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MBO考

今週は週初の日経紙に、「取締役の株主軽視に警鐘」と題しシャルレがちょうどあのリーマンショックの頃に実施したMBOの頓挫で会社に損害を与えたとして株主が当時の取締役に賠償を求めていた件で、神戸地裁が初めて当時の取締役の賠償責任を認める判決を出した旨が載っていた。

MBOといえば近年では先に再上場したすかいらーくや同じ外食の焼肉の牛角を擁するレックスHD、芸能関係ではホリプロや吉本興業、ワインのエノテカやレンタル屋のCCCから引っ越しのアートコーポレーションまで名の通っていた上場企業が一昨年あたりはMBOによって市場から姿を消すパターンが急増した記憶がよみがえる。(そういえば業界のユニコムもMBOで上場廃止の選択をしたなと。)

上記のシャルレは経営陣と一般株主とで価格を巡る思惑があまりにも違った事が問題だったが、このパターンでは出版の幻冬舎もTOB期間に突如として3割もの株式をおさえたケイマン籍のファンドがそれを盾に異議を唱えた件が記憶に新しい。こんな揺さぶりからワインのエノテカのように香りにつられてインサイダ−取引に手を出し摘発された小物まで何かとMBOの舞台裏ではドラマがあった。

この訴訟で問われたのはあまりに株主利益を軽視した取締役の行為という点だが、これらふまえ来年施行予定の改正会社法では取締役には少数株主に配慮して取引内容を承認する等新たな手続きが課されることになる。先には日本版スチュワードシップコードなる行動指針が投資家に導入されつつあるが、株主側に立った行動原則も近年徐々に変わりつつある。


還元機運

本日の日経平均は、市場予想に反してマイナス成長となった7-9月期GDPを受けて16,973.80円と前週末比500円以上の急反落となり5日ぶりの大幅反落で取引を終了した。日経平均へ寄与度の高い銘柄はもとよりほとんどの銘柄が売られていたが、一方でこんな日でも年初来高値を更新している銘柄もあった。

富士フィルムホールディングス等がそれだったが、この辺は日銀のサプライズな金融緩和第二弾で総上げとなった銘柄群とは違い持続的な上昇が特徴となっている。これは先週の日経紙にも「電撃緩和より株主配分」と題してキーエンスやヤマトホールディングス等と共に同銘柄も上がっており、このヤマトホールディングスもやはりこの悪地合下で年初来高値を更新している。

この株主配分、上記の富士フィルムは今年度から配当と自社株買いを通じ2,000億円強を株主に還元と発表しているが同実施期間の純利益が3,000億円見当とされているから約70%程度を株主に戻す計算となる。株主還元といえば先にサプライズな100%還元を発表したアマダがあったが、直近ではインテリア大手のサンゲツが3年で純利益の100%以上を配当や自社株買いで還元すると発表しておりまさに挙ってという感がある。

この一連の動きの先にはやはりROEという一つのテーマがちらつき上記もサンゲツなどのそれは東証平均の半分程度という現状の問題を抱えている。何度も挙げてきたJPX日経インデックス400の登場が如何に企業を刺激し資本効率の向上を意識させているかだが、来週には同指数も先物の上場を控え今後もますますこうした動きが広がるのは想像に難くない。


乱高下で人気

本日の日経紙マーケット面には「値幅2倍 ETF売買最高」と題して、相場が9月下旬の高値から大きく変動する中、個人や海外投資家が短期の値幅取り狙いの売買を積極化させ値動きが株価指数の2倍になるレバレッジ型ETFの商いが膨らんでいる旨が載っていた。

今月の月間売買代金では「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」が過去最高を記録と載っていたが、昨年の夏場も日経平均が乱高下を繰り返していた時のETF売買代金が上半期で前年同期比4.3倍に上っていた事が思い出され、斯様に数年前に登場して以降このNEXTシリーズは常に上位にランキングされている。

当初はその構造上長期保有にも向かずマル信未満といった中途半端?なレバでここまで売買代金を集めるとは想像もしなかったが、貸借モノも増加し短期筋中心にけっこう需要があったということになる。そんな事からアジア圏で売買が最多に膨らんでいる模様だが、こうした背景にはこの手のレバレッジ型の寄与が大きく関係しており選好性を測る上で今後も注目されよう。


リクルート好発進

さて今年後半の大型案件のうち、先に取り上げたすかいらーくが再上場を果たした次ということで先週にはリクルートがはれて上場となった。ご存じの通り生活のあらゆるシーンに入り込む巨大メディカンパニーで知名度は抜群、久し振りの大型IPOであった。

先のすかいらーくは公開価格がブックビルディング下限で決まっていたのとは対照的に、こちらの公募価格はブックビルディング上限で決定していたこともあって、世界の主要株式が暴落する中を初値が公開価格を上回る白星スタートから、更に引けでは3,330円と値を伸ばし初日の時価総額は東証一部で43番目に位置する事となった。

思い起こせばあのリクルート事件からダイエーグループ傘下になった時期もあったが今やそのダイエーもイオン傘下となり年末には市場から姿を消す予定。その過程であった負の遺産が、好調な滑り出しをきった上場初日の時価総額とほぼ同じというのも何かを感じさせる。

ところで本日も株価は大幅続伸となりその時価総額も並み居る老舗企業を連日抜いてきているが、以前に当欄で書いたようにココは持株会が10%を超え第一興商の時よろしく古株社員の中にもニワカ成金?が出てくるのも想像に難くない。何れにせよそういったところも含め今後もベンチャー企業の元祖といわれた同社の動向が株価と共にまだまだ話題になろう。


10月のアノマリー

本日の日経平均は急反落し5/30以来約4ヶ月半ぶりの安値水準となったが、それにしても今週は世界的に崩落が顕著になったものだ。米国の金融緩和終了後の不透明感を背景に昨晩のNY市場も一時460ドル安と急落だが、欧州も先駆していたドイツなど今週ZEW(欧州経済研究センター)が発表した独景況感期待指数が前月から更に低下、12年11以来の水準に落ち込みDAXも同様に暴落の憂き目に遭っている。

既に先週からモルガンの225とTOPIX双方への一手売りが先物で目立っていたが、グローバルマクロ系のヘッジファンドなどやはり相場が動く時には果敢に攻め続ける。一部に運用成績低迷も目立つ折、「もうはまだなり」とばかりに執拗にショートの回転を効かす地合いになっている。

そんな背景もあって恐怖指数と呼ばれるS&P500種の今後1ヶ月の変動予測を数値化したVIX指数は先週末に前日から2ポイント超上昇して約8ヶ月ぶりに21台に乗せ、これを受けた連休明けの東証VIXETFは比例配分のストップ高とこの種にしては非常に珍しい光景も見られた。

ダウやS&P500種はこれまで割れる度に切り返してきた200日移動平均線を割り込み、後者は過去3日間の下げが2011年以来で最大となった。上記のVIXもVXVとの比率では1.0割れ水準になり総悲観の感も強いが、果たして数年来の上昇相場も終焉となってしまうのかどうか今後も目の離せない展開になってきた。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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