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インバウンド下剋上

さて、先週は国土交通省から2021年1月1日時点の公示地価が発表されているが、全用途の全国平均は前年比で0.5%のマイナスと6年ぶりに下落に転じていた。特に都市部の商業地で下落が酷かったのが大阪の所謂ミナミの辺りで道頓堀や難波、心斎橋地区等で5位までは実に20%を超える下落率となっていた。

一方東京圏ではさすがに下落率20%とはいかないまでも、下落率トップであったクラブ街の銀座8丁目は12.8%と10%を超える下落率。これに台東区西浅草2、台東区浅草1、千代田区有楽町1、新宿区歌舞伎町2といずれも10%を超える下落率となっているが、上記のミナミ地区と共に観光地や飲食店などインバウンド需要が消滅してしまった部分が如実に表れた格好。

また同じ関東圏の住宅地もコロナ禍の影響で何所もマイナスとなるなかテレワークの普及で住環境のプライオリティ等から唯一上昇を見せたのが千葉、千葉といえば昨年もネット通販の好調を背景にした物流施設ニーズの高さを映し二桁の値上がりを見せた所もあったのを思い出すが、大手の本社移転や体験型施設等の引き合いもありコロナ禍でこの辺の勢力図も昨年からの塗り替りが継続されている。


成長市場

さて当欄でも何度か取り上げた植物肉だが、今月も大手などからのリリースが目立った。ザッと挙げてもおまめさんで有名なフジッコが「大豆ライス」を開発、いなり寿司やガパオなどに使用してネット通販で販売予定、またプリマハムも大豆を原料とした植物肉を今月から商品化し、ニップンも独自開発した「豆腐ミート」を使った冷凍ボロネーゼパスタを今月から発売している。

変り種ではマルサンアイも今月から豆乳を原料にしたスライスチーズのような「大豆スライス」の販売を開始しているが、これらに先駆け商品化されたモノも当然乍ら多く最近では大手スーパーなどでも本当によくこの手を目にするようになってきた。そのスーパー本体もイオンなど消費者の多様性に応える為に昨年からPBで植物肉市場への取り組みを拡大している。

この手の嗜好は以前でこそ宗教上の理由等が圧倒的であったものの、何れの商品も低糖質・高たんぱくという特性から近年では健康や美容の観点から需要の高まりが顕著だ。また近年のESGの考えが産業界でも広がりを見せ各社共に積極的な取り組みを見せるなか、世界的超低金利による運用難を背景にこうした環境負荷の低い代替食品需要から市場成長性に着目した機関投資家も食指を動かしてきており欧米の後追いが今後加速してくるかどうか注目である。


旬なTOB

本日も日経平均は大幅に4日続落と下げ止まらないが、そんななか逆行高の急騰で目立った個別といえば船井電機で比例配分ストップ高となり2,000万株近い買い成り行き買いを残して引けていた。背景にはコンピュータ・ビジネス書籍出版の秀和システムが早期の経営立て直しを目指す同社に対してTOBを実施、918円というTOB価格にサヤ寄せした格好だ。

ところでM&Aといえば2020年の日本で届け出のあったTOBの件数はM&A助言レフコによれば57件と19年比で9件の増加となっていたが、その買い付け金額は19年比で8割も増加し過去最高水準となった模様で、今年に入っても既に1〜2月で17年の年間金額を上回るなど活発している模様だ。

冒頭の船井電機の場合は昨日の取締役会でもこのTOBに賛同する事が決議されている通り敵対的ケースではないが、当欄でも昨年取り上げた前田建設工業による前田道路へのTOBや、今年に入ってからは直近の日本製鉄による東京製綱へのTOBなどいずれも敵対的TOBとなっており最近は従来禁忌とされてきた上場大手間でもこの手のケースが目立つようになった感がある。

昨日も持ち合い株の合理性がコーポレートガバナンスコードを背景に一段と問われる事になると書いたが、斯様な持ち合い解消など背景にM&Aに絡む活動は活発化しており上場企業のみならずアクティビスト本体が中堅どころを狙ってTOBを仕掛けている最中の案件もあるなど喧しく、噂ベースでも水面下で動いている話が複数入ってきており今後もこうした動きはますます顕著化する事は想像に難くない。


炙り出される持ち合い株

さて昨日の日経平均は先週末に続いて600円を超える大幅続落となったが、そんな急落の中でも逆行高し年初来高値を更新していたものにNECがある。顔認証技術を活用して熟練医師でも判断が難しい病変などを高精度で見つけ出す事に成功したとの報が背景にあるが、もう一つ同社といえば香港市場に上場する半導体関連の「華虹半導体有言公司」の全株式売却を先に発表している。

同社はIFRSを採用しているために純利益に変動はないもののその売却益は581億円にのぼる。この手では三菱マテリアルもまたSUMCO株を売却し21年3月期には126億円の売却益を見込んでいるが、斯様に大手の所謂政策保有株の売却が進行しており先週の日経紙には2020年4月から今月中旬までの売却益の合計は20年3月期比で5割増しになった旨が出ていた。

来る東証再編の上場基準も睨んで今後は政策保有株の売却要請も進むと思われるがもう一つ、上場企業の持ち合い株が日本株全体の時価総額の約5%を占めるといわれているなかコーポレートガバナンスコード改定を背景にその保有合理性が一段と問われる事にもなるだけに今後も最後の炙り出しが促進される事になろうか。


金融政策株価明暗

さて先週行われた米FOMCと共に注目された日銀金融政策決定会合は、金融緩和長期化を睨みETFの購入を柔軟にしたり長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力を高める政策修正が行われる事となったが、特に前者のETF買い入れ政策変更は日経平均へのネガティブインパクトが大きく週末と本日の2営業日で1,000円を超える急落をもたらしている。

即ちETFは原則年6兆円としていた縛りを無くしその購入対象は日経平均型を止めTOPIX型に一本化するというものだが、個別では最も高寄与度で吸い上げ顕著とのイメージの強いファーストリテイリングは後場から急変、その株価は97000円台からものの30分程度で90000円スレスレまでの急落を演じ本日も4000円超の大幅続落と2営業日で10000円を超える暴落を演じた。

ネガティブインパクトといえば買い入れ上限据え置きとなったREITの個別もまた軟調展開を強いられたが、一方で許容する長期金利変動幅拡大との決定で貸出事業の収益改善期待から18日は銀行株の急伸が目立ち、翌日の週末は三菱東京UFJFG、三井住友FG、そしてみずほFGのメガバンク群が揃って年初来高値を更新していた。

予てより下げ相場の過程でも日銀によるETFの買い入れがパタリと止まった旨でマーケットはその「布石」にザワついていたものだが、やはり次に進む公表となると改めてその反応も顕著になるもの。出口を見据え保有構造の正常化に向けた応分の副作用もあろうが戦略の試行錯誤はまだまだ続くか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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