233ページ目   雑記

相互インスピレーション

さてここ一週間で気になった報としては、長らく作者不明とされてきたオランダのライデン国立美術館所蔵の6枚の絵が江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎の肉筆画である事が同博物館の調査でわかったという件か。親交があったドイツ人医師シーボルトから影響を受けた作品群とみられるが、西欧の水彩画技法を真似た異色の作品とか。

葛飾北斎といえばこの間久し振りに会ったピアノ講師をしている知人女性と逢った際にも、ドビッシーが浮世絵が好きで自身の交響曲「海」の楽譜の初版表紙には此処からインスピレーションを得たとして、北斎の富嶽計三十六景の第二十八景[神奈川沖浪裏]を使用、自室にも同じ北斎の絵が飾られていた云々の話をしたばかりであった。

また、印象派の画家も浮世絵に影響を受けた向きが多く、例えばエドガー・ドガは「北斎漫画」を参考にした人物像を描いた事で知られているが、この「北斎漫画」を用いたのはこのドガだけではなく、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家のエミール・ガレもまた「北斎漫画」の鯉を図案に入れた花瓶を世に送り出すなど挙って自身の作品に浮世絵の要素を取り入れていた。

斯様に世界中の多くの巨匠にインスピレーションを与えてきた北斎も今回の件で同様にまた西欧技法からインスピレーションを得ていたという事が窺える話だが、いずれにせよドビッシー然りドガ然りこの頃のパリの東洋趣味を象徴する話と併せアートの世界は時々こうしたエピソードが舞い込んでくるから面白い。


サイダーの甘い匂い

さて、以前の当欄でも触れていたが今月上旬には東証マザーズ上場の「ALBERT」株の公表前の業績予想を保有する親族らに伝え、損失を回避させた等として金商法違反に問われた元会長の初公判が開かれ起訴内容を認めた旨が報道されていた。

インサイダー取引といえばもう一つ先月も「みんなのウエディング」株でクックパッドによるTOB情報からインサイダー取引をしたとして兵庫県の男性が証券取引等監視委員会から課徴金納付を命じられる件もまた明るみになっている。

更に先週報道されたものには、TOCOMの元市場取引監視委員会委員長を務め同所取締役も務めた元大学教授が、知人の上場企業幹部から得た未公表情報を基にインサイダー取引をして1千万程度の利益を得たとし証券取引等監視委員会が強制調査をしている件もある。

不正な取引を監視する市場取引監視委員会の元トップというのがなんとも皮肉な話だが、斯様にインサイダー情報の甘い匂いに誘われウッカリ手を出しバレてしまう輩は後を絶たないが、本邦の市場もソコソコの利益を得てしまうような取引においては一昔前から比べるに摘発率が格段に高くなったなと感心することしきりだ。


BCP

先週末は鳥取県中部で震度6弱の揺れを観測したとの報が舞い込み、既に住民からの家屋の被害届が1,500件を超す事態となっているが、先の熊本大地震から半年そこそこで再度列島がザワついている。

この手の災害の報が出る度に首都圏でも主要インフラに対する事前対策が話題になるが、奇しくもこの日の日経紙投資情報面には「東証を大阪から遠隔操作」と題し、日本取引所グループが首都圏直下型地震など大規模災害に備えて、2018年3月期中に東京証券取引所の株式取引システムを大阪取引所から遠隔操作する仕組みを整える旨が載っていた。

この辺に関しては最近また「豊洲問題」で引っ張り出されそうな当時の石原都知事が、先の東日本大震災の時に「首都機能のうち証券市場の中心は大阪に移すなど大きな発想力で取り組むべき」と発言したのが記憶に新しいが、JPXは先行して節電策等で業務を大阪本社へ移管するなどしてきた経緯がある。

BCP(緊急時事業継続計画)に関しては現状運行システム等でもバックアップ機能等万全の態勢で臨んでいるところが多いが、思えば上記の元東京都知事発言以来金融インフラに関してのこの分野の整備体制はあまり耳に入ってきていないものの、この課題も焦眉の急を告げるといっても過言ではない状況になってきているのではないだろうか。


メンズ開拓

本日も近所では「日本橋恵比寿講べったら市」が開催されているが、例年この市を境にだいたい肌寒さが増してくる。そういった季節になるとファッション系のDM等も数が多くなってくるが、最近では従来レディスのイメージが強かったフルラ、コーチ等のブランドもメンズの案内が随分と増えてきたように感じる。

この辺は今月上旬の日経MJでも「メンズ市場掘り起こせ!」と題して仏エルメスが伊勢丹新宿本店にメンズ商品を集めた期間限定店を開いた他、仏シャネルや米ティファニーも機能性を重視した男性向け腕時計を投入するなど欧米のハイブランドが男性への販売促進に知恵を絞っている旨の記事が書かれていたのを思い出す。

このエルメスといえば先に当欄でも、来年以降はビジネス環境の先行き不透明感から年間の売り上げ成長見通しを発表しないとしたことを嫌気し株価が9%近く下落した旨を書いたが、インバウンド需要一服の危機感からでリシュモン始めとする値下げ政策等と並行し伸びしろのあるメンズ市場も攻め始めたというところか。


全自動へ

本日の日経紙一面には「AIで株売買 顧客に提供」と題して、みずほ証券が11月末にも自社開発で株価変動を予測し「安く買い高く売る」ように注文執行のタイミングを調整したAI(人工知能)を搭載した株式売買システムを機関投資家向けに提供し始める旨が載っていた。

個別銘柄ごとの注文状況や売買ボリューム、過去の値動きなどのデータから、株価が30分〜1時間後に現時点と比べてどのくらい上昇・下落するかをAIで予測との事で、ホールセールよりバイナリー等でリテール向けに売れそうな気がしないでもないがそれは兎も角も受託している年金基金や投資信託の運用成績の下支えに繋がる可能性もあるとの事。

先にアナリストリポートを全てAIで解析し投資判断の変更を予測するGSAMの試みや、大手証券のアナリストがカバーしていない中小型銘柄のリポートをAIに投げるといった件も当欄で取り上げた事があるが、これら一本化したモデルが出てきていずれがそれらの競合戦となってくるのは想像に難くないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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