195ページ目   雑記

リスクを取れない本邦勢

経営再建中の東芝は昨日に第三者割当増資による計約6,000億円の払い込みが完了したと発表している。これでほぼ上場廃止を回避できる見通しとなったが、実に海外の60のファンドへの割り当てという思い切った手法でこの年末に来て一番注目を浴びたディールになったのは間違いないだろうか。

その顔触れといえばコバンザメ的な引き受け手も混在しているものの、もともと筆頭株主に浮上していた旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントを始めとして米サード・ポイント、米サーベラス、米エリオット・マネジメント等々の錚々たる面々であるが、エリオットは先月取り上げた日立国際電気のTOB劇にも登場したアクティビストである。

これが東芝にとって吉と出るか凶と出るのか、一先ずこれで残る懸念としては半導体メモリー子会社を巡る米WD者との対立のみとなるが、何れにしろこんなスピード増資劇を見るに裏を返せば今の日本にはこれだけ短期間に巨額のリスクの受け皿になれる投資家不在の証左で今の資本市場を如実に表している。


食の世相

さて、食に関する調査・研究を行っているぐるなび総研が昨日に2017年の世相を最も反映したという「今年の一皿」を選んだが、今年は「鶏むね肉料理」が選ばれることとなった。社会の高齢化や健康志向の高まりを背景に・高タンパク・低脂肪等が一般に認知され胸肉に注目が集まったという。

なるほど言われてみれば今年はコンビニで販売しているサラダチキン等がやたらとメディアに登場している機会を多く見かけたものだが、鶏むね肉といえばそのパサついた食感のイメージからあまり表舞台に登場するようなシロモノという感覚では無いが、糖質制限モノの流行等と並びそれだけ健康志向が高まったという表れか。

この今年の一皿、上記の通り世相を反映し優れた日本の食文化を人々の共通遺産として保護、継承する事を目的に14年からスタートしているが、昨年はパクチー料理が選ばれ当欄でも取り上げている。昨今のSNS流行から今年はもっと違った映えモノ系が選ばれると思ったが、ともあれ昨年のパクチー然り「今年の一皿」で脇役でも表舞台に躍り出るチャンスが増えるようになって来たか。


買収防衛策変遷

本日の日経紙法務面には「企業、買収防衛策に知恵」と題して、ここ数年買収防衛策を廃止する企業が増えつつあるなか、一方ではルール等を設定・公表する事前警告型を設け新たに導入に踏み切る企業や、新株予約権の無償割当など株式価値の希薄化に配慮するなど仕組みを工夫して維持する企業もある旨が書いてあった。

買収防衛策の廃止といえば二つのコード改定を睨み株主からの風当たりを気にして近年では廃止する企業が確かに増えており、導入社数のピークだった08年は569社あったが先月末時点では411社まで減少してきており9年連続での減少、とりわけ今年は5月にかけて過去最多ペースで廃止となった経緯がある。

近年ではROE重視も声高らかに謳われているが、確かにもともとこれが低水準な企業が防止策を導入するケースでは株主価値を毀損し所謂ゾンビ企業を延命してしまうというパターンが多い。過去にはニッポン放送やブルドックソース事件の攻防が記憶に新しく企業に対する影響力行使も線引きが難しいところだが、今後もガバナンス重視策は均衡点を探りながらの進行という事になるか。


食フェスの広がり

さて本日で霜月も終わりであるが、11月といえば食フェスのイメージが近年強い。日比谷公園では毎年恒例の子どもの食育体験を謳った「ファーマーズ&キッズフェスタ」が今年も盛況であったが、これが終るとはや翌週には日本全国から魚介料理が大集合する「フィッシャーマンズフェスティバル」が始まり、更にその翌週には全国の鍋料理を集めた「ご当地鍋フェスティバル」が開催されていた。

また代々木公園ではスペインを代表する料理や食材からワインまで集結した日本最大といわれるスペインフェスタが開催されていたが、代々木公園は上記のスペインフェスタのみならず日本最大級を謳うモノが多く、翌週からは日本最大級を謳う蕎麦や日本酒をキーコンテンツとした博覧会イベントである「大江戸和宴」が開催されていた。

食フェスの参加動機の6割以上を占める一番の理由は普段食べられないものが食べられる・飲めるとなっており、若年層のみならず団塊世代やシルバー層まで幅広い層を巻き込みこの大江戸和宴は昨年15万人を動員した実績があり、日比谷公園の「鍋フェス」も昨年実に17万人を動員した実績がある。

鍋でも蕎麦でも日本食はカテゴリーが多く、それらも廉価から高価まで細分化し易くこれらは洋食でもまた然り。来月も有楽町の国際フォーラムで開催される全国町村の自慢のグルメ・物産が大集合する「町イチ!村イチ!」の広告が過日の新聞折り込みに入っていたが食フェス増加の傾向はこうした日本の豊かな食文化の表れなのかもしれない。


物価目標と出口

本日の日経紙経済面には「日銀ETF 時価20兆円」と題し、昨日公表の4〜9月期決算でETFの保有時価が3月末から4兆4千億円増え20兆3千億円になった旨が出ていた。株価がバブル崩壊後の高値を更新する水準まで上昇しているのも大きいものの、3月末の段階でもちょうど1年前と比べ1.8倍になっていたワケだからなかなかの進捗具合である。

日銀の自己資本8兆1千億円に対し保有ETFの時価は約2.5倍となっており、株価上昇の恩恵で9月末時点の含み益は過去最高の4兆2710億円に達しているが、当然ながら上昇し続けるなかを継続購入している分だけそのコストも上昇しているワケで同じく平行して損益分岐点もまた然り。

財務の健全性を危惧する声や市場構造上の問題、果てはコーポレートガバナンスへの影響も無視できなくなっている旨の批判も喧しいが、そもそもの2%の物価目標達成も未だ道半ばで手綱を緩める気配は無く、上記のように半年5兆円ペースの増加が継続すればそれこそ30兆円保有も見えてくるというものだが出口戦略が真剣に論議されるのは何時の日か今後も推移を見守りたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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