253ページ目   雑記

巨大化と副産物

先週末の日経紙国際面には「ETF、ヘッジファンド超え」と題して、6月末時点のETF(上場投資信託)運用残高が世界全体で実に計2兆9,710億ドルに達し、投機的売買を特徴とする同時期のヘッジファンドの資産残高計2兆9,690億ドルを初めて上回った旨が出ていた。

この変に絡んで最近の中国株の急落の背景には、当局の厳しい規制を掻い潜って投機的手法を駆使した海外ヘッジファンドが暗躍しているとロイターでは報じているが、ETFも投機的な売買にも用いられこうした株価急落などの一因にもなっているという。

中国の場合は先に書いたようにまた市場構造が先進国とは異なる部分が多いが、本邦でも日銀の執拗なETF買い入れで高寄与度の指数採用銘柄が吸い上げ状態になっており、一昔前の板と今とでは随分と光景が変わってきている。一方でレバレッジ型含め最近もJPX400派生指数連動型のETF3週が上場する等、増殖のペースは衰えない。

こんなことに伴いヘッジファンドの代表的指数とS&P500種株価指数を比べると過去4年は後者が大きく上回りETFなどで株価指数に投資する方が効果的という結果になっている模様だが、斯様な影響力の台頭が市場に今後どういった変化をもたらしてくるのかまだまだ各所でチェックすべき項目は増えている。


広がる新形態

本日の日経紙・大機小機には「投信運用会社VS販売会社」と題し、日本の投信残高が100兆円大台を超えるなど利用者層が広がり存在感も増すなど投信時代が到来する一方で、投信先進国の米国とは投信会社と販売会社の立ち位置の違いが書かれていた。

文中には「投資家の人気が高く大量販売が容易なファンドも、販売会社にとって都合がいい。」との一文があったが、かつて話題になった大手の一兆円ファンドなどその基準価格も流出額の崩壊もまたガリバー規模であったなと思い出す。長年回転の道具に多用され、なれの果てで極端に純資産規模が減ってしまったモノはその構造上運用も難しく放置された後に座してナントカといった状態になっている物が珍しくなかった経緯があった。

それが漸く近年では運用会社が直接一般の顧客に対して販売する直接投信の類が出始め、手数料無料投信も続々登場、また驚異的な成績から発売直後に直ぐ販売停止になるようなスター的ファンドも登場している。上記の道具扱いが過去の産物になるのかどうか今後の動向にも注視しておきたい。


仮想で創造

今月に入って仮想通貨ビットコインが大量消失したとされる事件で、運営会社MTGOXの元社長が私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕された件がいまだ紙面を連日賑せている。ビットコインにあまり関心のない向きには既に忘れ去られた事件ともいえるが、当初のハッキング被害説が俄かに社長の犯行へと変わってきている模様。

一部報道では自身で如何様にも操作可能だった一元管理を利用し一頃茅場町界隈で流行った?オプションのノミ屋紛いの取引を試みたという説もあったが、何れもガラス張りではなく外からは完全に見えない世界なのでこの手の悪知恵が発生する土壌にあったのは否めないだろう。

ところでビットコインといえば最近、手持ちのビットコイン資産の20倍までFX(外国為替証拠金取引)のように売買できるサービスを用意し始めたベンチャー企業も出てきている。どんなモノも創生期にはMTGOXのような事件が必ずと言っていいほど起きる素地があるが、禍根を残す一方でまた新たな創造が幾多も輩出されてくる。


遅れる石油系

先週末の日経紙一面を飾っていたのは「出光・昭シェル統合へ」と題して国内2位の出光興産と同5位の昭和シェル石油が経営統合で基本合意の正式発表した旨の記事であった。2016年をめどに統合をめざすというが、両者の統合で元売り界では首位のJXに大きく迫ることになるという。

出光が昭和シェル買収を目指し交渉に入ったとやはり日経紙一面を飾ったのは昨年のクリスマスの頃だったと記憶するが、両社の統合は6年前に当欄でも「和製メジャーへの道」と題して取り上げた上記のJXの前身、新日本石油と新日鉱ホールディングス統合以来の大型再編となる。

斯様にこうした鉱業系と比較するに石油系は大手始めとしややペースが遅い感がしないでもないが、同時にまたこうした再編劇の過程で外資メジャーの日本撤退という構図も浮き彫りになっている。下流から国際競争激化を鑑み上流問題まで睨んでの将来のメジャーを目指す観点から大手中小含めた再編も未だ途上、残る関係各社の身の振り方が今後ますます注目される。


本体上場の真偽

さて、今週気になったニュースとしては火曜日に日経紙一面を飾っていた「サントリー上場検討」と題して、サントリーHDが早ければ2018年にも上場する検討に入った旨の報か。大型買収等で膨らんだ有利子負債を上場で調達した資金で圧縮し、新たな成長に向けた経営資源を確保するという。

仮に上場した場合、その時価総額はアサヒグループHDや、キリンHDを上回る3兆円規模になる見通し。そういえばこの後者のキリンHDとも同社はかつて経営統合話が出たものだったが、重なる思惑違いからコカコーラを抜くかとも言われたメジャー睨みの大型統合話は破談になってしまった経緯もあったなと思い出す。

とはいえサントリーといえば今から約2年前に清涼飲料部門のサントリー食品インターナショナルが上場を果たしているが、その時に当欄では末尾に「今回の上場は実によく考えたもので、本家のサントリーHDはやはりというか非上場のまま上場後の同社株式をなお約6割握り、同族ならではの自由度は確保という構図か。」と書いている。

あれから2年、コーポレートガバナンス元年といわれる今年にその本体の上場話が出てくるのは冒頭にある有利子負債圧縮という本題とは違う部分でも自然な流れともいえよう。とはいえ当のサントリー本体側はすかさず同日付でこの報道の事実を否定。「これは当社が発表したもの云々」までは常套句だが、続けて「当社が株式上場について検討に入った事実はありません。」とも続けており真偽のほどはというところだがはたして。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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