攻めのバランス
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さて定期的に起きる広告モノの炎上騒ぎだが、今月もひと騒動が起きた。スイスの時計メーカー、スウォッチでモデルが目尻を両手で引き上げている画像を使った広告がそれで、これに対し同社が謝罪し全世界で関連素材を取り下げたもの。同社は収益の約3割を中国(香港・マカオ)から得ているというが、最近の不況や米関税騒動も加わりその株価も16年ぶりの安値に沈んできているなかでの騒動勃発だ。
ところで中国絡みで問題になるのはイタリア勢が多い覚えがある。中国向けに流した広告で中国系モデルが箸でイタリア料理を食べる様が馬鹿にしていると炎上、たった数時間でECサイトから製品が引き上げられ上海での大規模ファッションショーも中止され巨大マーケットを失った「ドルチェ&ガッバーナ」など記憶に新しいが、その1年後には「ヴェルサーチ」がTシャツデザインを巡って炎上、アンバサダーを務めていた中国系女優がモデルの契約解除を申し出ている。
このヴェルサーチの炎上と同じようなパターンでは、一昨年には「ブルガリ」が海外のウェブサイトで台湾を中国からの独立国のように扱っていると炎上してしまった件もあったなと。今回の冒頭の騒動でも早速スウォッチ製品のボイコットを求める声が広がったというが、伝統的?に中国の消費者は自分達の文化を侮辱されたり国益を脅かされたりしたと感じた際には不買運動を実施する傾向が強い。
こうした騒動があるたびに政府と国民が一体化し連動している踏み絵のような市場という事を思い知らされるが、そういえば今月は米アパレルのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズのジーンズ広告も炎上騒ぎを起こしている。どれもこれもひと昔前なら“Cool!”の賞賛で片付いていた一寸攻めた広告も今や直ぐに炎上、不買運動に発展する何かこう世知辛い世の中になったとも感じるがこれも時代なのだろう。