96ページ目   雑記

脱日銀トレード

本日の日経紙マーケット面には「日銀、ETF購入ゼロ」と題し、5月最終日の昨日も買い入れを見送り結局先月は買い入れに動かなかった旨が載っていた。月間ベースでは2013年春の異次元金融緩和開始後で初めてゼロとなった格好だが、最後に観測されたのが4月の21日にTOPIXが大幅続落し1900ポイントを割った時の701億円購入というから確かに久しく鳴りを潜めている。

周知の通り日銀は3月の金融政策決定会合で年6兆円程度としてきたETF購入目安を撤廃の政策修正を表明していたが、上記の購入はこの表明以降初の事であったもののこれまでの一定の下落率というような単純推測では肩透かしに遭い、マーケット関係者の間では悉くコレと言った法則?で測れなくなったのは否定できないところだ。

ところで日銀といえば先に発表された2020年度の決算では保有するこのETFの時価から簿価を差し引いた含み益は21年3月末時点で15兆4444億円と過去最高を記録、実に前年の50倍に急拡大している。財務体質が一層株価に左右され易くなっている背景を鑑み新法則?探りもよいが購入論議と並行し出口政策も自ずと意識されて来ようか。


脱炭素気運

さて、先週は米エクソンモービルが開いた株主総会で気候変動対策の強化を求めアクティビストが推薦した取締役候補が選任されるに至った。またオランダでは同じく石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルに対し裁判所が大幅な二酸化炭素の排出削減を命じる判決を言い渡すなど脱炭素に向け世界的な企業に厳しい要求が相次いでいる。

この辺は先週金曜の日経紙社説にも「市場の力を脱炭素社会への移行に生かせ」と題し、上記の例を挙げ日本企業にとっても自社の環境関連の取り組みについて積極的に情報を発信する必要があると書かれていたが、直近では伊藤忠商事がインドネシアで建設中の石炭火力発電所について契約満了を待たず売却交渉を模索と石炭火力から完全撤退の方針を固めた事が明らかになっている。

この手の長期売電などの美味しい案件からの撤退は通常で考えれば理解に苦しむが、脱炭素は自然になるわけも無くIOC会長の言葉よろしく?実現する為には企業側も犠牲を払わなければならない。経産省など太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した事の証明書を公的機関が発行、価格も安くし一般企業が買えるようにする新たな市場創設取組を打ち出しているがまさに世界規模で気運が高まってきている。


中国市場の踏み絵

さて今週はファーストリテイリング傘下のユニクロが、同社製品の生産過程で強制労働が確認された事実はないとするコメントを発表していたが、これは同社のシャツが中国の新疆ウイグル自治区産の綿製品に対する禁輸命令に違反した可能性があるとして米国が輸入差し止め措置を取った事に対するもの。

新疆綿を巡っては同じファストファッション業界のH&Mが新疆ウイグル自治区に工場を持つ企業との取引停止を表明、これが引き金となってあっという間に中国のECから締め出された経緯があっただけにユニクロ同様に衣料品にこの新疆綿を使用している良品計画なども毅然とした使用中止宣言には逡巡している感が受け取れる。

一方でカゴメは今年中に新疆ウイグル自治区で生産された加工品を製品に使用するのを止める事を先月に表明、また日経紙の取材ではミズノやワールドにコックスなど3社も新疆綿の使用を止める事を表明している。これら以外の小売り各社も続々とサプライチェーンの生産履歴の確認の厳格化を打ち出している。

これらの各対応の背景には中国市場への依存度も大きく関係しているのは想像に難くないが、近年の中国市場の特性として政府と国民が外交関係で一体化し連動して動いている感が強い。ESG喧しい昨今、企業は特にSの対応により重要度が増しており中国が成長のドライバーとなる企業には迎合するか切り捨てかまるで踏み絵のような難題だが、何れにせよこのウイグル問題も一つの試金石になるか。


面従腹背

緊急事態宣言の延長がほぼ確実視されるなか昨日は一般社団法人日本映画製作者連盟が映画館再開の要望について新たな声明文を発表していた。これまで休業の根拠について説明を求めても納得のいく合理的な説明が得られていない中、クラスター発生のエビデンスも無く「なぜ映画館が」と今回の措置に対する平等性への疑問も生じ、また投資資金の回収が絶たれるなど休業が及ぼす甚大な被害の可能性を謳っている。

この辺は先週も当欄で「場当たり要請?」と題して書いた通り目安となる明確なエビデンス無き線引きの曖昧さがストレスを増幅させており、これに先駆けてライブエンタメの4団体も要請撤廃を求めた声明文を発表していたが、何れも政府・自治体の連携も覚束無く納得のゆく回答が得られていないところが不平等感を煽っている部分が大きい。

同じく先に取り上げた百貨店も高級品の解釈を巡って東京都と鬩ぎ合いが続いており、これまた担当者サイドが豪奢品とは具体的に何かと都へ説明を求めたが曖昧な返答にとどまったという。コロナ禍でも富裕層のブランド品への消費意欲は旺盛で百貨店に取ってもこのセクターは売り上げの要、意地になって押しつけ要請を継続させれば何れの業種も面従腹背でいたちごっこの構図になってくるか。


逃げ恥マーケット

このところサプライズな芸能人の結婚報道が散見されるが、先週は日本中がガッキーこと女優の新垣結衣さんと俳優の星野源氏の結婚報道でもちきりになった。5年前に大ヒットし一世を風靡した恋愛ドラマが現実化した格好になったワケだが、この手のパターンは「逃げ恥」放映の近いところでは前年15年の舞台嵐が丘で共演した女優の堀北真希さんと俳優の山本耕史氏なども居る。

ところで業界では話題の芸能人が結婚報道で「○○ロス」と話題になったパターンは翌日の株価に影響があるという相場と絡めたジンクスが以前より実しやかにあるが、なるほど上記の堀北真希・山本耕史両氏の時も翌日は下落、女優の石原さとみさんの時に至っては東証がシステム障害で終日停止追い込まれているのが記憶に新しい。

今回の逃げ恥婚では発表翌時の前場でこそ200円以上安くなる場面があったものの引けは辛うじて小反発となったが、個別では両者が出演しているCM企業9社中6社の株価がご祝儀買いで上昇、他に面白かったのは星野つながり?で星野リゾートが反発、また「可愛ガッキー」と読める?河合楽器まで買い物を集め年初来高値を更新するなどほとんど冗談とも取れる物色劇が展開された。

まあ河合楽器は巣ごもり需要好調から21年3月期通期連結営業利益が前期比18%増で着地の素地が背景にあるとはいえ、近年は一定のワードに過度に反応する頻度が確実に高くなって来た気がする。IT駆使が顕著化している最近ではバズったワードに関連しイナゴ勢が大挙するパターンも多いという表れなのかどうか、何れにせよ最近の環境を表す光景を垣間見た20日の市場であった。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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