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魅せる割高感

さて、先週は米電気自動車メーカーのテスラが市場予想に反した黒字発表以来株価上昇が加速、年初から約4割上昇して上場来高値を更新しその時価総額が1,000億ドルを超えて独のフォルクスワーゲンを抜いて自動車メーカーではトヨタ自動車に次ぐ2位に躍り出たのが関係者の話題になっていた。

テスラといえば一昨年だったか空売り勢が挙って同社株に攻勢を仕掛けたところへMBO計画の大風呂敷を広げたのが記憶に新しいが、結局このMBO劇は幻に終わったものの当時買い付けるとした金額が1株あたり420ドル、それが冒頭のフォルクスワーゲン超となった先週22日の終値が569ドルだから当時踏まされた売り方もヤレヤレといったところか。

とはいえ通期黒字化も未達な上に20年度の市場予測ベースでの予想PERは77倍台と、独フォルクスワーゲンの6倍台やゼネラルモーターズの5倍台にフォード・モーターズの7倍台、更には我らがトヨタ自動車の9倍台と比較しても割高感は否めず依然として同社株のカラ売り人気も根強い。

先週の日経産業紙でも「グーグルとテスラ、大義の有無」と題し、学生達の人気を二分しているグーグルとテスラという両極端な企業は何が魅力なのかという点についてスイスのビジネススクール教授の視察談が書いていたが、先ずは今週の19年10〜12月期の決算発表が注目される。


技術進歩と本質

さて、先週から話題になっているニュースといえばオリンピックの選考を間近に控えるなか、次々と世界記録を打ち出しているナイキの厚底シューズを近く世界陸連が使用禁止にする可能性があるという件か。何しろ日本記録を相次いで更新した2人の選手や、昨年の東京オリンピック選考レースでは代表内定の男女4人のうち3人がこのシューズを使用。直近の箱根駅伝では選手の84%がこれを使用していたというからその影響は計り知れない。

この報で先ず直ぐに思い出したのが競泳の英スピード社が開発した無縫製水着レーザー・レーサー問題か。既にマイケルフェルプスが席巻していた2008年北京オリンピックで登場し世界記録を樹立した金メダリストの94%がこれを着用、北島康介選手もこれを着用し平泳ぎで世界記録を更新し2大会連続の2冠を達成したものだったが、2010年にFINA(国際水泳連盟)がこれを使用禁止にして高速水着時代は終焉を迎えた経緯がある。

この報を受けた先週はアシックス社の株価がザラバで7.9%高まで急騰する場面があったが、同社も1960年代にはマメが出来難いエアーベントシステムを取り入れたシューズのマジック・ランナーを開発、魔法の靴として絶賛され実際に国際大会のマラソンでこれを履いた日本人選手は銀メダルを獲得した経緯もある。

この手では他にゴルフも2008年より施行された世界共通SLEルールによって試合でスプリング効果を持つ高反発ドライバーの使用が禁止になるなど高性能モノに待ったが掛かった例はいろいろあるが、各々の禁止ラインが個別で測れずその線引きはじめメーカーが絡んだ圧力や忖度思惑など一般には不透明極まりないのは否めないところ。

何れにせよ世界陸連側は今月末に調査結果を発表する見通しというが、ただでさえコースがコロコロ変わったり今回のようにオリンピック選考を間近に控えたところで突然厚底がダメ云々、それに合わせた選手の調整変更やモチベーションの問題はもとより開発に鎬を削っている企業の為にも早急な結論が急がれるところか。


金との差異

本日の日経紙金融経済面には「仮想通貨 遠い投資対象」と題し、暗号資産(仮想通貨)が機関投資家の参入が限定的で、19年に新設されたファンドは17年や18年の約300から約130へと半減、撤退したファンドも約70と18年の50から増加するなど投資対象として厳しい環境に置かれている旨が載っていた。

投資対象という絡みではビットコインのETFなど当欄では一昨年の夏あたりから何度も取り上げ昨年夏にはCBOE(シカゴ・オプション取引所)が自ら申請を取り下げた旨を書いていたが、これと時を同じくし同所は17年から開始していた先物の取り扱いを取り止め、この後にICE(米インターコンチネンタル取引所)が始めた先物もリクイディティーを確保出来ていない状況という。

斯様にヘッジ手段が乏しくなれば表題にあるように投資対象としての魅力は乏しくなってしまうものだが、当初は発行体を持たない事でソブリンリスクが意識される局面では金(ゴールド)と共に括られてきたモノも諸々の申請過程を見るに金とはやはり一括りには出来ぬ仮想の部分がクローズアップされてきた感がするか。


アクティビストもまた

昨日は東芝のニューフレアテクノロジー社へのTOB成立の旨を買いたが、このTOB成立の鍵を握っていたニューフレア社大株主の東芝機械もまた旧村上ファンド系のオフィスサポートからTOBを実施する旨の通告を受け、当の東芝機械側は事前に防衛策の内容を開示するという手段に出ている。

ところで旧村上ファンド系といえば南青山不動産が昨年末に昨日取り上げていたニューフレアテクノロジー社の大量保有報告を提出していたのが記憶に新しいが、HOYAが同社にTOBを仕掛けたとの報道後にこのニューフレアテクノロジー株を売却していたのもいろいろと関係者の思惑を呼んでいる。

買収防衛策を巡っては近年では廃止の方向というのが世間の機運となっているが、一方で今回のようにルール等を設定・公表する事前警告型を新たに設けるケースも数年前から散見されていた。低金利環境長期化や証券会社もまた本日の日経紙にも出ていたように代理人業務における姿勢の変化など、今年もアクティビストにとっては追い風で摩擦をもいとわない姿勢でのTOBは引き続き増えて来る可能性が高いか。


勝算追究

さて、先週末の日経紙総合面には「HOYA、ニューフレア買収断念」と題し、東芝が半導体製造装置の上場子会社であるニューフレアテクノロジー社に対してのTOBが成立した事に伴い、同じくニューフレア社に対しTOBの方針を表明していたHOYAが同社の買収を断念した旨が載っていた。

この件に関しては当欄でもちょうど一カ月くらい前に取り上げていたが、TOB成立のカギを握っていた大株主の東芝機械が応募した事でやはりというかHOYAの芽は無くなったというところで、HOYAのCEOも当初より数年の話し合いの間で東芝側から明確な回答を得られず可能性は五分五分としていた通り淡々とした気持ちという感じか。

昨年に国内で届けられたTOBの総額は一昨年のそれの2倍以上上回り2007年以来の高水準に膨らんでいるが以前にも書いた通り水面下で青写真を描く案件は多く、今後もガバナンスを背景に純粋に親和性を追求し規模に拘らず勝算のある案件であるなら積極的に打って出る姿勢は続こうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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