157ページ目   雑記

シルクの伸びしろ

さて今週は週明けの株式市場で免疫生物研究所が急騰する場面があったが、この辺の背景として同社に関しては先週末の日経紙に「カイコ使いHIV薬前進」と題し、遺伝子組み換えカイコから作った抗HIV抗体医薬品の実用化に向け研究開発を加速する旨が報じられている。

繭からは品質が安定した抗体を容易に生産出来るところがポイントというが、遺伝子組み換えカイコの可能性に関しては今からちょうど4年前の当欄で紫外線を当てると光る特性のある他の遺伝子を組み込んだシルクを取り上げ、化粧品から外科手術の縫合糸はじめ再生医療までメディカル分野で伸びしろが大きい旨を書いた事があった。

思えばかつては世界を席巻した養蚕業、先物市場でも前橋乾繭や横浜生糸が上場し数々の記憶に残る名シーンを演出した事もあったが現在その姿は無い。一方で富岡製糸場など日本の近代化遺産で初の世界遺産登録が叶ったが、すっかり新興国に押されてきた産業も斯様な分野からこれと併せ再度注目を集める日が来る事を期待したいところ。


ノルマの亡霊

本日の日経紙には「かんぽ不正、信頼逆手に」と題し、かんぽ生命保険社員が故意に保険料を二重徴収した疑いが発覚したりするなどの保険業法に抵触する恐れのある不正販売の広がりが止まらない旨が出ており、その背景には収益源である金融事業が維持コストの大きい郵便事業を支えるという特異な企業構造もある旨が書かれていた。

そんな構図なだけに当然ながら局員には販売ノルマが課せられていたというが、ここでは顧客の3割弱が70歳以上の高齢者が占めるという。かんぽ生命に限らず証券会社でも銀行でも金融商品の販売ノルマが絡む不正では、もうお約束のように必ず高齢者頼みの構図が露呈するケースが多い。

ジレンマに陥り身動きが取れなくなった証券会社を横目に、ここ数年で一部銀行が販売手数料収入より顧客の運用残高を増やした社員を評価したり、解り易い商品の情報提供等をグループ各社に求める指針を作るなど営業改革に乗り出す動きが見られる。利鞘稼ぎの時代から其の先に活路を見出すも、金融庁の求める販売体制とのバランスをどう図ってゆくかが課題になるか。


海外流出と保護対策

さて、昨日の朝のニュースでは青森県が開発したリンゴの品種「千雪」と見られる苗木が許可なく中国のネット通販サイトで販売されている件を見たが、同日の日経紙社会面でもこの件が不正に流出した疑いがあるとみて国に調査や販売差し止めのへの協力を求めた旨が書かれていた。

流出した日本のフルーツといえば、先の平昌オリンピックで注目を浴びたカーリング女子日本代表の所謂「もぐもぐタイム」で食べた韓国イチゴが美味しいとのコメントが話題になった事があったが、それが流出した日本のブランド苺であった事を農水相が指摘した事も別に話題になったのを思い出す。

韓国では他にブランドみかんも無断栽培されている報道もあり、これ以外でも時期的にこれから出回り始めるであろう日本の農研機構が10年の歳月をかけて育成した「シャインマスカット」もまた中国で品種登録の隙間を縫って生産が急増し大幅な廉価の影響で価格破壊が起きており、冒頭のリンゴもこのパターンになるのではと生産者は戦々恐々の状況である。

フルーツ以外でも最近では和牛の精子等を中国へ持ち出そうとした輩が刑事告発を受けた旨の報道もあったが、ブランドプレミアムから市場で高値取引されている物は逆輸入された場合の経済的損失は上記の通り可也の額になり何よりブランド価値の低下を招く。登録等の壁も各所であろうが、日本が総力をあげた成果であるブランドの保護対策は急務の課題だろうか。


不動の銀座

一昨日は東京国税局による路線価発表があった事から各紙でもそれらが報じられていたが、インバウンド効果なども寄与し全校平均が4年連続で上昇となり、東京都内はこれに加え人口や企業の一極集中もあって前年比で平均4.9%上昇と6年連続のプラスとなり上昇率も拡大することとなった。

そんななかで2019年分の日本一となった路線価はやはりというかお約束の鳩居堂前という結果となったが、これで日本一は34年連続となり19年は3年連続で最高値を更新している。やはり都内ではこの銀座界隈が安定の最強を誇っているがテナントの変遷など常に新陳代謝も著しい。

近年もGINNZASIXや東急プラザ、もう少し範囲を広げて界隈のミッドタウンなど新たな商業施設が誕生しているが、こうしたメジャーな場所は兎も角も大通りから逸れると途端にその前に鎮座していたビルなどなかなか思い出せないものだが、マロニエ通りでは退去した伊ボッテガ・ヴェネタが退去した跡地には英バーバリーが早速近場から移転で同所を手当てした旨が日経紙にも出ていた。

今から10年以上前に当欄では銀座は変遷著しく経済を肌で感じ易い街とし、20年の東京五輪も見据え内外の観光客を誘致するべく今後も再開発など継続してゆくのは想像に難くないかとしたが、五輪後も銀座の不動の人気が続くとの見方は多く引き続き活発な新陳代謝が継続しようか。


株主総会2019

さて、先週は上場する3月期決企業の約3割が定時株主総会を開催したピークの週であったが、問題企業には久し振りに長丁場となるケースが目立ち、株主から出された議案数は過去最多となった一方で経営側の出した議案に対しては広く株主の反対に直面するケースが見られるなど今年は例年に増して緊張感のある総会となった模様だ。

当欄では昨年の総会シーズンに「今年の争会」と題し、株主提案を受けた企業が過去最高の42社に上っている旨を書いていたが、19年の6月総会ではこれを大きく上回る54社となった旨が日経紙にも出ており、騒動があった一部企業では株主側が提案した取締役選任案が可決されるケースも出て来た。

上記の通り「争会」もかつての総会屋がすっかり鳴りを潜め、司法の壁の前に退場を余儀なくされたアクティビストの面子も変わり持ち合い株の減少が年々目立つ構造変化から真剣な議論が交わされ本来の意思決定という機能を取り戻しつつあると指摘する向きも多いが、総会屋が蔓延りシャンシャンと仕切っていた一昔とはほんとうに隔世の感がある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

4

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30