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新規導入か廃止か

今月に入って23000円台超まで回復した日経平均だが低PBRモノは依然として多い。この辺に絡んでは先週末の日経紙投資情報面にてM&A助言レコフ調べの買収防衛策を新たに導入する企業がPBRの低い企業などを中心に5月末時点で7社と前年を上回り、15年にコーポレート・ガバナンス・コードが採用されて以降で最多となった旨の記事があった。

買収防衛策といえば最近では東芝機械がアクティビスト対策で昨年廃止した買収防衛策を改めて復活させた事例が記憶に新しいが、世の趨勢としては経営者の保身に繋がるなどとして総会での反対票も増加するなど批判が強く、導入済み企業は15年比で4割減となるなど近年では廃止が相次いでいるのが現状だ。

先に政府による安保上重要な日本企業への出資規制強化など為されているが、それがこの
コロナ禍のあおりを受けた春先の株価急落などから他にも技術力を持つ企業を標的とした買収や出資の動きが警戒される。確かにPBRが極めて低いまま放置されている企業側も問題だが、コロナ禍でガバナンスと対企業影響力行使との天秤が改めて注目される。


オンライン商機

さて、春先には新型コロナウイルスの影響から年度替りの卒業式や歓送迎会などが総崩れとなり年間でも最需要期となる花卉需要が急減の憂き目に遭っている旨を書いたが、昨日の日経紙には「捨てられる花を救え」と題し、オンラインを駆使して商機につなげる試みが俄かに熱を帯びてきている旨の記事があった。

廃棄される道を救う試みとしては食品で同じく今年の始めに挙げたフードシァエサービスの「TABETE」などがあるが、他にも余剰食材を購入するクーポンを発行するアプリ「No Food Loss」なども登録店を拡大させており、更には業務用商品などまで含めて扱う「KURADASHI」なども最近は注目を浴びている。

またマーケットに出しても最近は思うような値が付かないのは高級魚類も同じでココもまたEC活用の動きが顕著になってきているが、先行している民間のアクションに農水の更なる強い後押しも望まれるところでオンラインならではの枝葉の広がりが今後も更に顕著になってくるか。


間接効果の恩恵

昨晩はWTIが3月以来の40ドル大台を回復してきたが、先週末の日経紙商品面では原油価格指数に連動するETNの売買が個人マネーの流入で急増、発行体の金融機関が原油先物の持ち高を増加させたことで東商取の原油先物の4月の売買高は前年同月比で4倍以上となるなど取引が急拡大となっている旨が載っていた。

このETNといえば文中に挙げられていた「日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN」が代表銘柄であるが、これまでも原油が数年ぶり安値に沈む度にこのETNが商いを集めて注目されており、その建玉は先週段階で1年前の約4倍に増加し売買代金もまた4月には上場以来の最高を記録している。

原資産の存在も緩和マネーの影響で投資に流入する厚み自体が増し各々数カ月ぶりの高値となっており、他にも先に当欄で取り上げていた野村のインデックスETFなどはWTI暴落に乗じて個人が群がった当時の二桁から三桁へと値段が跳ね上がっている。これらETNやETFなどその設計上から東商取への間接効果は上記の通り無視出来ないものがあるが、今後どの程度商いを集められるのか注目というところか。


幻の増資

さて先週末の日経紙総合面には「破綻ハーツ、増資頓挫」と題し、先月に破綻したレンタカー大手のハーツが投機熱で上昇した株価をテコに米中堅のジェフリーズ証券を主幹事として増資を計画しようとしたものの、SEC側がこれを問題視した事でこの増資計画が中止となった旨の記事があった。

国内でも先週は破綻して東証での最終売買を終値4円で終えたレナウンが利鞘狙いのイナゴ?の群がりから売買代金を約5倍に膨らませていたが、このハーツも上記のSEC委員長が同社に言及した当日も売買停止前に急騰を演じ、受け皿となった新興ネット証券のロビンフッド等では同社ホルダーが破綻から2週間で10万人以上増えたという。

かつて国内でも持ち帰り寿司の京樽が破綻後に急騰しついには破綻前の株価をも抜いた珍事があったが、もっと近年のところではスカイマークも最終売買日が14円と驚きの二桁終値、JALやライブドアも然りで常識で考えれば無価値になるモノへ時に驚きの商いが集まるケースがある。冒頭の増資が仮に叶えば歴史に残るファイナンスとなっただろうが、こんなところにも緩和マネーの膨張を背景にした珍事が及んでおりまた別の幻も今後出て来ようか。


商慣習とガバナンス

さて先週末の日経紙には「もの言う株主がNO」と題し、オフィスビル賃貸の京阪神ビルに対し旧村上ファンドの元幹部が率いるストラテジックキャピタルが、社内取締役の過半を親密銀行のOBが占めている事から企業統治がゆがめられているとの株主提案を突き付け波紋が広がっている旨の記事があった。

同ファンドといえば以前からこういった特定企業OBによる企業の私物化懸念を問題にしており他にも投資先である東レはじめとして中堅ゼネコンの淺沼組や世紀東急工業、極東貿易などに株主提案を実施した経緯があるが、斯様なアクティビストから提案を受けた企業はアイ・アールジャパン調査では先週段階で昨年から6社増加し22社と最多となっている模様だ。

注目された16日開催の株主総会では結局のところこの株主提案は否決される事となったが、このコロナ禍で内部留保を背景とした一昔前のような増配や自社株買い要求が減少する一方でガバナンス絡みの提案へと変化してきているという。親密企業OBの天下りなど持ち合い株と並び典型的な従前からの商慣習の一つでもあるが、こうしたファイナンス絡みの後ろ盾もコロナ禍を経て漸く変ってゆく事になるのかどうか今後も注目されるところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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