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資本回収

さて、昨日の日経紙マーケット面には「自社株買いで縮む市場」と題し、19年に自社株買いを発表した後の企業の株価は東証株価指数を5〜6%上回り、18年の約2倍となっているという旨のシティグループ証券の調査が出ていたが、18年度の自社株取得額はピークの15年度を凌いで最高になるのがほぼ確実との旨が載っていた。

自社株買いといえばここ最近では昨年夏の東芝が実施した実に7000億円にのぼる自社株買いが記憶に新しいところだが、ココやほぼ同額実施のトヨタや日本郵政などの例は極端だとしても数年前のダブルコードの適用も背景にROEが意識され上記の通り何所も自社株買いの動きがより活発化してきている。

とはいえROEばかりが意識されるあまりに、企業利益が設備投資やら研究・開発まで十分回らないままこれらに振り向けられているパターンも依然として目に付くところ。この頁にも記してあった通り気になるのはその後の成長で、生産性が低下し低成長の原因になっているのは本末転倒というところだろう。


緩さの匙加減

本日の日経紙金融取材メモでは「SGX、緩いルールで衰退」と題して、SGX(シンガポール取引所)の新興企業向け市場「カタリスト」の上場ルールが緩い為に本市場で上場維持が危ぶまれる企業の受け皿になっている旨のシンガポール国立大学准教授と学生に因る連名リポートが話題になっている旨が書かれていた。

こうした問題が出てくると思い出すのが、数年前に本邦の新興市場でヤリ玉に挙げられたエナリスや京王ズなどの問題発覚企業群などから「上場ゴール」なる言葉が流行り出した件か。これを機に審査厳格化や業者兎の多彩化等で襟を正す機運になりこんな造語も影を潜めているが、これに対しSGXの役員は同市場の制度見直しに消極的姿勢を崩していない。

そんな背景には同じアジア圏でライバルの香港取引所等へのIPO企業流出懸念がある。世界の取引所ブランド価値でも躍進した香港は普通株と議決権が異なる種類株を発行する企業や、バイオベンチャー上場を積極的に認める柔軟な姿勢から昨年1〜9月のIPOに伴う調達額は前年同期の2.7倍にあたる3.4兆円と世界1位になっている経緯がある。

世界的なカネ余りから敢えて上場の選択をしなくとも資金調達が容易に可能となってきている昨今、企業の立場が優位になって来たという環境の変化もよりこうした誘致合戦の素地を形成しているが、骨抜き誘致とならぬよう適切に企業価値を評価出る審査体制や投資家保護などやはり課題だろうか。


新形態対応

本日の日経平均は反落となったが、その一因にもなったのが東証マザーズ市場の総崩れか。周知の通り昨日から同市場でダントツの時価総額を誇っていたサンバイオが、新薬開発で地検結果が主要項目を達成出来なかったとの発表で急落した影響で他の創薬ベンチャーも総崩れ、先物は昨日引け後に続いて前場にサーキット・ブレーカーが発動された。

またメルカリやミクシィなどの超高寄与度にまで波及した事でマザーズ指数は取引時間中として15日以来となる900割れまで崩れたが、同指数先物のサーキット・ブレーカーが発動されたのは前回が昨年2月のVIXショック時であるから、改めて新興モノに集中した信用絡みの個人マネーの巻き戻しの怖さを見た感じである。

ところでサーキット・ブレーカーといえば、HFT業者など新たな投資家の存在感が高まっている事に対応し東証は連続的約定気配を見直した制度を年末にも導入する方向だ。同時に大引時売買の成立値幅拡大も検討しているというが、上記の時価総額偏重や急増するHFT業者の台頭等々それに対する対策も都度要求されるマーケットになってきた感がする。


安値引けの船出

昨日末尾で、「とりわけ明日のソフトバンクはいろいろな意味で注目されるところである。」と書いたシフトバンクが本日はれて上場となった。兎に角マーケットからの吸収額は約2兆6400億円と過去最大IPOであったが、その注目の初値は公開価格1500円を2.5%下回る1,463円となり引けは14.5%下回る1,282円とある程度予想されていたとはいえ低調なスターとなった。

しかし今回のケースはまさに災難というかファンドでタッグを組んだサウジの皇太子も例の事件で国際的なザワつきに遭うという悪地合いのところに、大量に機器を導入しているファーウェイ社の副会長逮捕、時を同じく挙げ句には大規模な通信障害がブックビルディングを挟んで勃発とまさに逆風下でのIPOとなった。

そういった意味ではこれでも初値はなかなか健闘したともいえるが、この寄り値で異様な纏まった指値が這わされていた背景もいわれ主幹事絡めいろいろな思惑も出ていた。ともあれただでさえ親子上場の批判が燻るなか今後はこれを踏まえた高水準のガバナンス体制と併せ成長シナリオをどう描いて行くか、この辺が投資家の裾野を広げる意味でも焦点となってこようか。


IPO2018

本日の日経平均は景気減速懸念が強まり急反落となったが、そんな中でマザーズに新規上場となったテクノデータサイエンス・エンジニアリングは公開価格の3200円を98.4%上回る6350円で初値を付けた後も高値引けと好調なスタートとなった。一方でジャスダックに新規上場となった田中建設工業は公開価格を7.1%上回る初値形成後に一転して売り物となり引けは公開価格を下回った。

マザーズ、ジャスダック両市場共に3日続落となるなか明暗分かれた格好になったが、IPOといえば本日の日経紙総合面には「株式公開活況91社に」と題し、今年の国内市場のIPOは活況が続き上場企業数が91社と過去10年で2番目の多さとなってその資金調達額は約2100億円と前年の2.3倍に拡大する旨が出ていた。

反面一頃は上場ゴールなる言葉も流行った時期があったが、今年既に上場した78社のうち8割弱にあたる60社の株価が実質ベースで初値比マイナスと冴えない展開になっている。知名度がダントツのメルカリも今日は上場来安値を付けはや株価はそろそろ三分の一というところだが何れにしてもこれで年内の上場予定は残り11社、とりわけ明日のソフトバンクはいろいろな意味で注目されるところである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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