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引き下げ競争再燃か

さて、最近は株式関係のメールでも通常のニュース配信に混じって新たな手数料コースの告知と共に「業界最低水準」の文字が目立つようになってきたが、斯様に何れも今月末から来月初旬にかけて手数料の引き下げに動く模様である。

こんな波は2011年の年初にも報道されるなど数年おきの波のように思えるが、その前の2009年なんぞは1週間の間に計6回もの引き下げ発表が為され、更にその前の2006年なども他社発表日と同日に引き下げ発表が為される合戦が繰り広げられていた経緯があり、思えば牛丼やら家具やらジーンズ等の値下げ競争よりも歴史?は深い。

しかし数年前なら兎も角も当時から比べ今では市場環境も可也違ってきている。証券会社によってはマル信の建玉残高が増えたらとか、投信保有額が多くなったらとかの条件モノもありこんなのは僅かなポイント欲しさに欲しくもないものを金額合せで買うような構図にも似ていないか?

これらここ一連の規制緩和の副産物としてマル信の金利系から来た波だが、週初など2ヶ月ぶりの薄商いを記録するなどこんな市場低迷下でまたもあくなき消耗戦の勃発策。先の日経紙には別のネット大手社長の意見が出ていたが、そこには手数料の安さを競うネット証券ビジネスはもう終わりだとの意見が謳ってあったが果て何れが正解になるのか。


心理系も変化

本日の日経平均はさすがに反落し先週からの連騰記録は途絶えることとなったが、それでも米株式の243.36ドル安の急落を考慮すれば後場は一時プラス圏に浮上する場面があるなど売り方に回っている向きには些か気味の悪い異様な強さを見せている。

この辺は週明けも先週末の米株式が205.43ドル安となっていたにも関わらず週明けの日経平均が続伸となったあたりにも現れているが、本日の日経紙「チャート&データ」にはクレディ・スイスが世界の株式や債券の動きを基に算出する「リスク選好指数」が、直近で4/18以来6ヶ月ぶりの水準まで上昇するなど投資家のリスク許容度が改善している旨も出ていた。

VIXやオプション、VIなど外部環境の3極追加金融緩和もあって一頃は不気味な低水準が続いていたが、これらも含めて近年はリスクオフなどのスタイルがあのリーマンショック時とはまた違ってきているのではないだろうか?最近はヘッジファンドも苦戦と聞くが、レバの低下でこれら指数の反映度もまた違ったものになっているのではとも思うし、この辺を頭に置いて今後の心理系を見てゆきたいところ。


売りの啓蒙

さて、今週の日経ヴェリタスの一面には「売り を究める」とのタイトルとなっている。近年の低迷極める株式市場で「買い」以上に「売り」のあらゆる戦略が重要になってきていることを利食いやヘッジ売り等交えて書いてあったが、昨今漸くこの手の題目が踊るようになってきたなという感じ。

そういえば今月の上旬であったか日経夕刊の「ウォール街ラウンドアップ」には、空売り王とされるグリーンライト・キャピタル率いるディビッド・アイホーン氏の数々の実績が書いてあったが、一方で日本では売りで取った事例の記事といえばインサイダー絡みとか、若しくは踏み上げに遭えば天井知らずで損失無限大といったネガティブな報道ばかりでマトモな戦歴?が紹介されているのは見たためしが無い。

コモディティーを一寸触った向きはショートに対する抵抗は然程感じない場合が多いが、まだ場立ちが居た頃の証券マンなど新規で売りの注文なんぞ取ってくると支店長に烈火のごとく叱られるシーンも多く相場の上手い奴ほどこれで衝突して辞めていった輩は多く、現状でもやはりエントリーはロング一辺倒でショートに関しては一般的にイメージが悪い。

今月の「投資の日」にちなんで諸外国に比べて著しく低迷している本邦市場の現状を幾度か取り上げたが、その土壌もさることながら投資家サイドもまた金融リテラシーの低さは他に比べて否めないところで、特に上記の「売り」に関してはツナギでさえ知らない向きも多くここ数年のインフラの劇的な変化に比べ驚くほどこの分野は旧態依然といった感じである。環境変遷と共にこの辺も今後啓蒙が進んでゆくのかどうか気になるところではある。


回復の鍵

昨日はコスト削減の動きから本邦では重複上場解消が進行している旨を書いたが、株式といえばその取引自体が世界で減少している旨を昨日の日経紙一面では載せており、2012年7-9月の売買代金は約7年ぶりの低水準に落ち込んでいるという。3極の追加金融緩和政策で市場への資金供給は増えているものの、その中身はさっぱりといったところか。

しかしそれでも米国のDOWなどほぼリーマン・ショック前の5年前の水準まで回復を見せており、独や英などもそれを追うような戻りの軌跡を歩んでいるのに対し、方や本邦はこれらと比べるに5年前の半値ほどの水準であり、個別でも主力株で数十年ぶりの安値が続出している有様とその凋落ぶりが鮮明である。

上記の通り世界中で売買代金落ち込みなど不振を極めているという器の間でも、斯様に日本からは株式然り投信然りマネーの流出が著しい空洞化?現象ではこの先が思いやられるというものだが、「投資の日」にも書いたように関係当局がどの程度この辺の環境というか事態を深刻に捉えているかが焦点だろう。

インサイダー取引問題一つ取っても野村證券が実質過去最高額の過怠金云々が喧伝されていたが、過怠金規定上限の5億円を下回る水準としたことには証券会社自身によるインサイダー取引ではないという認識が昨日の日証協の記者会見で言われており、この辺は同協会がこの取引に関わった社員を外務員資格の剥奪も検討としているあたりにも窺える。

ちょうど一週間前には総じて金融業界は顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いとも書いたが、この手の魔女狩り的見せしめで封印してしまうのもまたこの業界の特徴で協会も上記のようにある意味同調している部分等この先自浄されてゆくのだろうか?こうして挙げると幾つでも出てくるが、土壌という部分でこの辺は今後も注目して見て行きたいところ。


地方への皺寄せ

昨日の日経紙夕刊一面には、企業間で複数の証券取引所に株式を上場させる「重複上場」を解消する動きが加速してきた旨が載っていた。本年度はこれまでに昨年度の29社を3割強上回る39社が新興市場を含めた取引所の重複上場解消を決めたというが、大きなところばかりが記憶にあったので改めて数字を見ると随分と多いものだなといった印象である。

この重複上場については当欄でも2年前に触れたことがあったが、その当時は1999年に1,042社あった重複上場が昨年には773社に減少した旨を書いていたが、その辺の動きが依然として加速しているという構図か。主因としてはやはり上場維持コストという問題になってくるがこの辺はMBOもまた然りといったところであろうか。

さてそうなると地方取引所も一段と厳しい状況になってくるが、好景気のときならいざ知らずこんな時世ではこうした流れは当然か。そういえば余談ながら業界でもMBOを実施したところあり、また地方市場とメインマーケットでトコロ相場を演じた経緯のある企業もあるが、この辺もゆくゆくは一本化の動きへ纏めてくるのかどうか注目したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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