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MBO最多更新か?

週明け本日の日経平均も高値警戒感から値嵩株の売り物が目立ち大幅続落となったが、そんな中で個別では東証プライム市場の太平洋工業が全般の地合いに逆行高となり年初来高値を更新していた。同社は周知の通り先週に創業家が出資する特別目的会社がTOBを実施、MBOで株式を非公開化すると発表しておりそのTOB価格にサヤ寄せする動きから先週末に続いての続急騰となっている。

その買い付け価格は1株2050円と発表されてはいるが、現在同社のBPSは約2900円となっているだけに本日はTOB価格を超えての大引となった。同社はタイヤバルブ関係首位だが、今後のハイブリッドやEVなど電動化の進展でこうした車部品業界は従前とは異なる製品開発の必要に迫られる。株式の非公開化で大胆かつ長期的な投資に取り組める体制が求められていたわけだ。

ところでMBOといえば本日はもう一つ、東証プライム市場の調剤大手の日本調剤も投資ファンドのアドバンテッジパートナーズがTOBなどを通じて買収し非公開化する方向の旨が報じられている。この業界でもまた再編の動きが広がっているが、ともあれ今年の株式非上場化の件数としては折り返しの6月上旬時点で27件となっており今回の件含め同じペースでいくとするなら過去最多の一昨年を更新してくる勢いだ。

こうした動きを鑑み先にみずほフィナンシャルグループも100億円規模のMBOファンドを立ち上げているが、東証の再編の動きや今後の東証改革も控えて上場コストがそのメリットと比較し高いと意識されるような企業勢としてはこれからMBOというものが一つのソリューションとして台頭してくる流れになるか。


飛鳥Ⅲ就航

先の日曜日の日経紙では郵船クルーズの「幸を編む至福の船旅 最幸時間」と題した「飛鳥Ⅲ」就航の全面広告が目を惹いた。同船は同社の飛鳥Ⅱを超える総トン数で日本最大級のクルーズ船となり、24時間利用出来るジムやプールが完備されており全室バルコニー付きでどの部屋からのオーシャンビューが楽しめる。初航海は横浜港から北海道の函館港や小樽港を巡る7日間の旅になるが、新造船の就航は同社として実に約34年ぶりとなる。

クルーズ業界といえばコロナ禍で一時翁落ち込みをみせるもののその後の回復めざましく一昨年は世界でコロナ前水準を200万人ほど上回ってきている。現在世界は関税リスクに晒されているが、クルーズ事業はこの関税リスクも少なくその需要に減速感が見られない。そういった事で大手のロイヤル・カリビアン・クルーズなどその株価が一時は関税ショックに連れ安したものの今月は特に鋭角的な上昇軌道を描き年初来のリターンは50%近くになる勢いである。

そういった中で日本のクルーズ人口はまだコロナ禍前の6割弱の水準に甘んじているだけに、この飛鳥Ⅲの他にも商船三井はにっぽん丸に加えて昨年末には「MITSUI OCEAN FUJI」の運行を開始し、オリエンタルランドも28年度にはクルーズ事業に乗り出す旨を発表するなど各社が商機とみて次々に投入を図っているわけだが、国交省も日本人クルーズ乗客数の目標として30年までに年100万人に増やしていくことを狙っている。

上記のオリエンタルランドも直営ホテルはバリュータイプ、モデレートタイプ、デラックスタイプ、そしてラグジュアリータイプに分けて展開しているが、クルーズ船も「カジュアル」、「プレミアム」、そしてこの飛鳥Ⅲのような「ラグジュアリー」に分けられる。この手は長年シニア層が牽引してきたものだが、各社共グレードに幅を持たせた戦略で各々今後の舵取りが注目される。


浮かれる裏の暗雲

劇場版「鬼滅の刃」無現城編第一章がロケットスタートとなっている。オープニング成績が歴代1位、初日成績も歴代1位、単日成績でも歴代1位と3つの記録を更新した模様だが、ところで3つの記録といえば衆院選に続き都議選、そして今回の参院選でも歴史的な大敗となった与党も3つの大敗で歴史に残る記録になりそうだ。物価高含め諸々の課題が山積みとなるなか、その対応に対する厳しい民意が表れた格好になったか。

