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広がる選別色

昨日の日経経紙一面には「上場企業の3割増配」と題して2015年3月期の株式配当が2連連続で最高を更新する見通しとなり、増配または復配する企業が全体の3割に達した旨が出ていた。この辺の背景には近年のROE重視姿勢からの資本効率を高める狙いもあり、利益を配当として支払えばROEの分母に当たる自己資本の増加を抑えられる効果も見据えてのもの。

さてそんな感じで囃されている高ROE銘柄でも、当初はしりの頃の万遍なく物色する光景から最近は明暗が分かれてきている。この辺は先週末の日経紙にも載っていた通り、1年余りで株価が2倍になる銘柄がある一方で、3分の1に下がった銘柄も出てきており期待先行モノほどこの辺がより顕著に株価に反映され易くなっている。

下位にはゲーム関連も幾つか顔を出していたが、これまで度々下剋上の時価総額逆転劇で老舗企業をしのいだこの課金系もそろそろ息切れが目立つ。昨年に当欄でも「結果としての時価総額」としてゲーム系を取り上げた時に、ピーク時から半分以下まで急減したガンホー等も睨みながら市場は先行きを占っているようだと書いたことがあるが、このポストも期待先行で囃す相場は終わった感がある。


鉄火場祭り

本日の日経平均は米株式の急反発にもかかわらず債券先物急落を嫌気して大幅続落、そんな地合いの中で全市場総合で値上がり率・出来高共に第一位となったのは昨日挙げたスカイマーク株で、昨日同様に1億株以上の出来高を集め50%以上の値上がりとなっていた。

とはいえこの株、パンクして整理銘柄に指定され昨日東証が値幅制限ルールを撤廃した為に一気に30円台にまで暴落して寄り付いており、まさに値幅というより率で勝負の所謂祭り銘柄。本日も昨日の16円安値から前場は2倍以上となる32円まで化けるなど相変わらず祭りに参加するホットマネーは健在である。

しかし昨日ストップ高で買い物を残したオンキョーやsantecなど本日は揃って値下がりランキング4位と5位に顔を出すなど資金の逃げ足は速く、この辺は逆に腰を据えた物色対象難というのを浮き彫りしている。本日も一部のディフェンシブ系が年初来高値を更新しているあたりもこれと併せ一寸不気味なところでもある。


実質還流

本日の日経紙投資情報面には「キャノン、金庫株3割へ」と題して、潤沢な手元資金をもとに自社株買いを続け、2020年をメドに発行済み株式に占める自社株(金庫株)の比率を現在の18%から30%まで引き上げROE(自己資本利益率)など資本効率の改善を狙うキャノンの例が載っていた。

同社のような自社株買いに増配というパターンを見ていていつも連想するのが米のコカコーラなのだが、NISAに好まれそうな一般ウケする高配当を出しつつもこうした金庫株から実質は手元資金が還流してくることになり、これがまた増配などの原資になっている背景というカラクリがある。

そんなワケで昨年末にも一寸触れたように実に26年間もの間増配を続けているというのは主力の他社には見られない現象で一際異彩を放つ。高ROEといえば最近ではこの手に買い疲れが出て同業種の別銘柄への乗り換えが進んでいる模様も一部指摘されてはいるが、金庫株を使った経営政策は今後もさまざまな角度から検討されてこようか。


かろりーな

年末の株式市場は例年のことながら低位の仕手系が賑わうものだが、年があけてもこの手の中には更に勢いを増している物もある。例えば昨日発行済株式数以上の出来高をこなした池上通信やこれまた大商いしたプロスペクトなどがそうであるが、後者は現社名より一寸以前のかろりーなと言った方が腕に覚えのある向きにはピンと来るか。

このプロスペクトは昨年12月にはあっという間に株価倍増したが、その後に同社が業界の豊商事をTOBするとの報が流れ大納会も間近に迫った26日の値上がり率ランキングでは第一位にプロスペクト、そして第二位に豊商事と揃って並んだ。ちなみにこの日6位だったウォーターDもストップ高を演じていたが、これも光通信子会社が同社株を1株650円でTOBするという事で鞘寄せしたもの。

ところで豊商事といえばアエリアとの業務提携も絡んでここが筆頭株主であったが、その経緯から現況ではこれに変って資本提携先のあかつきF・Gになっている。またプロスペクト子会社はこのあかつきF・Gの株式8%超を保有し、またあかつきF・Gもかつてはプロスペクトの株式を保有していた経緯がある。

このTOBで数々の買収を手掛けてきたプロスペクトは経営多角化を推進し金融商品取引業への参入を目指すというが、これに先立ち両社は協議を行っていないという。この辺がまた思惑台頭というところだが、本日の豊商事は年初来高値を更新し既に公表されたTOB価格を上回ってきているあたりがこれをより一層増幅させており、今後どういった展開になってくるのか関係者ならずとも注目されるところ。


IPOラッシュ

さて、今月のIPO社数は28社と月間ベースでは06年12月以来8年ぶりの高水準となっているが、特に今週16日には今年最多となる5社が上場している。注目の初値は5社のうち日経朝刊に大きな全面広告を出していたSFPを除いた4社の初値が公募・売り出し価格(公開価格)を大きく上回っての上場となった。

しかし直近IPOの業務内容も大型鍼灸接骨院、病院経営支援ソフト、テント販売、アサイーの販売から法律相談サイトまで本当に変わり種?が増えてきた感がある。この法律相談サイトなど司法試験改革で弁護士が急増したマーケットに商機を見出しているところが面白く、かつて急増した歯科医マーケットに目を付けたところを彷彿させる。

原油急落をはじめとした環境悪化で株式市場が調整色を強める中、外部環境の影響を受けにくいこともあってIPOはホットマネーが流入し易いが浮気性だけあって離散も殊の外早い。昨日は前日上場のMDVが朝方急反落で始まるもあと切り返し急反発となるも後場はストップ安まで叩かれ、昨日上場のフルッタフルッタは公開価格の52%高で初値を付けた後にやはりストップ安まで沈んだ。

一頃のように抽選モレでも初値で飛びついてストップの波に乗れるという具合にコトが運ばない辺りがやはり需給と地合いに逆らえないところでもあり、今後は成長力などが吟味されての選別で明暗も出て来ようが、先ずは年内ギリギリまで続く残りのIPOが注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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