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異例の呼びかけ

さて、昨日の記者会見で岸田首相は「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んで頂く、料理に乳製品を活用頂くなど国民の皆様のご協力をお願いしたい。」などと異例の呼びかけを行っている。首相が特定の農産物の消費を呼びかけるのは異例な事だが、背景にはコロナ禍で消費が落ち込んでいるところに学校給食が休みになる事なども重なり特に今年の年末年始はかつてない規模で余ってしまう事があるようだ。

今から6年くらい前だったかバターが極度な品薄に陥り業務用価格が29年ぶりの高値を記録、株式市場でも六甲バターが上場来高値を更新するなどしたことが記憶に新しいが、これを受け官民挙げて生乳生産増産対策をやってきた効果がここ数年表れていた土壌もある。何の因果かタイミングが悪いというか何れにせよこれらが裏目に出た格好だ。

これを受け対処療法的に明治が今週から牛乳消費を喚起するプロジェクトを開始したり、ローソンでも年末年始の2日間はホットミルクを半額で販売したりと協力体制を敷くが、生乳の余剰問題はこれが初めてではなくつい昨年の5月頃も学校の休校や飲食店営業縮小を受け過度な余剰に陥った経緯がある。それらを鑑みこの1年何が出来たのかというところだが、生産側も飼料価格の高騰が加わる二重苦の状況だけに政府としてもセーフティーネット的なものが喫緊の課題か。


それぞれの決着

さて、先週は最高裁が経営統合を認める司法判断を下した事で関西スーパーマーケットがエイチ・ツー・オー・リテイリング傘下食品スーパーのイズミヤ、阪急オアシスと経営統合し、またSBIホールディングスもTOBの成立に伴い新生銀行を連結子会社にする事となり共に情勢変化の度に株価が乱高下した両者のTOB合戦は幕を閉じた。

はれて当初の予定通りの構図となった新生銀行のTOB劇だが、9月にこれについて触れた時に書いたようにココは公的資金の返済が最大の焦点となってくる。バトンタッチとなった今後が注目されるが、肝心の株価は引けでTOB価格を上回ったのは先週の2日間のみで本日の引けも1800円と心許ないだけに今後の浮揚策に関心が向かうところ。

一方で当初の予定通りにはいかなかったオーケー、今後は保有する関西スーパーマーケットの株を全株売却と報じられているものの会社法に則り買い取り請求権行使という流れになるか。こちらの本日の終値は1034円とTOBを囃した9月の高値からはや半値以下に沈んでいるが、オーケー側の想定としてTOB提示価格が目安になって来る筈だがこちらの業界も再編機運は燻り続けそうだ。


駆け込みIPO?

本日はマザーズに3銘柄が新規上場となったが、JDSCとHYUGA PRIMARY CAREの両社がストップ高で引けた一方でグローバルセキュリティエキスパートはストップ安水準で引けるなど明暗分かれた。これらを始め今週は1週間で24社が上場となる異例の上場ラッシュとなり、特に24日(金)は実に1日で7社が同時上場となるなどそのピークを迎える。

これだけのラッシュとなると資金分散の関係等でその影響がどうしても気になるところだが、既に節目の1000を下回っていたマザーズ指数が本日の続落で2020年5月28日以来およそ1年7か月ぶりの安値に沈む中で、先週上場した3社の株価も上場後はどれも苦戦を強いられており外部環境も各国中銀の緩和姿勢後退などから不安が残る。

斯様な上場ラッシュの背景としては先ず去年のコロナ禍で予定していた向きの上場延期した分が上乗せとなっている事や、来年に控える東証の市場再編が影響しているという指摘も一部にある。また投資しているVC(ベンチャーキャピタル)が早期のイグジットを求める傾向にあることを指摘する向きもある。

これらの事が相俟って斯様な駆け込み?上場ラッシュとなった部分もあり、その影響からどうしても小粒感が拭えないモノも出て来る。先に上場した米リビアン・オートモーティブは上場した途端にその時価総額は10兆円超えと同社1社で東証マザーズ全体の価値にほぼ匹敵する規模という一コマを見ても日米の違いが浮き彫りになるが、以前に旧態依然としている日本企業の目利き力の課題が改めて問われると書いた事がある通り応分の資金の出し手が望まれるところ。


エシカル気運

さて、今週アタマの日経紙夕刊には「エシカルな消費文化に商機」と題し、世界的なファッションブランドでリアルファーの使用を避ける動きが本格化、先行的にアニマルフリーを達成して新たな消費文化を創りたいという思惑がある旨が載っていたが、仏の主要ファッション誌ELLEも今月はじめに誌面とウェブサイトから毛皮を使用した製品を排除する方針を明らかにしている。

同頁では服飾以外でも高級車等でレザー(本革)離れが加速している旨も書いてあったが、レザーといえば伊藤忠商事が手掛けた廃棄服から創る循環型ポリエステル新素材から創られた日本のランドセルも先月ロンドンのポップアップストアでお披露目されており、こうしたエコなランドセルもエシカル消費の一環といえよう。

欧州でのお披露目をとなったのは特にこうした動きが欧州で先行していたからに他ならないワケだが、日本でも松屋がこの夏に人工ダイヤを使ったジュエリーの自社ブランドを立ち上げている。天然ダイヤの採掘は土壌が弱るなど環境問題に影響があり、ウイグルよろしく労働環境に問題のある場所が多くあるなど倫理的な問題も指摘されているだけにこれもエシカルな流れと言える。

とはいえグローバル経済に依存している現況下で何所まで完璧にエシカルが浸透するかは未知数だろう。日経紙夕刊の「エシカルな消費文化に商機」の題名もエシカルがモノを売る為の推進力とも取れなくもないが、いずれにせよ環境意識が高い顧客が増加しつつあるのは否めないだけに今や企業も使命感を持って環境や人権に配慮した消費に対応する事が求められるのは時代の流れでもあるか。


古くて新しい計画

ちょうど1カ月前の当欄ではGEとほぼ時を同じくして本体とグループで手掛ける主要事業を3分割しそれぞれが上場する方針を検討に入った東芝を取り上げたが、昨日の日経紙ビジネス面には「東芝、3分割へはや試練」と題し、この分割案の魅力を訴求する同社に対し市場の反応は冷ややかで大株主のアクティビストの一部からも反対声明が出ている旨が書かれていた。

ガリバー企業で初の事例とはいえ発表当時からただ分割宣言しただけでその具体策が見えないとの指摘もあったが、虎の子事業を手放して以降展開力を失った感は否めなく世間の目も衰退が続く3つの会社が出来るだけではと冷めた見方は根強く、従業員など他のステークホルダーも蚊帳の外に置かれた印象が拭えないのも否定できない。

ともあれ定時総会を前に株主の意向を確認する来年早々?にも行われる予定の臨時株主総会が一つの節目と見られるが、これまで株主総会の度に株主と対立を繰り返して来た同社だけにはたして魑魅魍魎?のアクティビストらにどれだけ訴求出来るか、反対多数なら計画は限りなく白紙に戻り経営の混迷は一段と深まるだけにこの辺が焦点となりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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