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企業の苦心

先週末に発表された11月の企業物価指数は前年同月比9.0%の上昇となったが、これは第二次オイルショック時の1980年12月以来、41年ぶりの上昇率を記録する事となった。いわずもがな背景には原油や原材料の高騰があるワケだが、一方で消費者物価指数は10月時点でわずか0.1%の上昇と企業物価との間には大きな開きが出ている。

同指数が発表になった先週末も伊藤ハムや日清食品が値上げの発表を行っていたが、こういった食品業界の他にも電気料金はもとより文具からインテリアまで幅広い企業が値上げ発表を行ったこの秋冬であったが、それでも上記の数字の開きや昨日の日銀短観の仕入れ価格と販売価格の差を見ても企業や生産者などまだまだ価格に十分な転嫁が出来ていない現状が浮き彫りになっている。

一方、米でも物価上昇が止まる気配は見えず同じく先週末に発表になった11月のCPIは前年同月比の上昇率が6.8%に達し、1982年6月以来、39年5ヵ月ぶりの歴史的な高水準となった。ただ、賃金上昇が進み需要の強さを背景に価格転嫁が進んでいる米と景気の回復ペースが遅く価格転嫁が遅々として進んでいない日本とではその違いが鮮明になっており、この流れが継続という事になると企業収益を圧迫しかねない点が危惧されるところだ。


ベンチャー投資活性化期待

先週の日経紙金融経済面に「米未公開株 個人に門戸」と題し、米フィンテック企業が一般の個人投資家でもブロックチェーンを活用したデジタル証券を売買する仕組みを可能にし未公開企業に投資する市場が拡大している旨の記事があったが、日本でも個人投資家が未公開株をオンラインで売買できる初の市場がちょうど先週に開設されている。

株式型クラウドファンディングを手掛ける日本クラウドキャピタルのファンディーノマーケットがそれで、個人投資家が何時でもネット上で売買注文が出来てIPOや買収以外にも投資リターンを得られる機会を作る事が可能となるが、未公開企業取引といえばかつてグリーンシート市場なるものがあったものの企業の利用が低迷し数年前に廃止となった経緯がある。

その後継制度として日本証券業協会が「株式コミュニティ制度」を始めたワケだが今回はこれを利用する形になり、同制度もこれまで取引が活発化していたとは言い難かっただけにこの開設で新たな流れが出来るか否か注目。リスクマネーの供給量が高まればベンチャー企業投資の活性化も促されるというもので、日本のベンチャー企業にとって斯様に様々な資金調達の手段が出て来たのは朗報だろうか。


新語・流行語大賞2021

さて、恒例の今年話題になった言葉に贈られるユーキャン新語・流行語大賞が先週発表になっている。昨年に引き続き新型コロナや東京五輪に絡むモノ含めた30語がノミネートされていたが、年間大賞に輝いたのはベタな感が否めないもののやはりMVPなどその躍動を称えざるを得ない「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれた。

このほかトップテンにはやはりというかコロナ関連で「人流」や「黙食」が入り、今年開催された東京五輪からも「ゴン攻め・ビッタビタ」や「スギムライジング」から「ぼったくり男爵」などのほか社会現象にもなった「うっせいわ」、また「Z世代」、「親ガチャ」、「ジェンダー平等」などが入賞している。

ちなみに昨年の年間大賞は「3密」であったが、日本漢字能力検定協会がその年の世相を1字で表す今年の漢字もまた「密」が選ばれ、世相を反映し象徴する食を選ぶ今年の一皿では「テークアウトグルメ」が選ばれるなどまさにコロナ一色の展開であった。直近ではまたぞろオミクロン株なるものが世間を震撼させているが、コロナ関連の言葉がこれらから無くなるのははたしていつの日か。


再編と課題

さて、東京証券取引所による市場区分の再編を前に各社が自らの市場を選択して申請する期限が今月末に迫っているが、日経が実施したアンケートでは現在の一部に上場する約86%がプライム市場を希望という結果になっている模様で、この最上位のプライム市場を目指す向きは各社共にその基準を満たす為に各々いろいろな行動が見てとれる。

例えば現段階東証一部でダントツの配当利回りを誇る明和産業など既存株主に保有株を売却してもらい冒頭の通り2022年3月期の大幅増配を決定、これを受け当然ながらその株価も年初来安値から3倍以上に大化けを果たしその時価総額はプライム上場維持基準の100億円を割り込んでいた当初から同基準をクリヤする水準にまで達した。

他にもギリいけるのでは?という企業が数多プライム市場を選択する意向を示している模様だが、其々に義務付けられているESGへの対応でも情報開示へのノウハウ、マンパワーや予算の確保等々課題は多そうだ。今後強まるであろうこれらに関する情報発信への要請など企業価値に係わって来るだけに各々の舵取りがより重要になってくるか。


踏み絵?

北京オリンピックの開催まで2ヵ月を切るなか、周知の通り米政府は中国での人権問題を理由に北京オリンピックとパラリンピックに外交団を派遣しない「外交的ボイコット」を行う事を発表している。これに対し中国側はもしアメリカが独断専行するなら必ず断固対抗措置を取ると同調する他国への牽制も含め反発必至な様子だ。

平和の祭典とよばれるオリンピックだが今回のように幾度となく国際的な対立に晒されてきており、1980年にはソ連のアフガニスタン侵攻ではそれに抗議した日米含む西側諸国がモスクワ夏季五輪を選手団さえ派遣しない全面的なボイコットに発展、その報復として4年後の1984年のロサンゼルス大会ではソ連や東欧諸国が米国への報復としてロス五輪をボイコットした経緯がある。

これを巡り首相は総合的に勘案し国益の観点から自ら判断してゆきたいと述べているが、板挟みの我が国は実に微妙なところに位置する。この外交的ボイコットで来る28年のロス五輪も同じ事が繰り返されるか否かだが、スポーツは政治的な問題とは切り離して考えるべきとの大義名分があるものの政治的な対立を映す鏡にもなってきたオリンピック、いずれにせよ国際社会が何所まで追随するのかが今後の焦点となるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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