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新陳代謝の差

さて、先日私の友人が購入したテスラがはれて納車となったのだが、このEV大手テスラといえば先週末の日経紙には世界の上場企業約4万6000社の3月末の時価総額上位集計が出ており、主要IT企業GAFAの上位横並びと共に同社は1年前の81位から今年は8位へと大躍進を遂げていた。

これらGAFA勢は昨年の3位から首位に返り咲いたアップルを筆頭に2020年10〜12月期の純利益が最高益となるなどか収益力の高さが際立っているが、こうした背景があるにしろやはり驚くべきは米IT勢5社の時価総額が合計で約8兆ドルに達しこれらで世界の時価総額全体の7%を占める規模になっているという現実か。

以前に当欄でテスラの時価総額がトヨタ自動車の上鞘に出てからわずか半年足らずでトヨタ自動車含む日本を代表するトップスリーのそれをも上回った旨を書いた事があったが、改めてこうした勢力図を見るに主要株価指数構成の入れ替えにも見る事が出来るが如く積極的な新陳代謝がなされているか否か日米の積み重ねの違いを感じざるを得ない。


警鐘

先週は日経夕刊・注目ニュース番付にも出ていた通り米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの報が話題になっていた。レバレッジ取引において追証要請に応じられず、これに絡んでいた日本勢ではプライムブローカーカレッジ取引で野村HDが約2200億円、ほどなくして三菱UFJ証券HDも英子会社で約300億円、新年度になってからやれやれ?とみずほフィナンシャルグループも約100億円規模の損失可能性の発表と報じられている。

このアルケゴス、かつてパラジウムの買い占めで名を轟かせたあのタイガー・マネージメントの出身者の資産管理会社であるが、報じられているところによればそのレバレッジは常識からかけ離れた実に800%とも2000%とも伝えられている。ヘッジファンドなら斯様に無茶なレバはかけられないが詳細のディスクロが求められないファミリーオフィスだからこそ出来た芸当といったところか。

当初は先のゲームストップ株のように個人勢によるポジション狙いの投機的動きがトリガーになったとされ第2のアルケゴスも出ると実しやかに喧伝されていたようだが、それは兎も角も今回上記のような異常なレバレッジ取引が出来たのも金融機関が多額の手数料収入を目当てに取引も人物も高リスクな物に多額の与信を行った点は否めない。

規制・監督当局も事態を注視しているというが、過剰流動性相場が続きボラが大きくなっているなか金融機関のリスク管理体制が問われそこに焦点が集まれば今後金融規制強化の議論に繋がる恐れもあるかもしれない。あのリーマンショックからはや10年以上が経過、当の米では主要株価指数が揃って史上最高値を更新するなか「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の諺を改めて思い出させるような事件が今起きたのは何かの警鐘か。


環境問題とPGM

さて昨日の日経紙商品面では「触媒貴金属 再び最高値圏」と題しガソリン車用触媒に使うパラジウムの国際価格が、自動車生産回復に伴う需要復調のなか主要生産国の供給懸念がにわかに強まった事を背景に、ニューヨーク市場の先物で昨年2月末に付けた史上最高値以来1年1ヵ月ぶりの水準まで急騰している旨が出ていた。

また同じくガソリン車の排ガス触媒に使うロジウムや、電子部品製造や水素生成の際の触媒等に使うイリジウムもエコブームのなか主要国の環境対策強化などを背景に急騰。同紙では5年前比で冒頭のパラジウムは約5倍、上記のロジウムは40倍を超える高騰とあったが、イリジウムもまた然りで約10倍に高騰している。

ところでこれら白金系レアメタルはプラチナの副産物として産出されるが、このプラチナもここ最近は値上がり急で昨年11月から直近までの騰落率では首位のビットコイン、2位の原油に次ぐ3位に付け注目を浴びている。上記レアメタルは電気自動車が本格普及するまでの間のガソリン車温暖化対策を背景としているが、プラチナもディーゼル車の排ガス浄化装置のほか燃料電池車の発電装置向け需要期待が背景にある。

金の下鞘に甘んじてはや数年プラチナも漸く覚醒かといったところだが、いずれにしろSDGsの掛け声が喧しい現代において今後一段と進む持続可能な社会への転換過程で常に付き纏うリスクとしてこれらに不可欠な資源不足の問題があり、これらに対応するべく更なる技術革新などが課題となってこようか。


サブスク彼是

さて鉄道各社の業績下方修正が相次いでいるが、先週末には小田急電鉄が再開発を巡る減損が響いて2021年3月期の連結最終損益が従来予想より赤字幅が拡大しそうだとの発表をしていた。ところでこの小田急電鉄といえば先月にアプリを利用した飲食・物販のサブスクチケットを発売している。

同サービスは税込み7,800円で30日間利用可能、小田急線ターミナル駅などに入る形44店舗が対象で飲食などは3時間間隔を空ければ何度でも利用可能で生花も期間中5回まで提供されるという。鉄道系では先にJR東が1日1本ペットボトル飲料を受け取れるサブスクを試みているが、初回は募集枠に対しその20倍近くの申し込みが殺到した経緯がある。

しかしサブスクといえば近年は上記のような食はもとより、ブランド品含めた服や時計、香水から美容サロンの類に最近ではラグジュアリーホテルに至るまで衣・食・住全てが網羅されている。外出も減るなか気に入れば継続、要らなくなれば解約と気軽に借りる感覚とモノを持たない暮らしが現代では本当に支持されるようになったとつくづくという感じだ。


PTSの課題

さて、先週末の日経紙金融経済面には「米CBOE、アジア進出」と題し、米取引所大手CBOE(シカゴ・オプション取引所)を運営するCBOEグローバル・マーケッツが手薄のアジア太平洋地域進出する狙いで、日本のPTS(私設取引システム)であるチャイエックス・ジャパンを米投資ファンドJCフラワーズから買い取り買収する旨が出ていた。

現在日本のPTSは上記のチャイエックス・ジャパンとジャパンネクスト証券だけであるが、日本の株式取引量で見るとPTSはこの2社を合計しても7〜8%程度と米国の約30%からしても見劣り感は否めない。近いところでも先に東証がシステム障害を起こし全銘柄の売買停止に追い込まれた際、渦中のJPXや同システムを請け負った富士通がPTS市場で売り物を浴びていたのを思い出すが如何せんリクイディティーの薄さが指摘されていた経緯がある。

PTSに絡んでは今月にSBIホールディングスと三井住友FGが共同で私設取引所運営会社を設立と先に報じられているが、上記のような不測の事態にこうした代替市場がバックアップになれる為には常日頃から幅広い投資家が参加しそれなりのマーケットシェアが活発に行われていないとこの辺は難しく、やはり取り扱い会員を増やし当欄でも何度か指摘したがマル信の解禁など投資家の裾野を広げリクイディティーを高めてゆくのが喫緊の課題か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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