一方で3連休中日の投開票となったことで猶予があったぶんマーケットは冷静に反応し連休明けの大引は小幅続落に終わったが、何とも絶妙なタイミングで日米関税交渉が合意したとの報で本日の日経平均は急騰、個別では大本命?の自動車セクターが集中物色されトヨタは約38年ぶりの日中上昇率を記録し、この合意で日銀も利上げをし易くなるとの思惑から銀行株も一段高、これらの動きからTOPIXも終値ベースで史上最高値を更新している。

ともあれかつて第1次安倍政権下で安倍総理に言った責任論が今回ブーメランのように自分に降りかかる格好になっているわけだが、当の首相は日米関税交渉が正念場な事を引き合いに大臣続投を表明。果たして今回の関税交渉合意という結果が出たことで市場の関心は首相の進退に移るわけだが、もはや自民党自体が総裁交代で復権が叶う構図でもなく乱立する多党制が続きそうな構図は浮かれるマーケットの裏に潜む混迷度合の深まりを表しているか。


法案成立

先週も当欄で少し触れていたが、米ドルに価値を連動させる暗号資産の一つであるステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が先週末にトランプ大統領の署名で成立している。ドルの世界の基軸通貨としての地位を次世代にわたり確保することになると語った通りやはり米ドルの覇権維持の想いは強いと感じたが、国際送金などにおいては既存のネットワーク「SWIFT」を介した銀行間送金などと比較するに決済の高速化やコストも安く済むメリットが光る。

現在ステーブルコイン全体の時価総額は約38兆円、米では既に暗号資産交換業者のコインベースがECサイトの支払いにこのステーブルコイン対応の決済サービスを発表しているが、これが普及することになると手数料が障壁となり逡巡していた加盟店が挙ってこれを導入することも考えられ決済市場を独占してきた大手カード会社も今後は競争に巻き込まれることになるか。

競争といえばもう一つ、これらの動きで預金からの資金移動の増加を懸念する銀行業界も自前のコイン発行を検討する向きも出始めるなどざわつき始めている。一方でBIS(国際決済銀行)はステーブルコインについてさまざまなリスクを挙げ報告書で通貨として機能するには不十分と評価しているが、此処はCBDC(中銀デジタル通貨)が次世代の中心になると明示している。トランプ政権は大統領令でCBDC発行を禁止しているが、今後CBDCも発行が見えてくるにつれこちらの覇権を争う鬩ぎ合いも一層激化してくるか。


土用の丑2025

さて、明後日は土用の丑の日である。この丑の日といえばいわずもがなウナギだが、水産庁によれば今年のシラスウナギの国内漁獲量は昨年比で倍増しキロ当たりの平均価格も前年の約半値で推移しているという。そういった事で少し手頃になるのではとの期待もあるようだが、この辺は成育などタイムラグもあることから一部小売りではやや値下げを意識したところもあるようだが総じて足元では例年並みといったところか。

とはいえ今後はコメよろしく徐々に値段が下がって来る事に期待が募るというものだが、一方で不穏な空気も漂う。EUの動きがそれで、絶滅の恐れがあるということから先にニホンウナギを含むウナギの全種類について国際取引を規制するワシントン条約への掲載提案を正式に決定している。11月~12月に行われるワシントン条約の締約国会議で提案が採決されれば、キリン等の動物と同様にこのウナギも輸出する際に許可証の発行が必要になる。

許可証云々となるとこれまでよりも国際取引に時間がかかる可能性も浮上することになるがこの可否如何で供給量が減少した場合、ウナギに対する需要が現状のままであれば値段は上昇傾向になるか。当然ながら国内で捕獲し出荷する純国産であれば規制の影響はないが、ちなみに2024年の国兄のウナギの供給は約7割を輸入に頼っているのが現状なだけに日本としてはなかなかの打撃になる可能性が高い。

ただこうした保護意識が高まるなか国内でも動きが出ている。先に水産研究・教育機構は完全養殖のウナギを量産するのに必要な基幹技術の特許を取得しており、ここには大手民間企業や大学も協力し連携を図っている。これまでこの手では鯛やマグロなどで完全養殖の商業化が進んできたが、はたしてウナギもこれに続きいつでも堪能する事が出来るようになるかどうか今後の進展に期待したいところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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