。

勿論こうした裏には綿密なる調査と戦略が奏功したという背景があるが、コーポレート・ガバナンスを促す政府の思惑とも合致し一昔前とは様変わりな好環境のなか、こうした成功事例も背景に冒頭の通りファンド勢としては応分の関心がますます高まるものと思われる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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